フリーランス新法の義務と罰則とは?違反事例と企業の対応を解説
通販サイトやオンラインモールなどのECにおいて、自社のビジネスを効率よく進めるために、フリーランスに業務を委託している企業の事業主や担当者の皆様は、次のようなお悩みや課題、問題があるのではないでしょうか。
「わが社はフリーランス新法の規制の対象になるのか?」
「規制の対象となる場合、どのような義務を守れば良いのか?」
「もしフリーランス新法に違反してしまったら、どのような罰則があるのか?」
「今現在、フリーランスとの契約で使用している契約書や発注書はそのまま使えるのか? 」
「フリーランス新法に違反しないためにはどうすれば良いのか?」
この記事では、EC企業の事業主や担当者の皆様が、フリーランス新法の施行によって保護の対象となったフリーランスに業務を委託する場合に注意しなければならないフリーランス新法上の事業者の義務と、違反した場合の罰則等について、違反事例や企業の対応策を挙げながら、EC専門の弁護士が詳しく解説します。
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目次
フリーランス新法とは?


正式名称・施行時期等
フリーランス新法とは、正式名称を「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」といい、2023年4月28日に可決・成立し、2024年11月11日に施行されました。
この法律は、フリーランス法、フリーランス新法、フリーランス保護新法などと呼ばれており、行政は、フリーランス法という呼称を用いていますが、本稿では、新しい法律であるという意味を込めて、フリーランス新法という呼称を用いています。
法律の目的
この法律の目的は、フリーランスが安心して働ける環境を整備するため、以下の2点を図ることを目的としています。
①フリーランスと企業などの発注事業者の間の取引の適正化
②フリーランスの就業環境の整備
①については、公正取引委員会と中小企業庁が管掌しており、②については、厚生労働省の所管となっています。
法律の適用対象
フリーランス新法の適用対象となる取引は、発注事業者からフリーランスへの業務委託であり、事業者間取引に限定されます。
フリーランスはこの法律では、正式には「特定受託事業者」といい(以下「フリーランス」といいます。)、業務委託の相手方である事業者で、従業員を使用しないものを指します。具体的には、個人事業主として企業に属さず個人で労働する人や、一人社長である従業員を雇用していない法人、一人親方といわれるような建築・建設現場の職人などが該当します。業種・業界の指定はなく、年齢制限もないため、高齢の方もフリーランスに含まれます。
発注事業者とは、フリーランスに業務委託をする事業者のことであり、正式には「業務委託事業者」といいます(以下原則として「発注事業者」といいます。)。業務委託事業者であって、以下のいずれかに該当するものは、「特定業務委託事業者」といい、「業務委託事業者」より課される義務が多くなります。
・個人であって、従業員を使用するもの
・法人であって、二以上の役員があり、又は従業員を使用するもの
また、「特定業務委託事業者」による業務委託の期間が、1か月以上である場合又は6か月以上である場合には、それぞれ課される義務が異なります(期間が長くなるほど課される義務が多くなります)。
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フリーランス新法の7つの義務項目


取引条件の明示
まず、1つ目の義務が、取引条件の明示です。この義務は、発注事業者が特定業務委託事業者であるか否かを問わず、また業務委託期間の長さに関わらず、フリーランスとの全ての取引において課される義務となります。
発注事業者は、フリーランスに業務委託をした場合(基本契約などを締結している場合は、基本契約締結時ではなく、個々の業務委託を行う場合となります。)、直ちに書面又は電磁的方法(メール、SNSのメッセージ等)で取引条件を明示する義務があります。フリーランス新法の3条において当該義務が定められていることから、この明示は、「3条通知」と言われることもあります。明示しなければならない取引条件の一覧は以下のとおりです。
・業務の内容
・報酬の額
・支払期日
・発注事業者・フリーランスの名称
・業務委託をした日
・給付を受領/役務提供を受ける日
・給付を受領/役務提供を受ける場所
・(検査を行う場合)検査完了日
・(現金以外の方法で支払う場合)報酬の支払方法に関する必要事項
期日における報酬支払
2つ目の義務が、期日における報酬支払です。この義務は、発注事業者が特定業務委託事業者であれば、業務委託の期間に関わらず、守らなければならない義務となります。発注事業者は、発注した物品等を受け取った日から数えて60日以内のできる限り早い日に報酬支払期日を設定し、期日内に報酬をフリーランスに対して支払わなければなりません。
