違反事例から学ぶ!比較広告の注意点と法規制
通販サイトやオンラインモールなどのECサイトを運営する企業の担当者の皆様は、次のようなお悩みや課題があるのではないでしょうか。
「広告を行う際に、自社の商品を他社と比較する表現をしても問題はない?」
「 “自社調べ” というワードを使って他社製品よりも自社の製品の良さを伝えたい場合の注意点は?」
「他社サービスと比べた自社サービスの優位性を消費者にアピールしたいが、景品表示法上の規制はある?」
この記事では、ECサイトを運営する事業者が比較広告を行う場合の注意点と違反事例について、EC専門の弁護士が詳しく解説します。
著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」
比較広告と景品表示法


比較広告とは
比較広告とは、①自己が供給する商品・役務(サービス)の内容・取引条件について、②競争関係にある商品・サービスを比較対象として示して、③商品・サービスの内容・取引条件に関して、④客観的に測定したり、評価して比較することを目的とした広告のことを指します。
注意点としては、②の “比較対象として示す” は暗示的に示す場合も含むため、競争関係になる商品のスペックについて言及していなくても、競争関係になる商品と使用感を比較した消費者の口コミを掲載しただけでも比較広告に該当する可能性があります。
その他の注意点として、比較広告自体は禁止されていないことがポイントです。景品表示法は一般消費者の利益の保護を目的としているため、適法に比較広告を掲載することは、むしろ一般消費者に対して自主的かつ合理的な選択の機会を与えていることにもなり、景品表示法の趣旨目的にも合致しています。(景品表示法第1条)
比較広告と景品表示法の関係
比較広告は景品表示法に抵触しない態様で掲載する必要があります。その際に注意したいのが不当表示への該当・非該当です。不当表示は、①優良誤認、②有利誤認、③その他内閣総理が指定する表示、の3種類に分類されます。比較広告で問題となるのは、①優良誤認、②有利誤認です。
■優良誤認表示(景品表示法第5条1項)
商品・サービスの品質・規格・内容についての不当表示です。①実際のものよりも著しく優良であると表示するもの、②事実に反して競争関係になる商品・サービスよりも著しく優良であると表示するもの、の2パターンがあります。比較広告の場合には②が問題となります。
■有利誤認表示(景品表示法第5条2項)
商品・サービスの価格・取引条件についての不当表示です。①実際の取引条件よりも、取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認させる表示、②競争関係になる商品・サービスよりも、取引の相手方に著しく有利であると誤認させる表示、の2パターンがあります。比較広告で問題となるのは②です。
・EC・通販サイト運営で注意したい景品表示法とは?ポイントを解説
比較広告の違反について具体例を解説


一方、比較広告を活用する際には、消費者に比較という判断材料を提供する以上、慎重に広告を行う必要があります。次に、比較広告の違反についての具体例と罰則について解説します。
比較広告の実際の違反事例
■パソコンメーカーが “この技術は日本で当社だけ” と表示していたものの、実際には他社でも同様の技術を採用したマシンを販売していた。
■携帯電話通信業者が、店頭チラシの料金比較にて、自社が最も安いように表示していたものの、実は自社に不利となる割引サービスを除外して比較していた。
■酒類量販店が、新聞折り込みチラシで、 “この辺で一番安い店” と表示していたものの、実際は周辺の酒店の価格調査をしておらず、根拠のないものであった。
■テレビショッピングにて、ほうろう容器を “普通のほうろう容器と比べた場合、乳酸菌 が1時間で6倍 以上にもなる” と表示したものの、合理的な根拠のないものであった。
■モバイルデータ通信サービス業者が、 “他社サービス比較表” のメール欄に×をつけていたが、実際には、他社も同種のサービスの無料オプ ションで電子メールサービスの提供していた。
出典:「比較広告」(消費者庁HP)
(https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/comparative_advertising/)
出典:「景品表示法における違反事例集」(消費者庁表示対策課)(160225premiums_1.pdf)
違反した場合の罰則・リスク
措置命令
内閣総理大臣・消費者庁により、違反行為の差止め、その行為が再び行われることを防止するために必要な事項・これらの実施に関連する公示その他必要な事項について命令を受ける可能性があります。(景品表示法第7条1項)
一例ですが、広告掲載の中止、ウェブサイトの一時停止などの命令を受ける可能性もあります。
不実証広告規制
内閣総理大臣が、必要があると認めるときは、表示をした事業者に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができます。(景品表示法第7条2項)資料の提出をしないとき、提出した資料が不十分な場合には、当該表示が景品表示法に違反しているとみなされてしまいます。
