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行政・許認可対応

古物営業をする上での基本的ルール【古物営業法】

ネットオークションで自分が使用する目的で古物を購入したり、自分が使用していたものをフリマサイトで販売したりというように、単発的な取引を行うのであれば古物商許可は必要ありませんが、営利目的で継続してネットで古物の売買を行う場合には、古物商許可が必要となります。古物商許可の目的は、犯罪の防止と被害の迅速な回復であり、古物営業を保護し、利益を守ることではありません。
他者から継続的に古物を仕入れ、売却する行為は古物営業に該当し、古物商許可が必要になります。また、古物商の間で古物の売買や交換をするための市場を経営する営業を行うためには、古物市場主許可を受ける必要があります。
今回は、古物商等の許可を得た後に、古物営業をしていく上で理解しておきたいルールについて解説します。

古物営業法の目的

中古品を販売するためには、古物商の許可を得る必要があります。中古品には盗品が混ざる可能性があるため、公安員会の許可を取った人だけに販売する権利を与え、盗品の発見をしやすいようにしようということから許可制となっています。また、発見を容易にすることで転売目的の窃盗を失くすという目的もあります。このような目的で中古品の販売に許可が必要とされているため、許可を得た後も、古物営業法は、古物営業に一定の規制をかけています。

標識の掲示

古物営業法第12条に規定されているとおり、古物商は営業所・露店において、古物市場主は古物市場において、それぞれ目に付きやすい場所に、標識を掲示しなければなりません。

一般的な標識掲示

古物営業法施行規則第11条別記様式第13号に定められているとおり、縦8cm、横16cmの耐久性のある材質で作成した紺色地に白文字の標識を掲示します。記載事項は、許可をした公安委員会の名称、許可番号、取扱い古物の区分、氏名又は名称です。標識は、自分で作成する他、インターネット上のプレート業者や、各都道府県の防犯協会や公安委員会が定めた団体からも購入することができます。

ECサイトの場合の標識掲示

ECサイトの場合にも、許可をした公安委員会の名称、許可番号、取扱い古物の区分、氏名又は名称を、サイト上に表示しなければなりません。表示方法は、古物営業を行うサイトの個々のページに表示することが原則ですが、トップページに記載することも可能です。または、当該ページへのリンクをトップページに設置し、古物営業法の規定に基づく表示を行っているページへのリンクである旨を記載します。

管理者の選任

古物商・古物市場主は、古物営業法第13条により、営業所又は古物市場ごとに、その営業所又は古物市場に係る義務を適正に実施するための責任者として、管理者一人を選任しなければなりません。 なお、その管理者に対して、取扱い古物が不正品であるかどうかを判断するために必要とされる一定の知識、技能又は経験を得させるよう、努力義務が課されています。特に決まった資格があるわけではありませんが、いわゆる「目利き」ができる専門家として技能向上していくことが求められています。

仕入先等の身分確認

古物営業法は、盗品の流通経路等を捕捉するために、古物商に対して、一定の取引関係がある者については身分確認をしなければならないとしています。

誰の身分を確認しなければならないか?

古物営業法15条第1項において、古物商は、古物の「買い受け・交換」や「売却・交換の委託」を受ける場合には、相手方の真偽を確認する措置をとらなければならないとされています。基本的に「仕入れ」をする場合には、仕入先の身分を確認しなければならないということです。

身分確認をしなくても良い場合とは

仕入先に支払う代金の総額が1万円未満の場合と、自分で一度売却したものを再度買い受ける場合には、身分確認は不要となります。対価が小さい場合には窃盗対象となる可能性が低いこと、そして、許可を得て、規定を守らなければならない古物商自らが売却した品であれば盗品でない可能性が高いと考えられるからです。

1万円未満でも確認が必要となるケース

代金の総額が1万円未満であっても、下記4つの品物については、一般に盗品が流通するケースが多いため、仕入先の身分確認が必要です。

身分確認の方法

身分確認の方法としては、下記のような方法があります。

  1. 相手の住所、氏名、職業及び年齢を確認する
    (自動車運転免許証、被保険者証等の提示を受ける)
  2. 相手から住所等が記載された文書の交付を受ける(面前で署名したものに限る)
  3. 相手から住所等が記された電子署名付き電子メールの送信を受ける
  4. 相手に本人限定受取郵便等により古物の代金を送付する契約をする
  5. 相手から住民票の写し等の送付を受けて、そこに記載された本人名義の預貯金口座に古物の代金を入金する契約をする
  6. 相手から本人確認書類(運転免許証、国民健康保険者証等)のコピー等の送付を受け、そこに記載された住所宛に簡易書留等を転送しない取扱いで送付して、その到達を確かめ、あわせてそのコピー等に記載された本人名義の預貯金口座等に代金を入金する契約をする

ECサイトで、非対面による身分確認の方法

直接、相手方と会わずに買受け等の古物取引を行う場合には、相手方の身分確認を下記いずれかの方法で行うことが義務とされています。

  1. 相手方の電子署名入りのメールを受取り、古物の取引を行う
  2. 古物を受取る際に、相手方から書面に印鑑(会社代表者印)とその印鑑登録証明書を受取る
  3. 相手方に本人限定受取郵便で書類等を送付して、到着が分かる手段をとる
  4. 古物の売買代金を本人限定受取郵便にした現金書留で支払う等の取引条件にする
  5. 住民票の写し(登記事項証明書)の送付を受け、転送しない取扱いで代金を現金書留で支払う
  6. 住民票の写し(登記事項証明書)の送付を受け、記載された氏名(法人)名義の預金口座に振込む
  7. 相手方から免許証や保険証のコピーの送付を受け、見積書等を転送しない取扱いで簡易書留にて送付し、相手から了承を得た後に代金を本人名義の口座に振込む
  8. 上記1~7のいずれかの方法により本人確認をした相手に、ID・パスワードを付与し、これを使い申込みを受付ける

