EC利用規約の同意のとり方と設置方法|民法改正を踏まえ3つのポイントを弁護士が解説
通販サイトやオンラインモールなどのECサイトを運営している企業の担当者の皆様は、ECサイトの利用規約について、次のようなお悩みがあるのではないでしょうか。
「自社サイトの利用規約は、いざというときに契約書と同様に機能をするんだろうか?」
「利用規約を作っても、読んでくれない場合は無効?同意画面はどうすればいいのか?」
「利用規約を作成する場合には、どういった点に注意すればいいのか?」
「利用規約は、サイトのどこに、どのように設置すればいいのか?」
この記事では、通販サイトやオンラインモールなどのECサイトにおいて、利用規約を契約書として機能させるために必要な、同意の取り方と設置方法のポイントを、EC専門の弁護士が詳しく解説します。
目次
ECサイトに利用規約が必要とされる理由


利用規約は、通常の契約書としての意味を持ちうるものですが、利用規約を作成し、サイトに掲載したというだけでは、利用規約が契約書としての機能をもつとはいえません。なぜなら、通常の取引と違い、ECサイト運営者と利用者はその都度契約書を取り交わすものではなく、利用規約の内容についてお互いの合意を確認できない可能性があるからです。
しかし、この利用規約を正しく設置することで、当該規約の内容を双方の合意の中に取り込むこと(利用規約に契約書としての機能を持たせること)ができ、また取引契約の内容をお互いに確認しトラブルを未然に防ぐことにもつながります。
主に以下に挙げる5つの理由によりECサイトに利用規約が必要と考えられます。
①利用者との契約書とするため
②利用者とのトラブルを避けるため
③被害があった場合の対処を載せておくことで、利用者の安心を得るため
④利用者とECサイト運営者側のリスクを回避するため
⑤取引内容を利用者に納得してもらうため
利用者とEC事業者のお互いにとって、不都合となるようなトラブルが生じないように利用規約は作られています。特にECサイトは実際の店舗と違い、事前に現品を十分確認できる状態ではなく、当事者双方に認識の違いが生まれやすいため、金銭的なトラブルや商品に関する問題が発生しやすい傾向にあります。
もっとも、もしトラブルに発展するような事態に巻き込まれても、あらかじめ利用規約にそのトラブルに関する対処法が記載されていれば、利用者とECサイト運営者はこの規約に基づいて対応をすることができます。つまり、利用規約を定めることは利用者とECサイト運営者との問題をスムーズに解決させるために必要なのです。
利用規約に必要な基本項目


<利用登録について>
- 利用者が、利用登録の際に、利用規約をしっかりと読んで納得したうえで、この利用規約に基づいた対応を了承するということ
- 万一利用登録に関して登録に関する虚偽や違反を行なった場合、発生したトラブルはすべて利用者の自己責任になるということ
<禁止事項について>
- ECサイトを利用するにあたり、禁止事項にあたる行為を明確にしたうえで、万一禁止事項に触れる行為を行った場合の対処方法を定めておくこと
※例として、下記のような禁止事項が挙げられます。
・なりすましやサービスの妨害
・不正アクセスや情報の漏洩
・公序良俗に反する行為や反社会的勢力への関与の禁止
<サービス内容の変更>
- サービスを利用者に通知なく変更する可能性があること
- この変更で利用者に生じた不利益に関してECサイト側は一切の責任を負わないこと(損害賠償請求などに応じないこと)
<利用規約の変更>
- 利用規約は利用者に通知なく変更する可能性があること
- 規約の変更後に利用者がサービスを利用した場合は、変更に同意したものとみなすこと
※改正民法第548条の4により、所定の手続を踏めば、通知(合意)なく利用者に有利な変更を行うことが認められる一方、通知なく利用者に不利な変更を行う場合には厳格な要件を満たす必要があるため、ビジネス事情に照らした柔軟な規約変更を望まれる場合には、上記のように規約変更に関する条項を盛り込んでおくことをお勧めします。
<個人情報>
- 登録した際の個人情報は個人情報保護法等に準拠したうえで適切に取り扱う旨約束すること
<退会>
- 登録者は所定の手続きを行えばいつでも退会が可能であるということ
<売買契約について>
- ECサイト側と利用者側の売買契約が解除になる事由や商品の所有権はどのタイミングで引き渡しとされるか、売買契約が成立するタイミングはいつなのかを明らかにしておくこと
<受注、配送、決済>
- 受注から決済までの流れ
- 在庫切れや悪天候の場合の対応について
- 配送料について
<返品、交換、返金>
- 返品、交換、返金が可能なケースについて
※先述したように、ECサイトでは、物品の取引のみではなく形のないサービスに分類される商材も取り扱われることがあるため、映像や音楽配信などサービス契約の場合は下記の事項もあわせて記載しておく必要があります。こちらは著作権法などの知的財産権に関する法律に関係してきますので、一層の注意が必要です。
<著作権・知的財産権>
- 著作権や商標権などを侵害する行為に対する罰則やECサイト側の対応方法
- ECサイト側で使われている写真や画像、イラスト、オリジナルメロディーなどはすべてECサイト側に権利があるため、ECサイト側に無断での二次利用は不可能であるということ
利用規約を契約内容とするためのルール


