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EC取引の返品トラブルを防ぐ!法律知識と対応方法 メールでスピード相談 

EC取引の返品トラブルを防ぐ!法律知識と対応方法

通販サイトやオンラインモール等でEC取引を行う企業の皆様は、次のようなお悩みや課題があるのではないでしょうか。

「消費者から返品を求められたときにどこまで応じたらいいか?」
「EC取引にもクーリング・オフは適用されるのか?」
「EC取引において返品の制限をすることは可能なのか?」
「返品トラブルを防ぐために事前に何をすればいいか?」
「商品に問題がないのに返品に対応しないといけないのか?」 

この記事では、EC(インターネット取引)事業者が、「返品」に関し消費者とのトラブルを防ぐための、「特定商取引法」に基づいた対応方法について解説 します。

この記事の解説者
弁護士小野智博の写真
弁護士 小野 智博(おの ともひろ)
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士
ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。EC企業からの相談に、法務にとどまらずビジネス目線でアドバイスを行っている。
著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」

クーリング・オフ制度の適用があるか

T社長
T社長
わが社では新しい事業の一環としてECサービスを始めましたが、EC取引の返品におけるトラブルをよく聞きます。消費者からの返品の要望についてどのように考えたらいいでしょうか?

なるほど。今日は、EC取引における返品についての相談ですね。まずは、「クーリング・オフ」について解説します。
小野弁護士
小野弁護士

実際に店頭で確認する取引と違い、EC取引では直接手に取る事ができないため、双方にとって誤解のないよう表示をする必要があります。商品に問題がない場合でも、消費者の返品要望はよくあるものですがトラブルに発展しないよう事前に考えておくべき事があります。

なかでも返品といえば、まず思い浮かべる制度として、「クーリング・オフ」があるでしょう。ただしEC取引ではクーリング・オフ制度は適用されず、「法定返品権」という制度が適用されますので、正しく理解しておくことが重要です。以下詳しくみていきましょう。

民法の原則

民法では、「契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。) に対して相手方が承諾をしたときに成立する。」(民法522条1項)とあります。このように成立した契約は、双方を拘束し、一方的には契約内容を変更することはできません。民法の原則からすると、消費者から一方的な「返品」をすることは許されていないこととなります。

特定商取引法

しかし、他の法律によってこの民法の原則も修正されています。例えば「特定商取引法」です。クーリング・オフは、この「特定商取引法」に定められ、消費者トラブルが起こりやすい取引に適用されます。

クーリング・オフとは、いったん契約の申込みや契約の締結をした場合であっても、契約を再考できるように、一定期間内であれば、無条件で申込みの撤回や契約を解除できる制度です。定められたその期間内に解除の手続きをすれば、一方的に「返品」できるものです。

EC取引の場合

EC取引は、特定商取引法の「通信販売」に該当し、特定商取引法の適用を受けます。しかし、他の6つの類型(訪問販売、電話勧誘販売、連鎖販売取引、特定継続的役務提供、業務提供誘引販売取引および訪問購入に係る取引をいいます。)とは異なり、「通信販売」には、クーリング・オフを認める規定はありません。すなわち、EC取引にクーリング・オフ制度は適用されないということになります。

「通信販売」の場合に認められる「法定返品権」とは

T社長
T社長
EC取引ではクーリング・オフが適用されないんですね。
はい。しかし、EC取引を含む通信販売においては「法定返品権」と呼ばれる特別な制度が認められていますので注意が必要です。
小野弁護士
小野弁護士

特定商取引法15条の3

(通信販売における契約の解除等)
「第15条の3 通信販売をする場合の商品又は指定権利の販売条件について広告をした販売業者が当該商品若しくは当該指定権利の売買契約の申込みを受けた場合におけるその申込みをした者又は売買契約を締結した場合におけるその購入者(次項において単に「購入者」という。)は、その売買契約に係る商品の引渡し又は指定権利の移転を受けた日から起算して8日を経過するまでの間は、その売買契約の申込みの撤回又はその売買契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。ただし、当該販売業者が申込みの撤回等についての特約を当該広告に表示していた場合(当該売買契約が電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律 (平成13年法律第95号)第2条第1項 に規定する電子消費者契約に該当する場合その他主務省令で定める場合にあっては、当該広告に表示し、かつ、広告に表示する方法以外の方法であって主務省令で定める方法により表示していた場合)には、この限りでない。
2  申込みの撤回等があつた場合において、その売買契約に係る商品の引渡し又は指定権利の移転が既にされているときは、その引取り又は返還に要する費用は、購入者の負担とする。」

