ペナルティーやトラブルを防ぐ!ECサイトの特定商取引法に基づく表記とその書き方
ECサイトを運営するためには、特定商取引法(特定商取引に関する法律)に基づく表記が必要です。また、特定商取引法に基づく表記は、顧客が安心して買い物をするために必要な情報であるため、表記すれば、顧客からの安心にもつながります。今回はECサイトでの適切な表記方法について解説します。
目次
特定商取引法とは?
特定商取引法(特定商取引に関する法律)は、消費者トラブルを生じやすい取引類型を対象として、事業者が遵守すべきルールやクーリング・オフ等の消費者を保護するルールを定めた法律です。法人成りしていない個人事業者であっても、特定商取引法では、ECサイト運営者は事業者にあたります。
特定商取引法の対象になる取引
特定商取引法の対象となる取引類型は、下記になります。
①訪問販売、②通信販売、③電話勧誘販売、④連鎖販売取引、⑤特定継続的役務提供、⑥業務提供誘引販売取引、⑦訪問購入
ECサイトビジネスは、この類型中、「②通信販売」に該当するため通信販売に関するルールを厳守する必要があります。これを守らないと、行政処分(業務停止命令)や刑罰を受けたり、消費者庁や経済産業省のホームページに違反者情報が公開されたりとペナルティーを課されます。
そして、顧客とのトラブルの原因にもなるため、しっかり準備しましょう。
特定商取引法に基づく表記とは?
ECサイト内に店舗運営会社に関するページを作り、ヘッダーやフッターなどにリンクを設置することで、顧客に分かりやすく店舗情報や取引に係る情報を伝えることです。店舗情報や取引に係る情報とは、具体的に何を掲載するのか、下記で詳細を見ていきます。
表記する事項
特定商取引法では、「通信販売」を行う場合には、消費者トラブルを避けるため、一定の事項を購入者が分かるように表示しなければならないとされています。
A, 特商法第11条第1号:販売価格又は役務の対価
これは、販売する商品の価格をいいます。この記載は、実売価格で表示する必要があります。つまり、定価、希望小売価格等が表示されているだけではなく、実際の販売価格を記載しなければなりません。
B, 特商法第11条第2号:代金又は対価の支払時期
支払時期とは、購入者が商品の代金をいつ支払うかをいいます。
大きく前払い、後払い、同時払い(代引き)があると思います。ECの特性を生かしたビジネスをすることを考えると、特別な事情がない限り「前払い」を選択しましょう。
表示例:「代金入金確認後、3日以内に商品を発送致します。」
C, 特商法第11条第2号:代金又は対価の支払方法
支払方法とは、どのように購入者がお金を払うかということです。つまり、ECサイトの場合、クレジットカード決済、銀行振込み、代引き等の中から、サイト運営者が認める方法を表示することになります。
D, 特商法第11条第3号:商品の引渡時期・役務の提供時期
購入者から注文を受けた後に、どの程度の期間で商品を渡すかを表示する必要があります。
上記、「B」の表示例では、代金入金確認後、「3日以内」となっているので、この例の表示一つで、この要件も満たすことができます。
E, 特商法第11条第4号、第5号:申込みの期間、申込みの撤回又は解除に関する事項
購入者がサイト上で申込みをした際に、申込みの期間に関する定めがあるか、その申込みを撤回できるか、契約を解除することができるか、いつまでできるか等の記載をいいます。つまり、期間限定販売等か否か、返品できるか否か、できる場合はいつまでかを表示することです。注意が必要なのは、「通信販売」では、商品を受け取って8日間までは、返品可能であるという規定(法定返品権)が存在します(特商法第15条の3第1項)。ただし、法定返品権は、クーリング・オフ制度とは異なり、上記の返品についての事項の表示をしていれば、このルールは適用されませんので、顧客からしっかり見えるところに「返品不可」の表示をするか、又は顧客の不安感を無くすため、「3日以内なら返品可能」等の表示をすることをお勧めします。
なお、この事項は、商品に欠陥があった場合等ではなく、商品に問題はないが、購入者の都合で返品したいという場合のルールを定めるものですので、注意が必要です。
F, 特商法第11条第6号、主務省令:商品の送料
購入者が代金以外で、負担しなければならないものとして送料がある場合は、表示しなければなりません。この表示は、「送料実費」等の表現ではなく、金額をもって表示する必要があります。ただし、この部分は、広告スペースとの関係、地域、重量等により細かく差が出てしまうこともあります。
そこで、購入者が負担すべき送料について、大体の目途を立てることができる表示であれば良いとされています。
G, 特商法第11条第6号、主務省令:事業者情報
ECサイト運営者は、その責任の所在を明確にするために、事業者情報を表示しなければなりません。