ただし、発注事業者自身が下請けであり、フリーランスに対して孫請けとしての業務委託を行っている場合は、元委託業務(発注事業者が受託している業務)の支払期日(発注事業者が報酬を受け取る日)から起算して30日以内のできる限り短い期間内で報酬の支払期日を定めることができる「再委託の例外」という規定があります。この例外を適用したい場合は、発注事業者は前述の「3条通知」において、「再委託である旨」、「元委託者の氏名又は名称」及び「元委託者の対価の支払期日」をフリーランスに明示しなければなりませんのでご注意ください。
禁止行為
3つ目の義務は、禁止行為を行わないことであり、禁止行為には7つの行為があります。この義務は、発注事業者が特定業務委託事業者に該当し、かつ、1か月以上の業務委託の場合に適用されます。7つの禁止行為は以下のとおりです。
①「受領拒否」(注文した物品又は情報成果物の受領を拒むこと)
②「報酬の減額」(あらかじめ定めた報酬を不当に減額すること)
③「返品」(受け取った物品を不当に返品すること)
④「買いたたき」(通常支払われる対価に比べて、著しく低い報酬を不当に定めること)
⑤「購入・利用強制」(発注事業者が指定する業務に関連のない物・役務を強制的に購入・利用させること)
⑥「不当な経済上の利益の提供要請」(金銭、労務の提供等をさせること)
⑦「不当な給付内容の変更・やり直し」(作業の費用を発注事業者が負担することなく、仕事内容を変更したり、やり直しをさせたりすること)
募集情報の的確表示
4つ目の義務が、募集情報の的確表示です。この義務は、発注事業者が特定業務委託事業者であれば、業務委託の期間に関わらず、守らなければならない義務となります。発注事業者は求人広告などにフリーランスの募集に関する情報を掲載する際には、虚偽の表示や誤解を与える表示をしてはならず、内容を正確かつ最新のものに保たなければなりません。
特に、募集情報の中でも、以下の6つの事項を欠くものについては、「誤解を生じさせる表示」に該当するものとして、フリーランス新法第12条違反となってしまいますので、注意が必要です。この規制は、近年いわゆる「闇バイト」の募集において、通常の業務内容の仕事の募集情報と誤解を生じさせるような広告等が見受けられる背景を踏まえたものとなります。
①特定受託事業者の募集を行う者の氏名又は名称
②住所(所在地)
③連絡先
④業務の内容
⑤業務に従事する場所
⑥報酬
育児介護等と業務の両立に対する配慮
5つ目の義務は、育児介護等と業務の両立に対する配慮です。この義務は、発注事業者が特定業務委託事業者に該当し、かつ、6か月以上の業務委託の場合に適用されます。発注事業者は、フリーランスが育児や介護などと業務を両立できるよう、フリーランスの申出に応じて必要な配慮をしなければなりません。なお、6か月未満の業務を委託している場合も、上記の事項に配慮するよう努めなければならない努力義務が発注事業者に課されています。
「必要な配慮」の例としては、フリーランスの子どもの急病の際に、納期の短期間の繰り下げに応じることや、家族の介護の為に特定の曜日についてオンラインで就業したいとの申出に対し、オンラインに切り替えられるよう調整することなどが挙げられます。発注事業者が、やむを得ず上記のような必要な配慮を行うことができない場合には、行うことができない理由についてフリーランスに説明しなければなりません。
ハラスメント対策に係る体制整備
6つ目の義務は、ハラスメント対策に係る体制整備です。この義務は、発注事業者が特定業務委託事業者であれば、業務委託の期間に関わらず、守らなければならない義務となります。発注事業者は、ハラスメント(セクハラ、マタハラ、パワハラなど)により、フリーランスの就業環境を害することがないよう、以下の措置を講じなければなりません。具体的には、ハラスメントを禁止・防止する社の方針を明確にしたり、ハラスメンを未然に防ぐための研修を行ったり、相談対応制度を設けたり、外部機関にトラブルの相談への対応を委託したりすることなどが考えられます。
①ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化、方針の周知・啓発
②相談や苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③ハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
中途解除等の事前予告・理由開示
最後の7つ目の義務は、中途解除等の事前予告・理由開示です。この義務は、発注事業者が特定業務委託事業者に該当し、かつ、6か月以上の業務委託の場合に適用されます。発注事業者は、6か月以上の業務委託を中途解除したり、更新しないこととしたりする場合は、原則として30日前までにフリーランスに予告しなければならず、予告の日から解除の日までに、フリーランスから理由の開示を請求された場合は、理由の開示を行わなければなりません。
