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越境EC

越境ECを行うために要確認の法規制(米国を中心に)

越境ECとは、インターネットを通じた国際的な電子商取引のことを意味します。つまり、ネットショップを通じて、国内から海外向けに直接販売をすることです。このような国際取引にも対応できるネットショップの開設方法としては、多言語対応の自社サイトを運営することや、Amazon(アマゾン)やebay(イーベイ)のような海外マーケットプレイスを利用することが挙げられます。

近年、EC市場は全世界的に成長しており、海外への販路拡大を狙う中小企業にとって、越境ECの活用は大きなチャンスにつながります。しかし、EC市場での製品販売には対面販売とは異なるリスクも存在し、対策を怠ると思わぬ損害を被る可能性があります。

特に、越境ECを行う場合には、日本だけでなく、海外のルールも十分に確認し、法的な準備を整えておくことが非常に重要です。そこで、今回は、ECビジネスを介して海外市場への進出を考える企業が考慮すべき法規制の概要を紹介します。

主要なEC法

越境ECでは、他の種類のオンラインビジネスと同様に、ビジネスに適用される一般的な会社法および国内法および国際法を遵守する必要があります。さらに、ネットショップの運営では、Webアクセシビリティ、データプライバシー、および電子支払処理に関するデジタル固有の規定に準拠する必要があります。

本稿では、以下のカテゴリーごとに詳しく説明していきます。

税金

米国でECビジネスを展開する場合には、次の税金を考慮する必要があります。

消費税

消費税は州や市によって異なるものです。米国では45の州とワシントンDCが、州全体の消費税を課しています。そして、さまざまな市、郡、および「特別課税地区」においては、州全体の課税に加えて、地方の消費税率が追加される場合もあるので注意が必要です。 そのため、消費税額を適切に計算して徴収しないと、ECビジネスの利益率が低下する可能性があります。

輸入関税と税金

海外を拠点とするサプライヤー(ドロップシッピングプロバイダーや卸売業者など)から製品を輸入する場合、その輸入品は関税の対象となる可能性があります。 また、定期的に大量の製品を発送する場合は、他の関税や税金にも注意してください。

米国自由貿易協定(FTA)の取り決めを踏まえてそのシナリオを簡単に計算できるツールもあります。さまざまなシナリオをシミュレートしてみると良いでしょう。

その他に、顧客側が支払うべき税金も考えられます。なお、顧客側が支払うべき関税については、サードパーティロジスティクスプロバイダーが提供するプリペイドデューティシップを介して、一旦顧客の代わりに支払い、それらを上乗せした国際価格で顧客に販売することもできます。

環境税

持続可能性を促進するために、多くの州(米国)が環境に害を及ぼす可能性のある活動や品目に課税を導入しています。たとえば、California Redemption Value(CRV)法では、消費者は24オンス未満のプラスチック容器には0.05ドル、24オンスを超えるプラスチック容器には0.10ドルの追加のリサイクル料金を支払う必要があります。カリフォルニア州では、使い捨てプラスチックの中に詰められた個々の品目ごとに請求される新しい環境税の提案を保留しており、今後も同様の環境税が増えていく見込みです。

国際企業も進出先国の環境税に注意する必要があります。たとえば、ヨーロッパでは、持続可能でない製品、出荷、または梱包に対して追加料金を請求する案が審議されています。

支払ゲートウェイ

支払ゲートウェイとは、インターネットや実店舗での製品やサービスの最新の小売やその他のタイプの販売をサポートする電子商取引システムのことです。このシステムはECビジネスの基本となるものであり、「セキュリティ」対策には十分に注意する必要があります。例えば、顧客のクレジットカード情報などが漏洩すれば、損害賠償を求められることもあるでしょう。さらに、セキュリティ対策が不十分であると、ブランドイメージに間接的な損失も発生します。

したがって、支払処理業者の選択に関しては注意が必要です。そのため、以下のような認証を受けた信頼できる業者を利用するようにしましょう。

PCI-DSSコンプライアンスについて説明します。ペイメントカード業界データセキュリティ基準(Payment Card Industry Data Security Standard:PCI DSS)とは、クレジットカード会員の情報を保護することを目的に定められた、クレジットカード業界の情報セキュリティ基準です。2004年に国際カードブランドのAmerican Express、Discover、JCB、MasterCard、VISAの5社によって策定されたもので、現在も5社が共同設立した組織「PCI Security Standards Council:PCI SSC」によって運営・管理されています。

最新のeコマースプラットフォームには、通常、最高の評価である PCI DSS レベル 1 のコンプライアンスが組み込まれているものが多くあります。 実際に、アマゾン ウェブ サービス(AWS) は、最高の評価である PCI DSS レベル 1 のサービスプロバイダーとして認証を受けています。ただし、サードパーティの支払プロセッサまたは統合POSシステムを使用する場合は、PCIコンプライアンスの状態について、自身で確認することをお勧めします。

商標、特許、著作権

商標、特許、著作権は、米国特許商標庁(United States Patent and Trademark Office :USPTO)において、以下のように定義されているとともに、それぞれ法律によって保護されています。

ECビジネスにおいて、知的財産権の理解は2つの側面から重要です。

1つ目は、自身の知的財産に対して適切な措置を講じた場合、他のブランドが同意なしに自身の知的財産を使用することを防ぐ法的保護を受けることができます。

2つ目は、適切な同意なしに他者の知的財産を使用する際には法的なリスクを負うということです。たとえば、ディズニーやスター・ウォーズなどのキャラクターが描かれたTシャツを販売する場合は、法的な問題を回避するために相手側から適切な同意を得る必要があります。

