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契約・規約チェック

【改正民法対応】利用規約の同意のとり方と設置方法

利用規約は、通常の契約書としての意味を持ちうるものですが、「利用規約を作成し、サイトに掲載した」というだけでは、利用規約が契約書としての機能をもつとは言えません。なぜなら、通常の取引と違い、ECサイト運営者と利用者はその都度契約書を取り交わすものではなく、利用規約の内容についてお互いの合意を確認できない可能性があるからです。

しかし、この利用規約を正しく設置することで、当該規約の内容を双方の合意の中に取り込むこと(、つまり利用規約に契約書としての機能を持たせること)ができ、また取引契約の内容をお互いに確認しトラブルを未然に防ぐことにもつながります。

上記を踏まえ、今回は、「利用規約」を契約書と同じように機能させるためには、どのような点に注意すべきがを解説します。

ECサイトに利用規約が必要とされる理由

主に以下に挙げる5つの理由によりECサイトに利用規約が必要と考えられます。

  1. 利用者との契約書とするため
  2. 利用者とのトラブルを避けるため
  3. 被害があった場合の対処を載せておくことで、利用者の安心を得るため
  4. 利用者とECサイト運営者側のリスクを回避するため
  5. 取引内容を利用者に納得してもらうため

利用者とECサイト運営者のお互いにとって、不都合となるようなトラブルが生じないように利用規約は作られています。特にECサイトは実際の店舗と違い、事前に現品を十分確認できる状態ではなく、当事者双方に認識の違いが生まれやすいため、金銭的なトラブルや商品に関する問題が発生しやすい傾向にあります。

もっとも、もしトラブルに発展するような事態に巻き込まれても、あらかじめ利用規約にそのトラブルに関する対処法が記載されていれば、両者はこの規約に基づいて対応をすることができます。

つまり、利用規約は利用者とECサイト運営者との問題をスムーズに解決させるために必要なのです。

利用規約に必要な基本項目

ECサイトを利用する際には、利用登録や売買契約といった典型的な確認事項が必要になります。これらを筆頭に、以下の項目を基本的事項として記載しておくことをお勧めします。

ECサイトの利用規約項目

<利用登録について>

<禁止事項について>

<サービス内容の変更>

<利用規約の変更>

※改正民法第548条の4により、所定の手続を踏めば、通知(合意)なく「利用者に有利な変更」を行うことが認められる一方、通知なく「利用者に不利な変更」を行う場合には厳格な要件を満たす必要があるため、ビジネス事情に照らした柔軟な規約変更を望まれる場合には、上記のように規約変更に関する条項を盛り込んでおくことをおすすめします。

<個人情報>

<退会>

<売買契約について>

<受注、配送、決済>

<返品、交換、返金>

先述したように、ECサイトでは、物品の取引のみではなく形のないサービスに分類される商材も取り扱われることがあるため、映像や音楽配信などサービス契約の場合は下記の事項もあわせて記載しておく必要があります。こちらは著作権法などの知的財産権に関する法律に関係してきますので、一層の注意が必要です。

<著作権・知的財産権>

利用規約を契約内容とするためのルール

契約は、例えば「この商品を1000円で買いたい」、「この商品を1000円で売りましょう」といった、買う側の「申込み」とそれに対応する販売者の「承諾」があって成立するものです。このような契約においては、契約の履行をめぐってトラブルがないように、「商品の納期は契約成立後7日以内・支払いは3日以内」などの取引に関するルールもあわせて決めておかなければなりません。

このことは、「有形物」を販売する場合もそうですが、SNSサービスなどの無形サービスを利用する場合も同様です。そして、双方がそのルールに(法的に)拘束されるためには、利用者と運営者がお互いに条件やルール内容を認識したうえで、契約を成立させることが原則になります。

ECサイトビジネスの場合、「売り手(運営者)」が最初にルール(利用規約)を提示し、それに納得した「買い手(利用者)」が申込みし、「売り手(運営者)」がこれを承諾をするという方法の方が、ルールをその都度個別に決めるよりもより効率的です。