①事業者の名称(法人の場合)又は氏名(個人事業者の場合)
※法人の場合は、代表者又は責任者氏名も表示
②事業者の住所(個人事業主の場合は事業所の所在地)
③事業者の電話番号
H, 条件付き表示事項
以下の事項等がある場合には、表示する必要があります。
①申込の有効期限がある場合には、その有効期限
②瑕疵(欠陥)があった場合についてのルールを儲ける場合には、そのルール
③特別の販売条件(販売数量の制限等)がある場合には、その条件
④ソフトウェアを使用するための動作環境
⑤契約を2回以上継続して締結する場合の販売条件又は提供条件
表記の方法
表記の方法は、商品購入申込みボタンのすぐ近くに「特定商取引法に基づく表記」という文字に上記事項が記載されたページのリンクを貼るという方法が取られることが多いです。この「商品購入申込みボタンのすぐ近く」というところがポイントで、取引に必要である情報を認識しやすい場所に記載し、顧客が確実に取引前に確認でき得る状態にしておくことが大切です。
この方法による場合、その商品限定で問題となる事項については、リンク先ページでは、「商品ごとに記載」と表示し、それぞれの商品の購入ボタンがあるページに、商品毎で問題となる事項を表示しておきましょう。
特定商取引法に基づく表記の例
特定商取引法に基づく表記の例は、以下のようになります。こちらを参考に、ECサイトの規定に沿った情報を表記してください。以下は記載例のため、掲載する場合は、自社に必要な項目を追記するなどしましょう。
販売業者 株式会社◯◯
代表責任者 ◯◯◯◯
所在地 〒◯◯◯-◯◯◯◯
東京都◯◯区◯◯ ◯-◯-◯
電話番号 03-◯◯◯◯-◯◯◯◯
メールアドレス ◯◯◯◯@◯◯◯◯.com
サイトURL https://www.◯◯◯◯.com
電話受付時間 8:00〜17:00
販売価格 各商品の紹介ページに記載している価格とします。
商品代金以外に必要な料金 消費税、送料(全国一律◯◯◯円)
引き渡し時期 ご注文から◯日以内に発送します。
お支払い方法とお支払いの時期 クレジットカード決済:ご注文時にお支払いが確定します。
代金引換:代金は商品お届け時、配送員に現金でお支払いください。
コンビニ決済:ご注文から◯日以内に、コンビニでお支払いください。
返品・交換・キャンセルについて 下記返品期限内の返品を受け付けます。また、商品に欠陥がある場合のみ、交換が可能ですのでご連絡ください。
返品期限 商品出荷から◯日以内にご連絡ください。
返品送料 商品に欠陥がある場合以外の送料は、ご負担ください
特定商取引法に違反した場合の罰則
特定商取引法では、違反の内容によって異なりますが、罰則が規定されています。対象が個人の場合、科せられる可能性がある刑罰は、最大で3年以下の懲役又は300万円以下の罰金、又はその両方です。刑罰の対象が法人の場合は、最大で3億円以下の罰金が科される可能性があります。
刑罰以外にも課せられる可能性があるのが、行政処分です。行政処分には、問題がある部分の改善を命じる「指示」や、最長2年間にわたって業務を禁じられる「業務停止命令」、業務停止期間中に指名された個人が同業の会社を立ち上げることを禁ずる「業務禁止命令」があります。
また、特定商取引法に基づく行政処分が執行された場合、事業者名や処分内容などの情報が公表されます。
特定商取引法に基づく表記についての参考サイト
特定商取引法に基づくガイドラインや運用指針等は、法改正によりアップデートされるため、最新の情報は、下記の消費者庁のサイト等で確認しておきましょう。
特定商取引法ガイド
(https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/mailorder/)
消費者庁
(https://www.caa.go.jp/)
まとめ
特定商取引法に基づく表記は、法律で定められているという意味に加えて、運営会社の情報をオープンにし、顧客に信頼を与えるという大きな意味もあります。自社のECサイトの運営方法やビジネスモデルを踏まえた上で、その表示がなぜ必要なのか、どのような意味を持つのかを理解し、自社に合った適切な表記にしましょう。個別のご相談は、お気軽にお問い合わせください。
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所は、EC・通販法務には特に高い知見と経験を有しています。
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執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所
※本稿の記載内容は、2022年12月現在の法令・情報等に基づいています。
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