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代引きでの注文が架空住所だった場合にどうすればよいの?

トラブルの多い代引き

EC事業者の皆さんなら、一度は代引きをめぐるトラブルになったことがあると思います。
代引きで送った商品を注文者が一向に受け取らず、送料が無駄にかかってしまったり、生鮮食品の賞味期限が切れてしまったり。
何かとトラブルが多いため、止めたいなと思いつつ、しかしカード決済や銀行振込ができないお客さんも多いため、やむを得ず続けている皆さんも多いのではないでしょうか。

代引きでの注文が架空住所だった場合にどうすればよいの?

とはいえ、注文者の住所・連絡先がわかっているなら、最悪、弁護士に依頼して弁護士から連絡してもらうなどして、商品の代金や余計にかかった送料などを請求することは可能です。
では、注文の際に登録された住所が架空の住所で、商品を届けることもできず、連絡先も分からない場合は、どうすればよいでしょうか。

住所が架空でも(注文者に購入する意志がなくても)契約は成立する

まず、そもそもこのような場合、法的に注文はどう扱われるのでしょうか。

注文者に購入する意志がないので、契約は成立していないのでしょうか。

実は法律上、注文者に購入する意志がないなど、契約の一方当事者に契約を成立させる意志がなかったとしても、相手方当事者がそのことを知らなければ、契約は成立します。

このような場合、契約の一方当事者に契約を成立させる意志がなかったとしても、そのことを知らなかった相手方当事者を保護するために、契約は有効に成立したものと扱われるのです。

架空住所でも商品を届けた以上は代金を請求できる

契約は有効に成立している以上、EC事業者が商品を届ければ、契約に基づき、代金を請求できます。

そして、架空住所のために注文者が現実に商品を受け取らなかったとしても、指定された住所に商品を届けた以上、EC事業者は代金を請求できます。

(念の為に説明すると、EC事業者に商品を提供する義務がなくなったわけではなく、注文者が改めて正しい住所を伝えて商品を届けることを求めてきたら、改めて届ける必要はあります。それによって余計にかかった送料などの費用は、注文者に請求できます)

現実には請求が困難

とはいえ、架空住所で代引注文をするような注文者の正確な氏名や住所の特定は難しいでしょう。

万が一、注文に際して注文者本人の携帯電話の番号か、キャリアメールのアドレスが登録されていれば、弁護士に債権回収を依頼することで、弁護士会照会という制度を利用して、弁護士から携帯キャリアに対してその番号・アドレスの契約者の情報を照会することは可能です。

ですが、架空の番号やキャリアメールのアドレスであったり、Gmailのようなフリーメールのアドレスしか登録されていないと、弁護士会照会も使えず、注文者を特定することはできません。

警察に業務妨害として告訴しても、代引の架空住所の事案くらいですと、よほど悪質でない限り、警察もあまり動いてくれないでしょう。

ダメ元で、登録された連絡先宛に、弁護士から連絡をしてもらうというやり方はありえます。EC事業者の担当者からの連絡はまともに取り合わなくても、弁護士からの連絡だと、慌てて払ってくる相手もいるでしょう。

ですが、架空の番号やキャリアメールのアドレスであったり、フリーメールの捨てアドレスだったら、注文者にその連絡が届くことはありません。

まとめ

このように、架空住所での代引注文に対し、法的には代金を請求できるとしても、現実には請求が困難で、泣き寝入りせざるを得ない場面が圧倒的に多いです。

代引きにはこのようなリスクが一定程度は生じてしまう以上、必要経費として割り切るか、高額の決済は代引注文を受け付けないなどの自衛手段が必要になります。

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WRITER
弁護士 小野 智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士
ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。EC企業からの相談に、法務にとどまらずビジネス目線でアドバイスを行っている。
また、企業の海外展開支援を得意とし、日本語・英語の契約書をレビューする「契約審査サービス」を提供している。
著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」

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