行政罰としての課徴金
不当表示をした商品・サービスによって得た売上の3%が課徴金として課せられる可能性があります。また、基準日から10年以内に課徴金納付命令を繰り返し受けた場合には、課徴金の料率が3%から4.5%に引き上げられます。(景品表示法第8条5項)
刑罰としての罰金
措置命令に違反した場合には、2年以下の懲役、300万円以下の罰金、または両方が課せられる可能性があります。(景品表示法第46条)また、景品表示法には両罰規定がありますので、行為者(違反者)が罰せられるほか、事業主である法人も罰せられる可能性があります。例えば、措置命令違反の場合には、事業主である法人には3億円以下の罰金刑が課せられる可能性があります。(景品表示法第49条1項1号)
適格消費者団体からの差し止め請求
内閣総理大臣からの措置命令だけでなく、内閣総理大臣から認定を受けた適格消費者団体から差し止め請求・資料開示要請が行われる可能性もあります。(消費者契約法第第23条)
消費者からの信用失墜
適法な比較広告を行わなかった結果、消費者の間で悪評が拡散され、事業者としての信用、ECサイト・商品の信用を失ってしまう可能性があります。ECビジネスにおいて口コミは重要な要素であり、また、一度拡散された悪評は完全に消去することが難しいという点にも要注意です。
- 比較広告とあわせて注意したい “No.1広告”
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根拠のないナンバーワン表示は、不当表示(優良誤認・有利誤認)として景品表示法違反になる可能性があります。ナンバーワン表示とは、 “シェアNo.1” 、 “ランキングNo.1” といった表示であり、顧客誘引力が高い広告手法です。
ナンバーワン広告は、その顧客誘引力の高さから安易に使用されてしまうケースや、いつまでも表示を続けてしまうケースも多いです。しかし、ナンバーワン表示が不当表示であると発覚する経緯としては、競合他社や消費者による消費者庁への通報によるものが少なくありません。これらの通報は、ECサイトの規模や知名度とは関係ないため、「気づかないだろう。」と安易に考えずに広告を行う必要があります。
広告を行うに際して、広告会社・調査会社などにナンバーワン調査を行ってもらう機会があっても、これから解説するガイドラインの内容や注意点に基づかず調査が行われ、ナンバーワン表示の根拠が認められない場合には、EC事業者が措置命令を受けることになります。調査会社に依頼する際には、調査の手法について事前のリサーチを行い、調査結果についても自社で精査することが重要です。
出典:「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」(弁護士 小野智博)
消費者庁のガイドラインを解説


内容が客観的に実証されているかどうか
比較広告を行う場合には、客観的に実証されている数値や事実をあげて比較するようにしましょう。「客観的に実証されている」というために、以下の事項を押さえることが重要です。
実証が必要な事項の範囲=比較広告で主張する事項の範囲
たとえば、「オンラインモール○○で調査した結果、A商品よりB商品の方が人気であった。」という比較広告を行うケースで考えてみます。この場合には、 ①オンラインモール○○で、A商品とB商品との人気に関する調査が行われていること、②主張している内容と対応する調査結果が出ていることが必要です。
比較する商品の特性に基づいて確立された方法・程度による実証
たとえば、サプリメントの成分の含有量や効果を比較する場合、研究機関による確立された方法によって行いましょう。そのような方法が取れないときには、社会通念上、経験則上妥当であると考えられる方法を取ることもできます。この場合には、主張したい事実が存在すると認識できるレベルまで、調査が行われている必要があります。
調査機関を利用する
国公立の試験研究機関等の公的機関、中立的な立場で調査、研究を行う民間機関等に調査を依頼する場合には、その調査は客観的なものであると考えられます。
最後に、比較広告に表示している内容が、明らかに空想上のもので、消費者にとって実在しないことが明らかな場合には、消費者が誤認する可能性はないので不当表示にはなりません。たとえば、スナック菓子について “宇宙で一番人気” と表示するなどが該当します。
実証された数値・内容を正確に引用しているかどうか
比較対象商品の根拠となる数値・内容について、自社での調査や調査会社への依頼を行わず、客観的に実証されているものから引用する際には、正確かつ適正な引用を行い、消費者が誤認しないようにしなければなりません。引用を行う際には、以下のポイントに注意してください。
調査結果の引用の方法
■実証されている事実の範囲内で引用する
実証の根拠となる調査が一定の限られた条件の下で行われている場合には、 当該限られた条件の下での比較として引用する必要があります。たとえば、フライパンについて、木べらで1万回の耐摩耗性テストを行っただけにもかかわらず、その実証結果を引用して、金属のフライ返しでこすっても1万回の摩耗に耐えられると表示してしまうと、元の範囲(木べら)を超えて引用したことになります。