上記の通り、この制度は、法律的には「法定返品権」と呼ばれ、クーリング・オフとは大きく異なります

クーリング・オフ制度との違い

クーリング・オフ制度では、特約の有無、表示の有無に関わらず、一定期間内であれば、無条件で、一方的に「返品」することができます。しかし、EC取引を含む「通信販売」では、特約が広告に表示されていれば、消費者からの一方的な「返品」は認められません(上記、特定商取引法第15条の3第1項但書)。なお、ここでいう特約とは、「返品の可否」、「返品の期間等条件」、「返品に係る費用負担の有無」があれば、これらを表示することであり、これらの事項を省略することはできません(特定商取引法第11条)。ここが、「クーリング・オフ」制度と「法定返品権」制度の大きな違いです。

「法定返品権」を行使できなくなる特約表示

特約が広告に表示されていれば、消費者からの一方的な「返品」は認められません。ただし、この「特約」の内容や表示の方法は法律で定められており、これを守らないと「法定返品権」が消費者に認められ、「返品」に応じなければならないので注意してください。以下、一覧できるように解説します。

<特約に必要な表示内容>
・返品を認めるか否か
・返品を認める場合にはそれが可能である期間等の条件
・返品に必要な費用の負担の有無

<表示方法>
法律は、その特約内容を一定の表示方法によることを要求しています。これらの要求を充たしていないと、「特約」は無効であり、消費者に「法定返品権」が認められることになります。

特定商取引法は、その特約内容を「顧客にとつて見やすい箇所において明瞭に判読できるように表示する方法その他顧客にとって容易に認識することができるよう表示すること」(特定商取引法主務省令第9条3号)としています。

さらに、EC取引の場合には、一般の「通信販売」と異なり、電子契約法(正式名称:電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律)という法律が適用になり、特定商取引法15条の3第1項但書、電子契約法2条第1項、特定商取引法主務省令16条の3により、最終申込画面における特約の表示をすることまでが義務づけられています。

具体的には、最終申込画面も含む、商品等を販売しているページ自体に常に表示させる方法であれば問題はありません。しかしながら実際には、常に同一画面上に表示すると商品ページのデザインや宣伝に影響が出ることもあるため、他のページにリンク(参照先・ダウンロード先等)を貼るという方法が多いようです。

また、「返品不可」とする場合には、商品画面と同一のページに掲載する方法も良いですが、常に「返品不可」という文字を表示させることは、消費者に不安を与え、購買意欲を削ぐ可能性もあります。一定の条件(期間等)の下、返品を認めるのであれば、その表示を省略することはできませんので、リンクを貼るという方法をとるのが良いでしょう。最近のECでよくあるのは、開封前の返品を認めるというものです。消費者にとっては、すべて不可よりも安心感が増すため、購買意欲を削がない表示としておすすめの方法です。消費者の購買意欲を削がない方法としては、商品のサイズ交換・色間違いのための返品を可能とする表示も考えられます。

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不実告知の禁止

特定商取引法では、販売業者と役務提供事業者に対して不実告知を禁止しています。

(特定商取引法第13条の2)
販売業者又は役務提供事業者は、①通信販売に係る売買契約又は役務提供契約の申込みの撤回又は解除を妨げるため、②当該売買契約若しくは当該役務提供契約の申込みの撤回若しくは当該売買契約若しくは当該役務提供契約の解除に関する事項(第十五条の三の規定に関する事項を含む。)又は③顧客が当該売買契約若しくは当該役務提供契約の締結を必要とする事情に関する事項につき、④不実のことを告げる行為をしてはならない。