また、販売する商品だけではなく、ECサイトそのものに対しても著作権侵害の有無を検討しなければなりません。例えば、カスタムeコマースプラットフォームのソースコードなどは、特許と著作権によって保護されます。他のECサイトのソースコードなどを勝手にコピーすることはできませんので注意が必要です。また、ロゴ、カスタムイラスト、ビジュアルコンテンツ(ソーシャルメディアへの投稿を含む)などECサイトのデザイン要素も、デジタル・ミレニアム著作権法(※1)などの著作権法によって保護されている場合があります。

※1 デジタル・ミレニアム著作権法(Digital Millennium Copyright Act :DMCA)

1998年に成立し、2000年に施行された米国の改正著作権法で、インターネット上の著作権侵害に対する罰則を強化しています。コンテンツをサイトに表示しているオンライン・サービス・プロバイダーが、著作権保有者またはその指定代理人から侵害の申し立て通知を受け取った際に当該コンテンツを迅速に削除した場合、著作権侵害の責任が免除されることを規定しているのが特徴です。

年齢制限

ECサイトを立ち上げるときには、例外なく、児童オンラインプライバシー保護法(Child Online Protection Act:COPPA)に準拠していることが必要です。この法律には様々な規制が含まれていますが、ECサイトに適用される可能性が高いのは、13歳未満の子供から個人情報を収集できないというものです。特に若い顧客層をターゲットにしているECサイトであれば、COPPA規制を遵守できているか十分注意してください。COPPA規制の違反事業者に対しては、最大43,280ドルの罰金が科せられる恐れがあります。また、カリフォルニア州プライバシー権法(California Privacy Rights Act: CPRA)は、その適用開始予定日が2023年1月1日からではあるものの、16歳未満の消費者(カリフォルニア州住民)の個人情報が無権限アクセス・流出・窃盗・開示の対象となった場合には、故意の有無を問わず、違反1件あたり最大7500米ドルの行政制裁金が課され得るという点で、改正前のCCPA(California Consumer Privacy Act)よりも厳格な内容になっています(CPRA1798.155(a))。

現在、世界では、児童や未成年者の個人情報の保護をいっそう強めていく傾向にあるため、ビジネス上このような情報を取り扱う場合には、細心の注意を払う必要があります。

ライセンスと許可

提供する製品によっては、ビジネスライセンスが必要になる場合があります。

米国のほとんどの州では、実店舗で事業を行っている場合、販売者の許可が必要です。もっとも、オンラインビジネスでは、この許可の要否についての取扱いが異なります。ヘルスケアなどの規制された業界で製品やサービスを販売している場合を除き、オンラインでビジネスを行うために販売者の許可は必要ないことがほとんどでしょう。ただし、米国は州ごとにルールが異なりますので、適用される法律を常に再確認する必要があります。

また、販売許可とは別に、再販業者の許可証は検討すべき項目です。これは、消費税を支払うことなく、在庫をまとめて購入したり、卸売りしたりできるライセンスであり、所持することで二重課税の回避というメリットが受けられます。つまり、再販業者の許可証を使用すると、顧客が製品を購入するときにのみ消費税を徴収すればよいことになるのです。同様に、卸売業者やサプライヤーと提携する予定がある場合は、地方自治体に確認することで、節税対策につながる可能性があります。

顧客のプライバシー

ECサイトでは、買い物客向けのデータ駆動型CXを作成するために、大量かつ重要な洞察を収集できます。しかし、世界には複数のデータプライバシー法が存在しており、分析目的で顧客の個人情報(氏名、住所、社会保障番号、デビットカードとクレジットカードの詳細など)を使用することを禁じています。

また、一部の州や国では、オンラインショップに対して、データの収集、保存、処理について顧客の許可を明示的に求めることが義務付けられています。

越境ECサイト運営で、特に注意すべきプライバシー法は以下の2つです。

海外進出・海外展開への影響

越境ECビジネスは、日本企業が海外進出、海外展開する際のよいきっかけとなり得ます。最近では、すぐにECビジネスを始めることができるようなパッケージも用意されており、海外市場に不慣れな日本の中小企業も参入しやすい状況です。

一方で、ビジネスの手軽さと自由度はイコールではないことには留意してください。越境ECビジネスでは、税金、支払いのセキュリティ、著作権、データの収集と使用など、様々な規制が関与します。

これらのオンラインビジネスに関する法律を理解することは、非常に煩雑に思えるかもしれません。 しかし、法規制の知識は、法的な責任や損害賠償などのリスクからビジネスを守るために重要です。ビジネスの健全性、そしてあなたの顧客となる消費者の保護のために、弁護士によるリーガルチェックなどを活用して万全の体制で臨むべき事柄です。

弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所は、EC・通販法務には特に高い知見と経験を有しています。
「助ネコ」の株式会社アクアリーフ様、「CROSS MALL」の株式会社アイル様など、著名なECシステム企業が多数、当法律事務所の顧問契約サービスを利用されています。
企業の皆様は、ビジネスのリスクは何なのか、リスクが発生する可能性はどれくらいあるのか、リスクを無くしたり減らしたりする方法はないのか、結局会社としてどうすれば良いのか、どの方法が一番オススメなのか、そこまで踏み込んだアドバイスを、弁護士に求めています。当法律事務所は、できない理由を探すのではなく、できる方法を考えます。クライアントのビジネスを加速させるために、知恵を絞り、責任をもってアドバイスをします。多数のEC企業様が、サービス設計や利用規約・契約書レビューなどにあたり当事務所を活用されていますので、いつでもご相談ください。

執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所

※本稿の記載内容は、2022年3月現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。

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