この予告や開示は、書面以外にも、ファクシミリや電子メール、SMSやSNSのメッセージ機能などを用いて行うことができますが、ブログやウェブページなどへの書き込みのように、第三者に閲覧させることを主な目的とする手段を利用することはできません。
フリーランス新法違反の場合の罰則等


フリーランス新法における罰則の全体像
フリーランス新法には、発注事業者に対する罰則はありますが、フリーランスに対する罰則はありません。発注事業者とフリーランスとの間には、通常、非対称的な力の関係があり、フリーランスは弱い立場に置かれがちです。この法律は、フリーランスを保護やサポートの対象として、フリーランスの取引環境を適正化し、安心して働きやすくする環境を確保し整えることを目的としているためです。発注事業者となる企業は、フリーランス新法の目的と内容、罰則を正しく理解し、法的リスクを回避するための適切な対応を取る必要があります。
具体的な罰則内容と適用条件については後に詳述しますが、フリーランス新法の罰則の適用対象となる場合は、大まかにまとめると、行政の命令に違反した場合、行政から求められた報告をしなかった場合、行政に虚偽の報告をした場合、行政による検査を拒否・妨害・忌避した場合となりますので、まずはこの点を頭に入れておいていただくと良いでしょう。
法令違反への行政の対応プロセス
それでは、実際に発注事業者がフリーランス新法に違反する行為を行っていると考えられる場合、行政はどのように対応していくのでしょうか。
まず、行政(公正取引委員会、中小企業庁長官又は厚生労働大臣)は、フリーランス新法に違反していると疑われる発注事業者に対して、報告徴収や立入検査などの調査を行い、違反の事実の認定を行います。違反の事実が認められた場合は、必要な措置の勧告が行われます。もし発注事業者が正当な理由なく、その勧告に従わなかった場合は、行政による当該措置に対する命令が行われる場合があります。この命令に違反した場合は、罰金に処されることになります。命令違反の場合以外にも、報告の徴収に応じなかったり、虚偽の報告をしたり、検査を拒否したりした場合も、罰金や過料といった罰則の対象となります。
なお、企業が勧告に違反した場合や、行政が命令を行った場合には、行政はその旨を公表することができるとされているため、企業名が公表されてしまう可能性があり、企業イメージが大きく低下するリスクがあります。
また、上記の対応プロセスとは別途、行政は、必要があると認めるときは、発注事業者に対し、指導及び助言をすることができると定められており、これらはあくまで行政指導であるため、罰則や企業名の公表はされませんが、企業の対応次第では、さらなる調査や勧告へと発展していく可能性はあります。
具体的な罰則内容と適用条件
具体的な罰則の内容と適用される条件について見ていきましょう。まず、フリーランス新法の罰則は、刑法で定められた刑罰である「罰金」と、行政罰である「過料」に分かれています。また、罰金に関しては、その違反行為を行った行為者個人だけでなく、その法人も罰則の対象となる両罰規定が定められています。行政上の制裁である過料に関しては、法人と個人の両方に同時に科されることはありません。
具体的な金額については、まず罰金は、命令に違反したときや、行政の求める報告をしなかったとき、虚偽の報告を行ったとき、検査を拒否・妨害・忌避したときのいずれかに該当する場合には、50万円以下の罰金に処されます。次に過料については、フリーランス新法の6つ目の義務項目である「ハラスメント対策に係る体制整備」のみがその対象となっており、ハラスメント対策に係る体制整備について行政の求める報告をしなかったときや虚偽の報告をした場合に、20万円以下の過料に処されることになります。
例えば、発注事業者がフリーランスに非がないにも関わらず、フリーランスの報酬を減額した場合、公正取引委員会は速やかに減額した額を支払うよう発注事業者に勧告します。発注事業者が正当な理由がないにも関わらず、その勧告に対応しなかった場合、公正取引委員会は、当該勧告に係る措置を取るべきことを命令することができます(命令したことを公表することもできます)。さらに、発注事業者がその命令にも違反した場合、罰則規定に基づいて、違反行為をした者(例えば法人の使用人)と法人に対しても50万円以下の罰金が科されるということになります。
違反被疑事実申出窓口
フリーランス新法上の違反行為については、フリーランスから行政(公正取引委員会、中小企業庁長官、厚生労働大臣)に違反の被疑事実(疑いがある事実)を申し出ることもできます。申出を受けた場合、行政は、必要な調査を行い、申出の内容が事実であると認める場合には、フリーランス新法に基づく措置やその他適切な措置をとらなければならないと定められています。なお、フリーランスが上記の申出をしたことを理由として、発注事業者がフリーランスに対して、取引の数量を減らしたり、取引を停止したり、その他の不利益な取扱いをしたりすることは禁止されています。