契約は、例えば「この商品を1,000円で買いたい」、「この商品を1,000円で売りましょう」といった、買う側の申込みとそれに対応する販売者の承諾があって成立するものです。このような契約においては、契約の履行をめぐってトラブルがないように、商品の納期は契約成立後7日以内・支払いは3日以内などの取引に関するルールもあわせて決めておかなければなりません。
このことは、有形物を販売する場合もそうですが、SNSサービスなどの無形サービスを利用する場合も同様です。そして、双方がそのルールに(法的に)拘束されるためには、利用者と運営者がお互いに条件やルール内容を認識したうえで、契約を成立させることが原則になります。
ECサイトビジネスの場合、売り手(運営者)が最初にルール(利用規約)を提示し、それに納得した買い手(利用者)が申込みし、売り手(運営者)がこれを承諾するという方法の方が、ルールをその都度個別に決めるよりもより効率的です。重複になりますが、利用規約を契約内容にするためには、買い手(利用者)が申込みをする前の段階で、利用規約を見て申込みをしたという認識がお互いに合致している必要があることに注意する必要があります。
- 定型約款とは?
-
約款とは、大量の同種取引を迅速・効率的に行うために作成された定型的な内容の取引条項を指します。具体的には、鉄道やバスの運送約款、電気・ガスの供給約款、保険約款、インターネットサイトの利用規約もこれに該当します。定型約款に関する規定は、2020年4月に施行された民法改正により新設されました。大量の取引といっても、一般的な事業間取引で用いられる、一方当事者の準備した契約書のひな型や、労働契約のひな型は定型約款に該当しません。以下、概要を解説します。
<定型約款の定義>(民法548条の2 1項)
①ある特定の者が不特定多数の者を相手方(対象)とする取引で、
②内容の全部又は一部が画一的であることが当事者双方にとって合理的なものを定型取引といい、
③定型取引において、契約の内容とすることを目的として、その特定の者によって準備された条項の総体
<定型約款が契約の内容となるための要件>
「4.具体的にどうすれば、契約内容となるか」にて後述しますが、要件は下記の通りです。
①定型約款を契約の内容とすることに合意があった場合
②定型約款を準備した者が、定型約款を契約の内容とすることをあらかじめ相手方に「表示」していた場合
①または②のいずれかを満たすことが必要です。
定型約款は、取引の内容と契約書を画一化することにより、契約当事者双方にとって利益があるという点に特徴があります。定型約款は、利用者側の合意のハードルは下げつつも、不当な条項の取扱いや不利益変更をきちんと規制することにより、事業者と利用者の利益のバランスを取っているのです。
具体的にどうすれば、契約内容となるか