重複になりますが、利用規約を契約内容にするためには、「買い手(利用者)」が申込みをする前の段階で、利用規約を見て申込みをしたという認識がお互いに合致している必要があることに、ご注意ください。

具体的にどうすれば、契約内容となるか

実際には「利用規約」自体を読んでない人も多数存在すると思います。そのため、どんな方法で利用規約を設置しても、読まない人は読まないのではないかという不安があります。このような場合、具体的にどのようにすれば良いか疑問を持たれることもあるかと思います。

この点、法律の世界では、「事実認定」というものがあり、申込みの状況等を勘案して、規約を認識して申込をしたかを判断する事になります。

このことから、サイト運営者としては、利用者がその内容に当然同意したうえで、「申込み」をしているという状況を作り出すことが重要であり、これに対応する「利用規約」の表示方法を採用すると良いでしょう。

同意して、申込みをしていると認定される状況

利用規約を契約内容にするには、サービス利用の申込み、または「会員登録」の申込みをする前に、利用規約が確認できる形で表示してある必要があります。また、その規約に同意したうえで、申込みをしたと認定できる事情が必要になります。

例えば、申込み画面の直前に「利用規約」が設置され、きちんと見ているはずだと合理的に言えるような状態であったり、申込フォームに「□利用規約に同意する」とチェックボックスをつけたり、または申込みボタンが「利用規約に同意した上で申込む」となっているような場合、利用規約に同意したうえでの申込みと認定されやすい状況といえます。

改正民法(第548条の2)との関係

改正民法により、上記のように利用規約について利用者が合意(明示または黙示)している場合の他に、ECサイト運営者側が利用者に対し利用規約を契約(サービス利用)の内容とする旨を表示している場合には、利用規約について同意があった場合と同様に取り扱われます(改正民法第548条の2第1項2号)。

ただし、利用規約に利用者を拘束するという強力な効果を認めるためには、相手方に「明確に認識できるように」表示することが重要になります。一例として、サービス申込みまたは登録申込みの段階で、「本サービスをご利用される場合、当事者は利用規約(~リンク添付)に法的に準拠することになります」などのテロップやチェックボックスが表示されるようにしておくことが挙げられます。

以上(4-1、4-2)のように、法律的には、利用者が認識しやすく目立つ形での設置、つまりサイトを見た時に確認しやすい状態が良いということになります。また、昨今はSNS等のソーシャルメディアネットワークを通してユーザーの流す悪評が不測に拡散しやすい環境なので、ビジネス的にも、可能なかぎり無用なトラブルを避けるために、利用者にとって目立つ位置に利用規約やそのリンクを掲載しておく意義が高まっています。

具体的対応の3つの要点

対応の要点をまとめると下記の3つとなります。

まとめ

本記事では、ECサイト運営者と利用者の双方がお互いに守るべきルールについての記載方法や、取るべき具体的措置について取り上げました。サイトを設計するにあたっては、運営者としてよくあるトラブルを知っておくことや、なぜそのような状況になるのかを理解しておくことが大切です。今後自社に起こりそうなトラブルについて似たような前例はあるかなど、事前に対策できるところは丁寧に確認しておくことをおすすめします。

ファースト&タンデムスプリント法律事務所では、利用規約について、弁護士によるご相談やリーガルチェックのご依頼をお受けしております。トータルで矛盾のないサイト構成にするためにも「このような場合はどうなるのか?」といった個別の疑問点がありましたらぜひお気軽にお問い合わせください。

弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所は、EC・通販法務には特に高い知見と経験を有しています。
「助ネコ」の株式会社アクアリーフ様、「CROSS MALL」の株式会社アイル様など、著名なECシステム企業が多数、当法律事務所の顧問契約サービスを利用されています。
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執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所

※本稿の記載内容は、2022年3月現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。

 

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