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通販・EC事業参入

ビジネスモデルD2Cの理解しておきたい要点

D2Cとは、ECの市場規模の拡大に付随して、現在注目されているビジネスモデルの一つです。本稿では、D2Cと類似用語との意味の違いや、従来型ECとの違い、メリット・デメリット、確認すべき法律上の問題点など、理解しておきたい要点や注意点について詳しく解説します。

D2C(DtoC)と類似した用語との違い

よく聞く3文字のビジネス用語ですが、用途の齟齬を防ぐために、まずはそれぞれの違いを理解する事が大切です。

B2C(BtoC)、B2B(BtoB)

B2Cとは事業者が消費者に対して販売やサービスを提供する取引形態のことで、「Business to Consumer」の略称です。
例えばAmazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングなどのECモール などがこれにあたります。

B2Bは事業者が事業者に対して販売やサービスの提供をする取引形態です。「Business to Business」の略称で、主に企業間取引を指し、一般的な卸販売や、コンサルティングなどのサービスも含まれます。

C2C(CtoC)、O2O(OtoO)

C2Cは個人が個人に対して販売やサービスの提供をする取引形態で「Consumer to Consumer」の略称です。
例えば、メルカリやヤフオクなどのフリマサイトや、個人のスキルを売買するマーケットプレイスでの取引もこれに該当します。

O2Oはオンラインでの活動を通じてブランドやサービスを認知させ、実際のリアル店舗(オフライン)への集客や購入をさせるという取り組みを表す用語で「Online to Offline」略称です。

C2B(CtoB)、、B2B2C(BtoBtoC)

C2Bは個人が企業・事業者に対して販売やサービスの提供をする取引形態を言います。
「Consumer to Business」の略称で、例えば、Lancers、CrowdWorksなどのクラウドソーシングによる個人が制作した作品やコンテンツを企業が買い取るWEBサービス(写真やイラストなど)が代表的な形態です。

B2B2Cは最終的に消費者に販売をする過程での企業と企業間の取引を含む一連の流れを表します。「Business to Business to Consumer」の略称で、例えば、Amazonがメーカーから商品を仕入れ、消費者に販売するケースもB2B2Cになります。
メーカー(B) to Amazon(B) to 消費者(C) というような、B2Cの間に企業を仲介する形態やそのシステムを示します。例えば、楽天トラベルなどもB2Cを仲介するプラットホームという意味で、こちらの形態に当てはまります。

D2C(DtoC)

最後に、D2Cとは、企業や個人が企画・生産・販売までを自社で手がけるビジネスモデルを言います。卸や小売店などを介さず、メーカーが消費者へ直接販売するという販売方法で、「Direct to Consumer」の略称です。サービスやモノなどの自社製品を実店舗や自社ECサイトなど、自社で運営するチャネルにて、販売する取引形態となります。

用語の仕分け

類似する用語とD2C(DtoC)を、それぞれの概念に応じて仕分けますと、下記のようになります。

【対象者間の取引を表す用語】
B2C(BtoC)
B2B(BtoB)
C2C(CtoC)
C2B(CtoB)
B2B2C(BtoBtoC)

【仲介の関連性を表す用語】
O2O(OtoO)

【取引形態や概念を表す用語】
D2C(DtoC)

D2Cと従来型のECとの違いとは?

ECとは、インターネット上でサービスやモノの売買を行う、販売手段の一つで「Electronic Commerce」の略称です。
D2Cとの主な違いとして、「販売方法」か「販路」かという点が挙げられます。D2Cが「製造者が顧客に直接販売する」という販売方法であるのに対し、ECは「インターネット上の商品取引」という販売経路を意味します。そして、D2Cでは、販売経路として、ECを利用する場合がほとんどです。

また、D2Cというビジネスモデルが注目を集めている理由として、商品自体だけではなく、そのブランドや商品誕生までのストーリー、生産者のビジョンや想いなどを合わせた「商品価値」が提供できるという点が挙げられます。そういった「商品価値」を重要視するようになってきた人々の消費行動の変化に対応できるという点が、BtoC型のECサイトが、従来型のECサイトと異なる点といえます。

D2Cのメリット

D2Cのメリットは他に様々あります。どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。

適切なコストを設定することができる

D2Cでは、仲介業者や外部のシステムを利用しないため、仲介料や月額コストなどの固定手数料を支払う必要がありません。価格競争の激しいEC業界では、より低価格なものが好まれます。固定手数料のコストが削減できる分、自社にとって適切なコストを設定でき、コストの柔軟な調整も可能になるため、D2Cではより低価格で商品を提供することが可能になります。

顧客データを収集・蓄積しやすい

D2Cでは、自社ECサイトに代表されるような、デジタルフィールドで販売活動を行うことから、実店舗や仲介業者を介した販売方法と比較した場合に、より多くの顧客の詳細情報を収集・蓄積することが可能となります。この収集・蓄積されたデータから、売上分析や、新商品の企画開発にも活かすことができます。
自社で自由に運営するD2C型のECサイトでは、収集・蓄積したデータはすべて自社にて管理することができます。

顧客との関係を構築できる

D2Cでは、商品のマーケティングなどだけでなく、受注業務、商品の発送または配達が完了するまでの管理業務においても、自社ですべてを行います。これにより顧客と直接の接点をもつ機会が増えますので、顧客との直接やりとりを通じて、信頼関係が構築できるチャンスとなります。