■調査結果の一部を引用する場合、調査結果の趣旨に沿って引用する
たとえば、各社サプリメントを多数の項目にわたって比較テストした調査結果の一部を引用するようなケースです。飲みやすさ、価格、ビタミンC含有量などの様々な項目から、自己の判断で、いくつかの項目を恣意的に取り上げ、その評価を点数化し、平均値を求めるといった方法で広告を行うといったことが考えられます。こうしたケースでは、調査結果の引用が本来の趣旨とは異なる形でされているため、不当表示となる可能性があります。自社製品を優位に見せたいがために、恣意的に調査結果を操作したり、加工しないようにしましょう。
調査方法に関するデータの表示
自社以外の調査結果を引用して比較する場合には、機関名、調査した日付、調査場所等の事項を広告中に表示し一般消費者が調査結果を正確に紹介しましょう。たとえば、サプリメントの満足度について、実際には自社で行った調査であるにも関わらず、機関名、調査した日付、調査場所等の事項をわざと表示しないで “専門機関による大規模調査によると” などと表示した場合には、それが不当表示となる可能性があります。一方、広告スペースが小さく、調査方法のデータが表示できない場合でも、リンクを貼るなどして調査方法を適切に説明できる場合には、これらのデータを表示しなくてもよいケースがあります。正しい引用を行うため、専門家への事前の相談をお勧めします。
公正な比較がされているかどうか
公正な比較を行い、消費者が誤認をしないように気を付けなければいけません。公正な比較のポイントは下記のとおりです。
比較項目の選び方
どのような項目を比較するかは広告主の自由ですが、商品のメインとなる機能や効果に影響がない項目にも関わらず、その項目の改良を行ったことを理由に、商品全体の機能や効果が競合商品よりも格段によくなったと主張するような内容は不当表示となる可能性があります。
比較対象商品の選び方
どのような競合商品を選択するかは広告主の自由ですが、一般的に同等のものでない商品を、あたかも同等のものと比較したかのように表示すると、その表示は不当表示となる可能性があります。たとえば、サプリメントの販売において、競合他社の価格帯1,000円台の商品と自社の5,000円台の商品価格をあえて表示せずに比較し、あたかも市場に流通するサプリメントの中で自社の商品が著しく優良であると表示する場合があります。
短所の表示
比較広告を行う際には、必ずしも商品の短所を表示することは義務付けられていません。しかし、その商品の長所と短所がセットとなっているような事情がある場合に、その短所をわざと表示しなかったり、きちんと表示しないことにより、消費者に誤認を与える場合には不当表示となる可能性があります。たとえば、相場5,000円のスマホケースを通信販売する際、傷があるため2,500円で販売しているにもかかわらず、傷の存在を隠し、あたかも他社のサイトの半額で購入できると謳った場合などがあります。
不実証広告規制
2.比較広告の違反について具体例を解説 でも少し触れましたが、内閣総理大臣が、必要があると認めるときは、表示をした事業者に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができます。(景品表示法第7条2項)
資料の提出をしないとき、提出した資料が不十分な場合には、当該表示が景品表示法に違反しているとみなされてしまいます。
そのため、比較広告を行う際には、合理的な根拠として十分な調査方法を設定し、調査結果が比較広告でアピールしたい内容に対応したものであるかを精査し、調査資料は社内にきちんと保管をし、いつでも提出できる状態にしておくことが必要です。調査機関の選定、調査方法、調査結果の保管についてもお気軽にご相談ください。
- 不正競争防止法の信用毀損行為とは?
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比較広告が適法であるためには、①主張する内容が客観的に実証され、②実証された数値や事実を正確かつ適正に引用し、③比較の方法が公正であること、が重要だとお伝えしました。他社との比較が行き過ぎて誹謗中傷となるような場合には、その内容がたとえ正しいものであっても③の要件に違反する可能性があります。比較の方法は紳士的なものである必要があります。
また、行き過ぎた比較広告は景品表示法だけでなく、不正競争防止法の信用毀損行為として、差し止め請求や損害賠償請求の対象となる可能性があります。不正競争防止法第2条1項21号に定める信用毀損行為は「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為」と規定されています。
競合商品の欠点をあげつらうような比較広告を行うデメリットには、各種法令違反のほかにも自社サイトの品位を下げてしまうことや、消費者からの不信感の増長といったものもある点に注意しましょう。
比較広告のお悩み、リスク、課題は解決できます


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顧問先企業様からは、
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