法律の世界では、事実認定というものがあり、申込みの状況等を勘案して、規約を認識して申込をしたかを判断する事になります。このことから、サイト運営者としては、利用者がその内容に当然同意したうえで、申込みをしているという状況を作り出すことが重要であり、これに対応する利用規約の表示方法を採用すると良いでしょう。
同意して、申込みをしていると認定される状況
利用規約を契約内容にするには、サービス利用の申込み、または会員登録の申込みをする前に、利用規約が確認できる形で表示してある必要があります。また、その規約に同意したうえで、申込みをしたと認定できる事情が必要になります。
例えば、申込み画面の直前に利用規約が設置され、きちんと見ているはずだと合理的に言えるような状態であったり、申込フォームに□利用規約に同意するとチェックボックスをつけたり、または申込みボタンが利用規約に同意した上で申込むとなっているような場合は、該当箇所をクリックしてから先に進むため、利用規約に同意したうえでの申込みと認定されやすい状況といえます。
改正民法(第548条の2)との関係
改正民法により、上記のように利用規約について利用者が合意(明示または黙示)している場合の他に、ECサイト運営者側が利用者に対し利用規約を契約(サービス利用)の内容とする旨を表示している場合には、利用規約について同意があった場合と同様に取り扱われます(改正民法第548条の2第1項2号)。
ただし、利用規約に利用者を拘束するという強力な効果を認めるためには、相手方に明確に認識できるように表示することが重要であり、この要件を満たさない場合には、利用者との間に紛争が生じた際、変更が無効であると判断されかねません。一例として、サービス申込みまたは登録申込みの段階で、本サービスをご利用される場合、当事者は利用規約(~リンク添付)に法的に準拠することになりますなどのテロップやチェックボックスが表示されるようにしておくことが挙げられます。
以上(4-1、4-2)のように、法律的には、利用者が認識しやすく目立つ形での設置、つまりサイトを見た時に確認しやすい状態が良いということになります。また、昨今はSNS等のソーシャルメディアネットワークを通してユーザーの流す悪評が不測に拡散しやすい環境なので、ビジネス的にも、可能なかぎり無用なトラブルを避けるために、利用者にとって目立つ位置に利用規約やそのリンクを掲載しておく意義が高まっています。
具体的対応の3つの要点
対応の要点をまとめると下記の3つとなります。
・利用規約はサイト(web)上に事前に掲載しておくこと
・利用規約を設置する際は、申込みの直前に確認できる場所や申込みと同一ページ、またはそのページに目立つ形でリンクを張るなど、利用者から容易に確認できるようにしておくこと
・同意した上での申込みであることをチェックボックスや申込ボタンを利用して明示させること
・ECサイトの利用規約の作成方法とは?|知っておきたい注意点をECに強い弁護士が解説
ECサイトの利用規約のお悩み、リスク、課題は解決できます


この記事では、EC関連サービスの企業の皆さまが、自社の商品の販売促進のために、アフィリエイト広告を利用する場合に、直面すると思われるお悩み、リスク、課題について、ヒントになる基本的な知識をお伝えしました。これらの情報を、皆さまの会社にうまくあてはめて、一つずつ実行していくことで、貴社のお悩みや課題が解決し、貴社のサービスへのユーザーや社会の信頼が大きく増え、ビジネスが成功する未来が実現すると信じています。
しかも、頼りになる専門家と一緒に、解決できます!
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所では、多くの企業様へのご支援を通じて、EC事業における広告表示、広告運用についての専門的な法律の課題を解決してきた実績があります。
「助ネコ」の株式会社アクアリーフ様、「CROSS MALL」の株式会社アイル様など、著名なECシステム企業が多数、当法律事務所の顧問契約サービスを利用されています。
企業の皆様は、ビジネスのリスクは何なのか、リスクが発生する可能性はどれくらいあるのか、リスクを無くしたり減らしたりする方法はないのか、結局会社としてどうすれば良いのか、どの方法が一番オススメなのか、そこまで踏み込んだアドバイスを、弁護士に求めています。当法律事務所は、できない理由を探すのではなく、できる方法を考えます。クライアントのビジネスを加速させるために、知恵を絞り、責任をもってアドバイスをします。多数のEC企業様が、当事務所の、オンラインを活用したスピード感のあるサービスを活用されています。
当事務所にご依頼いただくことで、
「利用規約の作成ポイントをきちんと理解でき、契約として有効なものが作れるようになる。」
「利用者との間に起こり得るトラブルを把握し、事前の対策を講じられるようになる。」
「適切な利用規約の表示や同意画面の設置方法を知ることができ、サイトの構成もスムーズに決定する。」
このようなメリットがあります。
顧問先企業様からは、
「なんとなく作成していた利用規約をきちんと作り直してもらい、内容や重要なポイントがまとまり、法律的に有効で、しかも読みやすくなった。」
「自社では発見できなかった利用者とのトラブルリスクを見つけてもらい、利用規約を変更することで対応できた。」
「利用規約、特商法に基づく表示や、同意画面の設置方法のアドバイスをもらい、サイトのデザインを利用者ファーストで考えていくことができるようになった。」
このようなフィードバックをいただいております。
当事務所では、問題解決に向けてスピード感を重視する企業の皆さまにご対応させていただきたく、「メールでスピード相談」をご提供しています。
初回の相談は無料です。24時間、全国対応で受付しています。
問題解決の第一歩としてお問い合わせ下さい。
こちらから「メールでスピード相談」ができます。
※本稿の記載内容は、2025年1月現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。