①「通信販売に係る売買契約又は役務提供契約の申込みの撤回又は解除を妨げるため」
顧客が返品やキャンセルを行う権利を妨害する意図があることを指します。

②「当該売買契約若しくは当該役務提供契約の申込みの撤回若しくは当該売買契約若しくは当該役務提供契約の解除に関する事項」
返品やキャンセルができるにも関わらず、それらができないと不実(ウソ)を顧客に伝えることを指します。たとえば、返品特約を設けていないにもかかわらず、顧客からの返品要望に対して「通販にはクーリング・オフが適用されないため、8日以内であっても返品はできません。」と回答するなどが考えられます。

③「顧客が当該売買契約若しくは当該役務提供契約の締結を必要とする事情に関する事項」
返品やキャンセルをさせないために、顧客が商品やサービスを購入する事情について不実を伝えることを指します。たとえば、販売している商品について在庫があるにもかかわらず「キャンセルすると次の入荷はない。」と顧客に伝えることが考えられます。

④「不実のことを告げる行為をしてはならない。」
虚偽説明を行うこと、事実と異なることを告げる行為を指します。この要件は告げている内容 が客観的に事実と異なっていることで足りるため、顧客が錯誤に陥り、解除を行わなかったことは必要としません。また、「告げる行為」とは何らかの手段で不実が伝達されることを指し、たとえば、電話により口頭で告げる場合だけでなく、 電子メール等を用いて不実の内容を送信して告げる場合等も該当します。

<不実告知を行った場合の罰則>
特定商取引法第13条の2の規定に違反したときは、当該違反行為をした者に、3年以下の懲役又は300万円 以下の罰金(併科あり)(特定商取引法第70条1号)が科せられる可能性があります。また、主務大臣による是正の勧告等の指示(特定商取引法第14条)や業務停止命令(特定商取引法第15条)等の対象となる可能性があります。

(「特定商取引に関する法律の解説(逐条解説)」(特定商法取引ガイド)
(https://www.no-trouble.caa.go.jp/law/r4.html)参照) 

【参考】経済産業省のガイドラインと返品特約の表示に関するJADMA指針

T社長
T社長
特約があるだけでなく、きちんと表示することが重要なんですね。
はい。経済産業省と公益社団法人日本通信販売協会(JADMA)より、返品特約の表示に関する指針が出ていますので、一部ご紹介します。それぞれサイトに詳しく記載された資料がありますので、参考にしてみてくださいね。
小野弁護士
小野弁護士

<経済産業省ガイドライン>
返品特約の表示方法について
① 表示サイズ及び表示箇所
いかなる媒体で表示するにせよ、返品特約を極めて小さな文字で表示することや、広告中で消費者が認識しづらい箇所に表示することは、消費者にとって容易に認識することができるよう表示しているとは考えられないため、表示サイズや表示箇所に関してそれぞれ消費者が認識しやすい方法で表示する必要がある。
② 返品特約以外の事項との区別がはっきりしていること
消費者が返品特約について容易に認識できるようにするため、いかなる媒体で表示するにせよ、返品特約が、申込方法や振込方法等の他の事項に紛れ、埋没しないような方法で表示されている必要がある。
例えば、商品の価格や申込先の電話番号等、消費者が確実に確認すると考えられる事項が表示されている箇所の近くに表示することや、他の事項と区別がつくよう、「返品に関する事項」等の表題を掲げて区分した上で、その区分に返品特約について表示するなどの措置が必要となる。
・・・
出典:「通信販売における返品特約の表示についてのガイドライン」(経済産業省)
(https://www.no-trouble.caa.go.jp/pdf/20220601la02_05.pdf)

