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行政・許認可対応

食品をECサイトで販売するのに法律上必要な許可手続きとは?

食品をECサイトで販売する際に必要な許可手続きについて基本的な内容と法に基づいて注意が必要な点を解説します。

食品をインターネットで販売する際必要な許可・手続きとは?

食品衛生法とは?

食品関連の衛生管理や食中毒などを防止し、安全性を確保するために食品衛生法が1947年に施行されました。2018年にも一部改正がありましたが、この法律は、食品を取り扱う全事業者が対象になり、店舗だけでなく食品の容器包装を扱う事業者も遵守する必要があります

食品衛生法に基づく営業許可とは? 対象業種は?

食品衛生法に基づく営業許可とは、都道府県別に定められた業種別の公衆衛生基準です。
以下のようなケースでは、食品衛生法に基づく営業許可が必要です。

具体的には、食品衛生法施行令第35条に規定される32業種については、「食品衛生法に基づく営業許可」を保健所でもらう必要があります。
なお、令和3年6月より「営業届出制度」がスタートしたことにより、「許可営業」及び「届出対象外営業」に該当しない営業者は、管轄の保健所に「営業届出」を提出しなければならなくなりました。

食品衛生責任者とは? 食品衛生管理者との違いについて

食品を取り扱う場合には、食中毒や食品衛生法の違反を防ぐ目的で、食品衛生管理を行う資格を有した者、つまり「食品衛生責任者」を店舗や施設ごとに1名以上、配置することが義務づけられています。
食品衛生責任者の主な役割としては、次の内容が挙げられます。

食品衛生責任者になるためには、「食品衛生学」、「公衆衛生学」、「衛生法規」の養成講習会を受講しなくてはなりません。しかし、栄養士や調理師などの資格をもっている場合は、受講せずに食品衛生責任者になることができます。他にも受講の免除の対象となる資格が複数あるため、必要な場合は別途確認してください。

食品衛生管理者との違い

食品衛生責任者と似ている資格として、「食品衛生管理者」というものがあります。食品衛生管理者は、製造または加工の過程において衛生的に管理されているか監督する人です。添加物の製造または加工を行う各施設に1人は必要です。食品衛生責任者と食品衛生管理者との違いはこのようになります。

販売する場合は「食品衛生責任者」、製造施設には「食品衛生管理者」が必要と覚えておくとよいでしょう。

食品を仕入れてネットショップ(ECサイト)で販売したい場合

食品を仕入れて販売する際に押さえておきたいポイント

仕入れた商品を販売するときも、保健所の許可や食品衛生に関する知識が必要になります。また、仕入れた食品を小分けにし、詰めなおすには、販売のための許可とは別の種類の営業許可が必要になることがありますので、所管の保健所に確認しておきましょう。

営業許可を取得するまでの基本的な流れ

基本的に以下の流れで取得します。

【保健所へ事前相談】
施設基準に合致しているかなどを事前に確認するため、施設の工事着工前に図面等を持参の上、保健所の食品衛生担当へ相談します。

【営業許可申請】(書類の提出)
施設完成予定日の10日くらい前に必要書類を保健所に提出します。

【施設検査の打合せ】
担当者と施設の確認検査の日程等について相談します。

【施設の確認検査】
施設が申請のとおりか、施設基準に合致しているかを保健所の担当者が確認します。

【営業許可書の交付】
営業許可書交付予定日になりましたら、保健所で営業許可書の交付を受けます。

【営業開始】
営業開始後は、施設等が基準どおりに維持管理されているか常に点検するとともに、食品の取扱い等にも十分留意して、より安全で衛生的な食品を提供するよう心がけます。また、施設等に変更を生じたり、廃業したりした際には、保健所まで届け出る必要があります。

上記は東京都福祉保健局の流れを前提としていますので、詳細については、各都道府県の保健所に問い合わせてください。
営業許可は施設ごとに取得する必要があり、食品衛生責任者についても施設ごとに置く必要があります。

営業許可を取得するために必要な要件

営業許可を取得するには「食品衛生責任者の設置」と「施設基準」を満たす必要があります。
包装食品のみを販売する場合は、食品を扱う施設の所在地を所管する保健所等に確認してください。

