「シェア1位」「◯◯ランキング1位」などのNo.1広告をする場合の注意点
不当なNo.1広告は法律に違反する
「シェア1位」「◯◯ランキング1位」などの、いわゆるNo.1広告は顧客誘引力が高い広告手法です。何かしらの指標で1位になったとして、その商品がその顧客のニーズに合致したものかどうかは別の話なのですが、類似・競合商品が多い中でそのようなアピールがされた商品があると、ついつい選んでしまうのが顧客の心理です。
そのため、たとえ瞬間風速的なものであったり、あるいは自社にとって都合の良い調査方法であっても、そういった結果が一応でも得られたのであれば、それをいつまでも表示し続けたい、全面的に押し出したい、と安易に考えてしまうEC事業者も少なくありません。
その結果として、不当なNo.1広告が横行しているという実態がありますが、不当なNo.1広告は、道義的に問題なことはもちろんのこと、法律にも違反します。
「景品表示法」という法律は、事業者が自己の販売する商品の内容や取引条件について、実際のもの又は競合他社のものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤解されるような表示は、不当表示であり、違法であるとしています。
法律違反のNo.1広告をすると重いペナルティを受ける
どんな場合に不当表示になるかはいったん置いておいて、もし自社のNo.1広告が不当表示であるとされた場合、どんな事態になるのでしょうか。
景品表示法に違反する不当表示の疑いがある場合、消費者庁は、関連資料の収集や、事業者への事情聴取などの調査を行います。ある日突然、御社のもとに、消費者庁から電話がかかってきて、これから御社のNo.1広告に対して調査を開始すると告知され、報告書や資料の提出を求められることになるのです。
そして、調査の結果、不当表示である(事業者が合理的な根拠を示せなかった)と消費者庁が認定した場合、消費者庁は、事業者に対し、不当表示により一般消費者に与えた誤解の排除、再発防止策の実施、今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずる「措置命令」を行います。
そして、措置命令の内容は、消費者庁のウェブサイトに掲載されます。つまり、御社の社名や商品名で検索すると、消費者庁のウェブサイト(SEOがとてもる良いです)の、該当ページが検索結果に表示されてしまうのです。
さらに、消費者庁は、一定の場合には、事業者に対し、課徴金の納付を命じることになります。課徴金は、不当表示が行われた期間における対象となる商品の「売上の3%」という、高額な金額です。
このように、法律違反のNo.1広告をしてしまうと、行政処分(重いペナルティ)を受けることになってしまいます。
消費者庁への通報は誰でもできる
ここまで聞いても、「自社は有名企業ではないので、サイトのNo.1広告表示を消費者庁に気づかれないのでは。」と思っている方もいるかもしれません。
ですが、御社の競合他社や、御社の顧客(の中で御社の商品に満足しなかった方)が、消費者庁に通報する可能性があります。そして、消費者庁への通報は、誰でも簡単にできるのです。
これが、消費者庁のウェブサイトにある景品表示法違反被疑情報提供フォームです。調査経過や調査結果等については教えてもらえないものの、消費者庁はきちんと仕事をしているので、通報を受ければ適切に対処するでしょう。
景品表示法違反被疑情報提供フォーム(消費者庁ウェブサイト)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/contact/disobey_form/
どうすれば不当表示にならないか
というわけで、不当なNo.1広告をすることは大きな問題であることは理解できたと思いますが、ではそもそも、どのようなNo.1広告が不当表示になるのでしょうか。逆にいえば、どうすれば問題なくNO.1広告ができるのでしょうか。
No.1広告が不当表示とならないためには、
① No.1広告の内容が客観的な調査に基づいていること
② 調査結果を正確かつ適正に引用していること
この両方を満たす必要があります。
まず、①の客観的な調査といえるためには、
(a)その調査が関連する学術界又は産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法
(b)社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法
このどちらかの方法で実施されている必要があります
たとえば、健康食品に含まれる特定の成分の測定方法であれば、「関連する学術界又は産業界において一般的に認められた方法」や「関連分野の専門家多数が認める方法」があることが多いでしょう。
また、特定のショッピングモールにおける販売数の測定方法であれば、そのショッピングモールの運営者が公表する数値が、「社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法」といえるでしょう。
次に、②の正確かつ適正な引用といえるためには、例え客観的な調査をしていても、対象となる商品の範囲、地理的範囲、調査期間・時点等について、不正確な表示をしたり(例えば、僅差で2位なのに、1位と扱ってしまったり)、不明瞭な表示をすること(例えば、ある特定の期間における販売数が一番だっただけなのに、期間を明記せずに「◯◯売上ランキングNo.1」とだけ表示して、あたかも常にNo.1であるかのようにしたり)は、許されません。
まとめ
No.1広告は顧客誘引力が高いことから、つい安易に使ってしまいがちです。
ですが、客観的な調査に基づいていなかったり、調査結果を正確・適正に引用しないと、公正取引委員会に通報を受けた場合にきちんと説明ができず、行政処分を受けてしまう可能性があります。
No.1広告は適切に行うよう、くれぐれも注意して下さい。
執筆者:弁護士藤井総
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所
※本稿の記載内容は、2020年10月現在の法令・情報等に基づいています。