<公益社団法人日本通信販売協会(JADMA)>
インターネットにより広告をする場合
・各商品の広告における表示
① 広告中の各商品の説明箇所において、「到着後○日以内に限り返品可」、「使用前に限り返品可」、「食品は返品不可」、「送料はお客様負担」等、主に「返品特約における重要事項」について示したマークの添付や文字での表示を、明瞭な方法で、かつ、他の事項に隠れて埋没してしまうようなことがないように表示(例:商品の価格や電話番号等、消費者が必ず確認すると考えられる事項の近い場所に、商品の価格等と同じ文字サイズで表示する、パーソナルコンピュータの場合において標準設定で12ポイント以上の文字で表示する、色文字・太文字を用いる等して表示する、ページのわかりやすい位置に他の事項と区分して目立つように表示するなど)する。
② または、返品特約がパターン分けされている場合に、そのパターンに応じて、「返品A」・「返品B」などの分類がなされ、それを表すマークの添付や文字での表示を、明瞭な方法で、かつ、他の事項に隠れて埋没してしまうようなことがないように表示する。
・・・
出典:「返品特約の表示に関する JADMA 指針」(公益社団法人日本通信販売協会(JADMA))
(https://jadma-production.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/pdf/abouts/guideline/glreturnedgoods.pdf)

▶︎参考情報:こちらの記事では、返品規約を含む利用規約の作成について解説していますので、ご参照ください。
ECサイトの利用規約の作成方法とは?|知っておきたい注意点をECに強い弁護士が解説

EC取引の返品トラブルについてのお悩み、リスク、課題は解決できます

T社長
T社長
返品トラブルを防ぐための取り組みについて、少し理解が深まった気がします。今日教えていただいたポイントを押さえつつ、消費者からの信頼を獲得し、より新しい事業を拡大していきたいです!
はい、応援しています。返品は事業者と顧客の双方にとって重要なポイントなので、今回の内容を活用して、リスク管理と顧客からの信頼獲得の両方を実現させましょう。
小野弁護士
小野弁護士

 

この記事では、EC関連サービスの企業の皆さまが返品のよるトラブルを防止するための、お悩み、リスク、課題について、解決のヒントとなる基本的な知識をお伝えしました。EC取引においては、実際のトラブル事例を抑えつつ、クーリング・オフ制度と法定返品権制度の違いを理解し、消費者にとって安心して利用できるECサイトを作ることが大切です。

これらの情報を、皆さまの会社にうまくあてはめて、一つずつ実行していくことで、貴社のお悩みや課題が解決し、貴社のサービスへのユーザーや社会の信頼が大きく増え、ビジネスが成功する未来が実現すると信じています。

しかも、頼りになる専門家と一緒に、解決できます!

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「助ネコ」の株式会社アクアリーフ様、「CROSS MALL」の株式会社アイル様など、著名なECシステム企業が多数、当法律事務所の顧問契約サービスを利用されています。

企業の皆様は、ビジネスのリスクは何なのか、リスクが発生する可能性はどれくらいあるのか、リスクを無くしたり減らしたりする方法はないのか、結局会社としてどうすれば良いのか、どの方法が一番オススメなのか、そこまで踏み込んだアドバイスを、弁護士に求めています。当法律事務所は、できない理由を探すのではなく、できる方法を考えます。クライアントのビジネスを加速させるために、知恵を絞り、責任をもってアドバイスをします。多数のEC企業様が、当事務所の、オンラインを活用したスピード感のあるサービスを活用されています。

当事務所にご依頼いただくことで、
「EC取引においてよくある返品トラブルのリスクを低減しながら、事業の拡大を目指すことができる。」
「返品トラブルを防止しながら、消費者に不安感を与えない、消費者が安心して利用できる通販サイトを作成できる。」
「ECサイトを作成したり、改修する過程で、法令に基づいた正しい表示ができるようになり、企業の信頼を守りながらビジネスを行うことができる。」 

このようなメリットがあります。

顧問先企業様からは、
「自社だけでは自信のなかった返品に関する表示について確認してもらい、自信をもってECサイトを運営していけるようになった。」
「各種法令に関する研修を通じて、従業員のコンプライアンス意識が向上し、各自の知識を業務に活用できるようになった。」
「EC取引におけるさまざまな相談ができ、分からないことはすぐに聞ける体制ができたので、事業を進めるにあたっての不安が少なくなった。」 

このようなフィードバックをいただいております。

当事務所では、問題解決に向けてスピード感を重視する企業の皆さまにご対応させていただきたく、「メールでスピード相談」をご提供しています。

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※本稿の記載内容は、2024年12月現在の法令・情報等に基づいています。
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