企業のビジョンや思想をきちんと伝えられる

「自社製品を自社で売る」というビジネスモデルのD2Cでは、仲介業者を介さずに、企画から販売を行うことができるため、自社が伝えたいことを自由に消費者へ働きかけることができます。とりわけ、ブランディングを通して、「自社の想い」や「商品を通じ、自社が実現したいこと」を消費者へアピールすることができます。

D2Cのデメリット

次にデメリットについても見てみましょう。

自社ECサイトなどの構築に多くのリソースが求められる

自社ECサイト構築には多くの「コスト」「ノウハウ」「労働力」「時間」が必要となります。自社で十分なノウハウやリソースをもっていない場合、外部のプロへ委託することもできますが、相応のコストがかかります。
また、ECサイト構築後から、実際に効果がでるまでには時間がかかることから、D2C型のECサイトでは、ただちに多くの利益を期待することは難しいと考えられます。

ブランド構築やマーケティング施策を中長期的に行う必要がある

D2C型のECサイトでは、ECサイトの構築に加えて、自社のブランディングや商品販売のためのマーケティング戦略を実施することにも、多くの時間や労力、コストがかかります。高い集客力をもつ大手ショッピングモールなどを利用した販売と比較して、定常的な集客ができるようになるまでには、多くの時間を要する可能性があります。

D2C型ECサイトを成功させるための施策

メリットやデメリットを確認した上で、D2C型ECサイトを成功させるためにどのような施策があるかみていきます。

商品価値やブランドのビジョンを明確にする

自社ブランドのストーリーや想いを明確にし、ブランドのファンを増やしていくために、「自社の強み」をアピールしていくことが求められます。SNSでのマーケティング活動だけでなく、近年注目を集める、社会課題に対する自社の対応なども、消費者へのアピールとなり、購入の決め手になり得るため、様々な手段を用いて消費者に伝える必要があります。

マーケティングに注力する

InstagramやFacebook、TwitterなどのSNSでのマーケティング、Googleなど検索エンジンへの対策を行うSEO施策などに注力する必要があります。例えば、コンテンツ制作などにより、自社ブランドや商品に関するメッセージを発信する方法が挙げられます。顧客の直接流入を図るためにも、SEOを意識したコンテンツ制作は効果的な施策であるといえるでしょう。

顧客データを活かす

D2Cのメリットとして挙げた、収集・蓄積された顧客データを活かし、市場ニーズや売上の傾向だけでなく、仲介業者を通してでは見えにくい、決済完了までの消費者の意思決定までを、自社で分析することができます。収集したデータや分析結果を既存商品の改良や新規商品の開発にしっかりと反映させることで、ブランドへの信頼性や顧客のリピート購買率の向上を図ることができます。

D2Cビジネスにおいて確認すべき契約関係や法律上の問題点とは

次に、D2Cのビジネスを行う上で重要な契約関係または法律上の問題について、特に確認する必要のある事項について解説します。

広告・宣伝等に関わる契約関係

D2Cでは、インターネット広告やSNSマーケティングなど、消費者に直接アプローチ可能な宣伝・広報手法が多いと言えます。
従って、商品の販売開始段階では、インターネット広告代理店契約、SNSの運用代行業務委託契約など、消費者に向けての広告・宣伝関連の契約関係の整備が必要です。

販売開始時に整備すべき利用規約

また、民法の改正に伴い、これまで法律上の扱いが明確ではなかった利用規約について、「定型約款」として明文の規定が置かれることになりました。自社ECサイトの利用規約を適切に整備し、消費者に対して適切に提示のうえ、同意を得ることの重要性が、従前よりも高まっています。
改正民法に対応した利用規約をしっかりと作成し、運用することが重要となります。。

定期購入・初回割引に関する注意点

D2Cでは、サブスクリプション型の定期購入制度を導入し、その上で、初回購入のハードルを下げるため、初回限定の割引制度を設けるケースが少なくありません。ただ、この定期購入における初回割引では、特商法上で特に「販売条件の表示」に規制が定められており、こうした法規制に従ったサイト上の確認画面の構成、解約条件、返品対応の可否に関する明示などの対策を行わないと、違法となるおそれがありますので注意が必要です。

広告・宣伝の文言等に関する法規制

D2C企業自身が、自社LPやSNSの自社アカウントを用いて広告活動を行う場合や広告代理店を通じ、インフルエンサー等に広告を行わせる場合のどちらであっても、広告規制に違反した場合には、D2C企業に責任が生じ得る可能性があります。例えば、医薬部外品関連、化粧品や健康食品関連、食品関連などには、商品ジャンル毎に異なる法規制が定められており、それらの厳しい法規制を遵守しながら広告運用を行っていく必要があります。

まとめ

D2Cは、「企画・製造・販売を一貫して行う」ビジネスモデルであり、多くのメリットがあります。その反面、これら全てを自社が行うゆえに、各プロセスにおける法律問題の処理も、D2C企業自身が行う必要があります。適切な対処を行い、D2C型のECビジネスが成功することに繋げるためにも、上記のような要点を理解した上で、それぞれに見合った専門家から助言を受けることをおすすめします。

ファースト&タンデムスプリント法律事務所では、弁護士によるご相談やリーガルチェックのご依頼をお受けしておりますので、いつでもお問い合わせください。

※本稿の内容は、2021年9月現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。

執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所

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