お肉をECサイトで販売するために必要な許可

「食肉」販売業として、法律(食品衛生法)上必要な許可

食品衛生法上許可が必要な「食肉販売」とは、鳥獣の生肉を販売する営業をいいます。よって、鳥獣の生肉を仕入れてECサイトで販売することは、食品衛生法上の「食肉」販売業にあたりますので、食品衛生上の許可が必要となります。
許可を受けた食肉販売営業者が食肉を細断包装したものを、他の者が保管し、注文配送する場合も許可の対象とされますが、一方で、食肉販売の斡旋又は仲介のみ行う場合は許可を必要としません。つまり、生肉を保管する状態が必要であれば、衛生管理をしなければならないため、許可の対象となります。

「食料品(食肉製品)等販売」として、条例上必要な許可(東京の場合)

ベーコン、ウィンナー、ハム等の「食肉製品」を販売することについては、食品製造業等取締条例で許可が必要とされています。ただし、「販売時における温度管理が不要な食品であって、容器包装に入れられた食品のみを、仕入れた状態のまま販売する場合」には許可が不要となるので、ビーフジャーキー等の乾燥食肉製品は、許可が不要となります。

酒販売に必要な許可

「通信販売酒類小売業免許」

ECサイトで酒類を販売する場合、要件を満たす酒のみの取り扱いとなります。したがって、必要となる免許も異なります。実店舗では「一般酒類小売業販売免許」が必要なのに対して、ECサイトでは「通信販売酒類小売業免許」が必要となります。
「通信販売酒類小売業免許申請の手引き」(7頁目、税務署)によると、下記の要件を満たすもののみ、許可されています。

(1)以下の条件を満たす国産酒類である
(a)直近の会計年度における酒類の品目ごとの課税移出数量が全て3,000キロリットル未満である酒類製造者(以下、特定製造者という)が製造、販売している酒類
(b) 地方の特産品等(製造委託者が所在する地方の特産品等に限る。)を原料として、特定製造者以外の製造者に製造を委託する酒類であり、かつ、当該酒類の直近の会計年度における製造委託者ごとの製造委託数量の合計が 3,000 キロリットル未満である酒類

(2)輸入酒類である(輸入酒類に関しては、酒類の品目や数量の制限はなし)
ECサイトで扱えるのは地酒と輸入酒で、いわゆる大手メーカーの酒類を取り扱うことはできません。また、国産酒を扱う場合には、蔵元の「課税移出数量証明書」を提出し、上記の条件を満たしていることを証明する必要があります。そのため扱う酒類の品目も含めて、蔵元と取引交渉を行なってから免許の取得に進むのが基本的な流れです。添付書類の準備など、許可申請に漕ぎ着くまで時間がかかる「通信販売酒類小売業免許」ですが、無免許で販売していることが発覚すれば、酒税法の違反として1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられてしまいます(酒税法第56条)。しっかりと免許を取得したうえで、販売を開始しましょう。

「魚」関連食品をECサイトで販売するために必要な許可

食品衛生法上の「魚介類販売」とは、店舗を設け、鮮魚介類(鯨肉を含む)を販売する営業をいいます。ただし、漁師さんとお客さんの仲介をするのみであれば許可は不要です。
しかし、「生魚」を実際に仕入れた場合には、保管する倉庫なり施設が必要であり、このような場合には、その保管する倉庫を「店舗」ととらえて、「魚介類販売」の許可が必要となるのです。
くん製品、魚肉ねり製品等の「魚介類加工品」を販売することについては、東京都の場合、食品製造業等取締条例で許可が必要とされています。
ただし、ジャーキー等と同様に、「販売時における温度管理が不要な食品であって、容器包装に入れられた食品のみ仕入れた状態のまま販売する場合」には許可が不要となります。例えば、常温保存可能な干物や煮干し等が該当します。

「魚」関連製品の許可等の流れ

食品衛生法上の許可を得るためには、施設の基準等があります。施設工事を行ってから問題があると大変なので、営業所を所管する保健所の食品衛生担当者に事前相談はしておいた方がよいでしょう。事前相談で問題がなければ、営業許可申請書類を提出します。必要な提出書類は以下の通りです。

法人(会社等)の場合

①営業許可申請書1通、②営業設備の大要・配置図2通、③許可申請手数料、④登記事項証明書1通、⑤食品衛生責任者の資格を証明するもの、⑥水質検査成績書(※貯水槽使用水、井戸水使用の場合)

施設が、所定の基準を満たすがどうか、保健所が施設の確認検査をし、問題がなければ、許可書の交付がなされます。だいたい確認検査から2~10日以内には許可書が交付されることになります。この許可書の交付を受けて初めて営業を開始できます。

「魚」関連食品販売の許可基準(許可を得るにはどんな条件が必要か?)