また、上記、違反被疑事実申出窓口以外にも、厚生労働省から委託を受けた第二東京弁護士会が運営している「フリーランス・トラブル110番」というフリーランスの相談窓口もあります。フリーランス・トラブル110番のサイトでは、実際の相談事例とアドバイスも閲覧することができます。
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フリーランス新法の違反事例


下請法に基づく勧告事例
2024年11月12日、公正取引委員会は、大手出版社とその子会社に対して、下請法上の「買いたたきの禁止」に違反する事実が認められたとして、下請代金の額の引き上げや再発防止策の実施等の勧告を行いました。当該出版社は、自社が出版する雑誌の記事作成や写真撮影の多くをフリーランスに委託していたところ、取引条件の変更に関する事前の協議を行わないまま、原稿料や撮影代を一方的に引き下げる行為を行ったとされています。引き下げ率は約6.3パーセントから約39.4パーセントにまで至っており、「同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い額」であると認定されました。
フリーランス新法の施行は2024年11月ですが、施行以前の違反行為はフリーランス新法の対象外となるため、下請法が適用されました。今後は、同様の違反行為に対してはフリーランス新法の適用対象となると考えられます。
- 下請法とフリーランス新法の違い
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下請法(下請代金支払遅延等防止法)とフリーランス新法は、どちらも業務を受託する側を保護するという点では共通していますが、2つの法律には、どのような相違点があるのでしょうか?以下、7点の相違事項の概要のまとめについてご覧ください。
まず、下請法では「親事業者」の要件の1つとして資本金区分がありますが、フリーランス新法には、規制を受ける発注事業者に資本金の区分がありません。つまり、下請法では守られる側である中小企業や小規模事業者も、フリーランス新法では規制を守る側になるということです。
次に、下請法、フリーランス新法ともに、対象となる取引の内容は、「製造委託」・「情報成果物の作成委託」・「修理委託」・「役務の提供委託」であることに変わりはありませんが、「役務の提供委託」については、フリーランス新法では「建設業法の建設工事」も対象(「一人親方」への委託も対象)となる点と、フリーランス新法では「再委託」である必要はない(自ら用いる役務の提供の委託も対象)となる点が下請法と異なります。
さらに、規制内容について比較してみます。下請法上の義務である「取引記録の書類の作成及び保存義務」はフリーランス新法にはありませんが、フリーランス新法においても、フリーランスからの書面交付請求に対応する必要がある期間はデータを残しておく必要があります。
禁止事項については、おおむね共通しており、フリーランス新法が2つ少なくなっていますが、手形のサイトの考え方自体については、フリーランス新法も下請法と同じであり、60日超えのサイトの手形を交付した場合、下請法では「割引困難手形の交付の禁止」となりますが、フリーランス新法では「期日における報酬支払義務」違反となるため、大きな違いは無いといえます(「有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止」は下請法にしかない規制となります)。
フリーランス新法における、就業環境の整備に関する4つの義務項目は、フリーランス新法独自の規定であり、従来の下請法適用企業も新たに対応が必要となります。具体的には以下の4つとなります。
・義務④「募集情報の的確表示」
・義務⑤「育児介護等と業務の両立に対する配慮」
・義務⑥「ハラスメント対策に係る体制整備」
・義務⑦「中途解除等の事前予告・理由開示」契約書面や発注書面において明示が求められる項目の比較については、報酬をデジタル払い(資金移動)で行う場合の明示事項のみがフリーランス新法独自の規定となるため、下請法を遵守した発注書面は、報酬をデジタル払いで行う場合を除いて、そのまま活用可能です。しかし、フリーランス新法によって、新たに発注事業者になる企業は、求められる全ての項目を網羅した契約書や発注書を新たに作成する必要があります。
最後に、上記の明示項目を明示する方法についても比較してみます。電磁的方法によって契約書面や発注書面を交付する場合において認められる方法は、SNSのメッセージなど、フリーランス新法の方が多くなっています。また、フリーランス新法においては、電磁的方法を用いることについての受注事業者(フリーランス)の承諾は不要であり、フリーランスが出力して書面作成が可能である必要もありません。フリーランス新法に基づくフリーランスとの契約においては、下請法よりも電磁的方法を活用しやすいといえます。