「2回目」以降の取引

同じ相手方との2回目以降の取引では、一度、身分確認が済んでいるため、IDとパスワードの送信を受けること等により、相手方の真偽を確認する措置を既に行っていることを確認できます。例えば、本人確認をした仕入れ先に、第三者に漏れない方法でID、パスワードを付与し、自身のホームページの入力画面から、それを入力してログインでき、申込みを受け付けることができるようにするという方法等がよいでしょう。ただし、記載された顧客情報と2回目以降の申込画面に入力された内容が異なる場合は、再度、身分確認する必要があります。

不正品の申告義務

古物営業法の目的は、盗品の流通を防ぎ、犯罪の防止と被害の迅速な回復を図ることです。そのため、古物商は、古物の取引をする際に、盗品や偽造品等の不正品の疑いがあるときは、直ちに、警察にその旨を申告しなければならないと、古物営業法第15条第3項に定められています。

以下の場合等が、不正品の疑いがある取引に該当すると考えられます。

帳簿等への記録義務等

古物営業法は、盗品の流通経路を補捉するために、古物商に対して、取引についての記録義務を定めています。

どのような方法で、どのような場合に記録する義務があるのでしょうか。

記録の方法

帳簿へ記載する、取引伝票の編綴、コンピュータへ入力のいずれかの方法で、以下の5点を記録する必要があります。

  1. 取引の年月日
  2. 古物の品目及び数量
  3. 古物の特徴
  4. 相手方の住所、氏名、職業及び年齢
  5. 相手方の身分を確認した方法

記録が必要な取引は?

基本的には、売却を含む古物商の取引すべてに記録義務があるものと規定されています。記録した帳簿は、記録した日から3年間保存しなければなりません。3年以内に記録を紛失した場合は、警察への届け出が必要になります。記録は、紙の保存に限るわけではなく、コンピュータで作成したファイルをハードディスクやその他メモリーに保存したものでも構いません。紙の帳簿は濡れて破れたり、燃えたりすることが考えられますし、ハードディスクは故障することもあるため、どちらにしても何かあった時にすぐに取り出せるようにコピーやバックアップを取っておく必要があります。

仕入れの場合

仕入れの場合は、自分で一度売却したものを買い受ける場合以外のケースで、対価の総額(代金の総額)が1万円以上のものと、対価の総額(代金の総額)が1万円未満の、「バイク、家庭用コンピュータゲームソフト、CD・DVD等、書籍」については、記録義務があります。

売却する場合

売却する場合は、身分確認とは異なり、下記に該当する物品を売却する場合に、記録義務が生じます。記録を取っていなかったということのないように注意が必要です。

  1. 美術品類
  2. 時計・宝飾品類
  3. 自動車(その部分品で1万円以上のものも含む)
  4. 自動二輪車及び原動機付自転車(その部分品で1万円以上のものも含む)

許可証の携帯義務

古物商は、行商と呼ばれる、営業所を離れて取引を行う場合やせり売りをする際には、許可証を携帯する義務があります。古物商の代理人、使用人その他従業者についても、行商従業者証というものを携帯させる義務があります。古物商やその代理人や従業員は、行商をする場合において、相手方から許可証等の提示を求められたときは、それを提示する義務があります。

営業の制限

古物営業法第14条第1項により、古物商は、その営業所又は取引の相手方の住所もしくは居所以外の場所において、買い受け、もしくは交換するため、または、売却もしくは交換の委託を受けるため、古物商以外のものから古物を受け取ってはならないと規定されています。古物商の取引において重点的に規制されているのは、「仕入れ」です。盗品、不正品を仕入れない、仕入れてしまった場合でも仕入れ先を明確に把握するために、このような営業の制限が定められています。また、古物市場においては、古物商間でなければ、古物を売買し、交換し、又は売却若しくは交換の委託を受けることができません。

警察の捜査への協力義務

古物営業法の趣旨に基づき、古物商は「品触れ」(古物営業法第19条)や「差止め」(同第21条)の制度を通じて、警察の捜査に対して協力する義務があります。

品触れ

品触れとは、所轄の警察署が盗品の発見のために、古物商に対して「品触書」といわれる手配書を送付し、被害品の所持の有無の確認と届出を求めるものです。古物商は品触書を受け取った場合、6か月間保存し、該当する古物を所持していたり、保存期間内に受け取ったりしたときは、直ちに警察に届け出なければなりません。

差止め

差止めとは、盗品等の疑いがある古物について、警察が古物商に対して最大30日間の保管命令を行うことです。差し止められた古物は、売却することができず、売買や交換の委託を受けたものを所持していた場合でも、委託者に返却することもできません。

名義貸しの禁止

古物商や古物市場主は、許可制であるため、自己の名義をもって、他人にその古物営業を営ませることができません。つまり、名前だけ貸して他の者に中古品販売等をさせることは禁止されています。

営業内容等の変更に伴う届出

古物商や古物市場主は、営業内容等に変更があった場合、変更日から14日以内(登記事項証明書を添付すべき時は20日以内)に公安委員会に届出書を提出しなければなりません。

まとめ

ここまで、古物営業をする上での基本的なルールについて簡単に解説いたしました。古物商が営業の規制を受ける目的は、盗品等の売買の防止、速やかな発見等を図り、窃盗等の犯罪の被害を迅速に回復させることです。そのために、古物商や古物市場主の許可を受けた後にも、古物商を営むために守らなければならないルールが古物営業法に規定されています。スムーズな取引のためにも、上記の内容は理解しておきたいところです。個別のご相談は、随時受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所

※本稿の記載内容は、2022年9月現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。

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