包装済み食品の販売のみであれば、人の手等が触れることがなく食中毒等の危険性が低くなるため、許可の条件が緩くなります。他の食品と同様、包装済みの食品のみの販売か、そうでないかによって、許可の条件が変わってきますので、確認が必要です。

食品をネットショップで販売するときに押さえておくべき法律

食品表示法

食品の表示については、平成27年に「食品表示法」が施行され、包括的かつ一元的な制度が創設されました。具体的な表示のルールは、「食品表示基準」に定められており、食品の製造者、加工者、輸入者又は販売者に対しては、食品表示基準の遵守が義務付けられています(食品表示法第5条)。
例えば、容器包装に入れられた加工食品では食品に関する表示が義務付けられており、基本の表示事項である「名称」、「原材料名」、「添加物」、「内容量」、に加えて、「保存の方法」、「消費期限賞味期限」、「原料原産地名」、「食品関連事業者の氏名又は名称及び住所」、「製造所又は加工所の所在地及び製造者又は加工者の氏名又は名称」等を表示する必要があります。また、アレルギー症状を発症させる「特定原材料」が含まれている場合は、すべてを表示しなければなりません。

景品表示法

景品表示法は、商品・サービスの品質や価格について実際よりも著しく優良又は有利であると誤認される表示(不当表示)を禁止しています。景品表示法に違反する不当表示については、事業者側に故意・過失がなかったとしても、景品表示法に基づく措置命令が行われることとなりますので、広告表示を行う場合には、注意が必要です。

計量法

計量法では、表記量と実際の量の誤差を一定範囲にすることを義務づけています。

計量法では、計量単位により取引されることの多い消費生活関連物資であって、消費者が合理的な選択を行う上で量目の確認が必要と考えられ、かつ、量目公差(政令で定める誤差)を課すことが適当と考えられるもの(食肉、野菜、魚介類、灯油など29種類)を「特定商品」として定めています。また、販売事業者がその特定商品を密封するときは、量目公差を超えないように内容量を計量して、その内容量並びに表記する者の氏名又は名称及び住所を表記しなければなりません(計量法第13条)。

健康増進法

健康増進法では、食品として販売に供するものに関して、広告その他の表示をする際は、健康の保持増進の効果等について、虚偽・誇大な表示をすることを禁止しています(健康増進法第 65 条第1項)。これは、実際には表示どおりの健康保持増進の効果等を有しない食品であるにもかかわらず、著しく事実と相違する又は著しく人を誤認させる広告が放置された場合、一般消費者が適切な診療機会を逸するなど、健康に重大な支障を起こす事態を防止するためにです。

まとめ

許可の取得には、「通信販売酒類小売業免許」のように、長くて2カ月ほどかかるものもあります。特定の商品に関する販売許可をすでに取得している場合、オンラインショップでも同じ許可が使える事もありますが、場合によっては全く違う許可を取得しなければいけないこともあります。必要な手続きや取得に要する時間などを含めて、事前に確認しておくことをお勧めします。ファースト&タンデムスプリント法律事務所では、弁護士によるご相談やリーガルチェックのご依頼をお受けしております。「このような場合はどうなるのか?」といった個別の疑問点がありましたら、いつでもぜひお気軽にご相談ください。

弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所は、EC・通販法務には特に高い知見と経験を有しています。
「助ネコ」の株式会社アクアリーフ様、「CROSS MALL」の株式会社アイル様など、著名なECシステム企業が多数、当法律事務所の顧問契約サービスを利用されています。
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執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所

※本稿の記載内容は、2022年9月現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。

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