その『打消し表示』、消費者の視線にしっかり届いていますか? ~消費者庁の実態調査から~
広告のなかで、その商品のメリットではなく例外や制約などを伝える、いわゆる『打消し表示』は目立たないものにされがちです。
しかし、それによるトラブルも多く起きています。
今回は、消費者庁が公表した最新の実態調査報告をひもときながら、消費者が広告をどのように受け止めているのかを検証します。
脳が視覚情報を認識できるのは
視線が『停留』しているときだけ
事業者が広告を出す場合、自社商品の長所を強調して消費意欲を喚起する、いわゆる『強調表示』は積極的に行う一方、条件的例外や制約など、商品の魅力を減殺しかねない、いわゆる『打消し表示』は、なるべく目立たないものにしがちです。
これにより頻発するトラブルを問題視した消費者庁は、かねてより実態調査を行ってきましたが、2017年11月から2018年3月にかけて、さらに踏み込んだ調査を実施。2018年6月、『広告表示に接する消費者の視線に関する実態調査報告書』として公表しました。
調査方法は、人の眼球の動きからどこを見ているかを計測する機器を用いて、対象者が(1)動画広告、(2)紙面広告、(3)スマートフォンのWebページを閲覧している間の視線のデータを取るとともに、表示の内容を認識していたか否かについてインタビュー調査を行うというものです。
報告書によれば、人間の目の動きには、ある一定の箇所を見つめるために視線が留まっている『停留』と、停留から停留の間の高速移動『サッカード』があり、脳が視覚情報を処理できるのは停留時に限ります。
つまり視線が停留しないと、そこで表示されていたものは認識されないことになります。
調査結果から見えてくる
打消し表示の見えづらさ
それぞれの調査結果は、下記のようなものでした。
(1) 動画広告
表示画面において文字と音声とが同じ内容を表示している場合は、文字と音声とが別の内容を表示しているときと比べて、表示の内容が認識されやすい傾向がみられました。
ただしこの場合であっても、注意を引き付ける商品画像などが表示されているときは、音声が流れる間に画像の方に視線が停留し、文字の表示の内容を認識できない可能性があることが示されました。
(2)紙面広告
動画広告のように閲覧する際に時間的制約がなく、能動的に見ることができるにもかかわらず、強調表示から離れた箇所や、広告の隅などに小さい文字だけで構成された打消し表示は認識されにくい傾向があることがわかりました。
紙面広告はまた、多くの情報の中から必要な情報を関連づけて読むという行動が取られにくく、打消し表示が強調表示に隣接して表示されている場合でも、強調表示との文字のバランスが著しく悪い小さな文字や、強調表示と違う字体や色で表示されていたりするときは、一般消費者が強調表示と打消し表示を一体として認識できないおそれがあることも判明しました。
(3)スマートフォンのWebページ
『強調表示には視線が長く停留しやすい一方、そこから離れた箇所にある打消し表示には視線が停留しにくいこと』、また『隣接した箇所であっても目立たない表示には視線が停留しにくいこと』、『強調表示のずっと下方に打消し表示があった場合、スクロールして最終的に打消し表示に視線が停留したとしても、打消し表示と強調表示の対応関係が認識できていないときがあること』、そして、『スマートフォンのWebページを閲覧する際には、紙面広告と同様、さまざまな情報を関連づけて理解することが難しいこと』などが確認されました。
広告の打消し表示が、一般消費者に的確に認識できるものになっていないと認められた場合、景品表示法上問題となるおそれがあります。
事業者はこのことに留意し、各媒体により、どのようにすれば打消し表示がしっかりと消費者の目に留まるのかを十分配慮して、適切な広告づくりをしていきたいものです。