なお、2025年5月16日に下請法の改正案が可決、成立し、来年2026年1月1日に施行されることになりました。法律の題名も「下請」という語が対等な関係ではないという語感を与えるとの指摘から、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」に改正されます。上記の下請法とフリーランス新法との相違事項に関する改正点としては、改正下請法においては、対象取引において手形払が禁止される点や、適用基準に従業員基準(製造委託等は300人、役務提供委託等は100人)が追加される点、書面等の交付義務において、受託側の承諾の有無にかかわらず、電磁的方法による提供が認められる点が挙げられます。
フリーランス新法に基づく初の行政指導
2025年3月28日、公正取引委員会はフリーランス新法に基づく初の行政指導を行いました。公正取引委員会はフリーランスとの取引が多い業種であるゲームソフトウェア業・アニメーション制作業・リラクゼーション業・フィットネスクラブの事業者について集中的に調査を行い、45の事業者に対して、契約書や発注書の記載、発注方法、支払期日の定め方等の是正を求める指導を行ったと発表しました。
今回の是正の指導においては、フリーランス新法の1つ目の義務項目である「取引条件の明示義務」違反が最も多く、次いで、2つ目の義務項目である「期日における報酬支払い義務」違反が多くなっています。なお今回は、あくまで行政指導であるため、罰則はなく、社名も公表されていません。ただし、公正取引委員会は、今後も積極的に情報収集を行い、前述の違反被疑事実申出窓口の周知広報も行うとしており、今後、フリーランス新法違反に対する取り締まりを強化していくものと考えられます。
ケーススタディ:このような場合も違法となるのか?
上記では、下請法に基づく勧告と、フリーランス新法に基づく行政指導の実際の事例を紹介しましたが、発注事業者である企業の担当者の方が悩まれると思われる事例について、架空のケースによるケーススタディとして、検討してみましょう。
発注事業者である企業が、屋外での写真撮影をフリーランスのカメラマンの方に委託した場合の事例です。屋外での撮影業務を委託しましたが、あいにくの雨で撮影を実施できませんでした。このような場合、実施実績がないため、フリーランスに報酬の支払いをしないということは違法となるのでしょうか?また、複数日程のスケジュールを押さえた上で、晴れた日にだけ撮影をし、フリーランスへの支払いは一日分とするという契約を最初から結ぶことは可能なのでしょうか?
フリーランス新法においては、費用を発注事業者が負担することなく、仕事内容を変更することは、禁止事項である「不当な給付内容の変更」に該当します。「発注取消」によって「フリーランスの利益を不当に害する」こともこれに含まれます。つまり、上記の事例は、違法となる可能性が高いと考えられます。上記のように、雨で撮影を実施できないために発注を取り消す場合は、少なくともフリーランスがスケジュールを押さえるために要した費用(キャンセル費用)は発注事業者が負担するべきでしょう。また、上記後段のような契約を締結する場合は、キャンセル費用の規定とともに、天候によって発注の内容が変更となることを明記し、予めフリーランスの承諾を得ておく必要があるでしょう。
フリーランス新法違反にならないための対応


まず、フリーランスとの取引においては、適切な契約書や発注書を作成した上で契約を締結し、記録をしっかりと残しておくことが必須となるでしょう。口頭での契約(取引条件の明示)はフリーランス新法違反となるため、書面又は電磁的方法によって契約を締結しなければなりません。また、契約の規定の内容の見直しも必要であり、特に、「3条通知」の必要事項を満たしているか、中途解除等の事前予告期間の定めは適法であるかについては、重要なポイントとなります。既存の契約書の見直しや新たなひな形の作成には、専門的な知見が必要となりますので、フリーランスとの適法な取引を行うためには、弁護士等の法律の専門家に依頼すると確実です。
次に、就業環境の整備について、継続的に対応していく必要があるでしょう。前述のように、フリーランスの就業環境の整備については、下請法にはない規制であり、発注事業者は、フリーランスとの取引の期間に応じて、「募集情報の的確表示」・「育児介護等と業務の両立に対する配慮」・「ハラスメント対策に係る体制整備」・「中途解除等の事前予告・理由開示」の4つの義務項目を遵守しなければなりません。なお、就業環境の整備については、社内の法務担当者の方々だけではなく、労務や人事、総務などの担当者の方々とも協力して進めていく必要があるでしょう。
上記でご紹介した点は対応ポイントの一例となります。また、個別の事例については、法律の専門家に相談されることをお勧めします。
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