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通販・EC事業参入

出店者と利用者のトラブルについて、オンラインショッピングモールの運営者は責任を負うか?

オンラインショッピングモールを運営していると、出店者と利用者間でトラブルが発生することがあります。その際、オンラインショッピングモールの運営者は責任を負うのでしょうか。本稿では、出店者と利用者間のトラブルについて、また出店者・利用者・オンラインショッピングモール運営者の関係について、法的見地から解説します。

オンラインショッピングモールの運営者と出店者、利用者の契約関係

オンラインショッピングモール運営者と出店者の関係

オンラインショッピングモール運営者と出店者の関係は、基本的には、オンラインショッピングモールへの出店契約です。オンラインショッピングモール運営者は、出店者に商品を販売する店舗、場所を提供している立場です。

出店者に対してどのように料金が発生するかに関しては、オンラインショッピングモールがどのような運営方式をとっているかによって異なります。オンラインショッピングモールに料金を払って店舗を出店するケースもあれば、出店自体は無料で人を集めることにより広告収入を目的としているケース、売上額に応じて手数料を支払うケース等があります。出店契約の内容も、運営方式によって異なります。

オンラインショッピングモール運営者は、オンライン上で出店する場所を提供している点は共通しています。出店者としては、料金を支払う代わりに、自社で集客するよりもオンラインショッピングモールに出店をした方が集客しやすいというメリットがあります。また、決済サービスも提供しているオンラインショッピングモールであれば、自社でシステム構築をする必要がないというメリットもあります。

オンラインショッピングモール出店者と利用者の関係

オンラインショッピングモール出店者と利用者の法的関係は、個々の商品・サービスの取引における売買契約になります。利用者が商品購入の意思を表示し、出店者は商品販売を承諾します。この意思表示が合致して、売買契約が成立します。

つまり、利用者がオンラインショッピングモールで商品を購入したとしても、それは利用者とオンラインショッピングモールの運営者との契約ではなく、利用者と出店者との間の契約関係ということになります。この売買契約には、オンラインショッピングモールの運営者は関与しません。

オンラインショッピングモール運営者と利用者の関係

利用者は、オンラインショッピングモールを利用したい場合、会員登録・利用登録を行います。この際に、利用者はオンラインショッピングモールの利用規約に合意する必要があります。前述の通り、個々の商品購入は出店者と利用者間の契約となり、基本的にオンラインショッピングモールの運営者は関与しません。そのため、オンラインショッピングモールと利用者の関係は、個人情報の取り扱いや、オンラインショッピングモールの利用方法などの部分に限られているのです。

オンラインショッピングモール出店者と利用者のトラブルで運営者が責任を負うケース

前述のように、オンラインショッピングモールの運営者は、出店者と利用者間のトラブルには基本的に関与しません。しかし、状況によっては運営者が責任を負わざるを得ないケースも考えられます。ここでは、運営者が責任を負うケースについて解説します。

オンラインショッピングモールの運営者が売主であると誤解されうる表示がある場合

オンラインショッピングモールでの取引において、利用者が運営者を売主と誤解しうるような表示がある場合には、運営者も利用者の損害について責任を負う場合があります。オンラインショッピングモールの出店者が運営する店舗が運営者自身による営業であると利用者が誤って判断してもやむを得ない状況があり、その状況について責任が運営者にある場合には、利用者が売主を誤解したことにつき重大な過失がない限り、運営者が責任を負うことになります。

問題のある商品の販売が店舗でなされていることをオンラインショッピングモールの運営者が知っているにもかかわらず放置していた結果、その商品を購入した利用者に損害が発生した場合には、運営者が不法行為責任又はモール利用者に対する注意義務違反による責任を問われるケースがあります。

問題のある商品とは、例えば重大な製品事故の発生が多数確認されている商品等が挙げられます。このような問題のある商品を販売していることを知っているにもかかわらず対応を怠り、同種の製品事故による損害が発生した場合には、運営者が責任を問われるケースもあるのです。

運営者と利用者は個別の取引に関しては契約関係にありませんが、利用者がオンラインショッピングモールで買い物をするという点においては、運営者が提供するシステムを利用しており、運営者には利用契約に付随する義務として出店者を調査・管理し、取引環境を整備する注意義務があると考えられ、それを怠ったことによってトラブルに発展した場合には、責任を負う可能性があるのです。

運営者が商品やサービスの品質等を保証している場合

オンラインショッピングモールの運営者が利用者に対して、単なる情報提供、紹介を超えて特定の商品等の品質等を保証している場合には、その商品等の購入によって生じたトラブルや損害について、運営者が責任(保証に基づく責任)を負わなければならないことがあります。品質等を保証している場合とは、例えば、運営者が特定の店舗の商品やサービスが優良という広告やインタビュー記事等を掲載していたケースです。このような情報を信じて利用者が商品を購入し、トラブルが発生した場合などには、運営者が責任を負わなければならないケースもあるのです。

オンラインショッピングモールでのトラブル事例

ここからは、オンラインショッピングモールにおいてよくあるトラブル事例を、その責任の所在とともにご紹介します。

商品の購入にまつわるトラブル

オンラインショッピングモール内に出店して店舗で商品を注文した際に考えられるトラブルとして、以下のようなケースがあります。

このようなトラブルが起こった場合、基本的には、商品購入者である利用者と商品販売者である出店者との間で解決をはかる必要があります。注文した商品が届かない・注文したものとは異なる商品が届いた・届いた商品に不具合があった場合などは、出店者が責任をとり、注文された商品を届ける必要があります。商品ページに掲載されているものと実際に届いた商品のイメージが違う場合には、返品不可などの表示がなければ対応してもらえる可能性もありますが、利用者の責任として返品・交換には応じてもらえないケースもあります。届いた商品がすぐに故障した場合は、責任の所在をはっきりさせることが難しいため、利用者と出店者でコミュニケーションをとる必要があるでしょう。商品を使用して事故が発生した場合には、どのような事故かを明確にした上で、商品が問題で発生した事故なのであれば出店者が責任を負うこともあります。また、内容によっては裁判に発展するケースも考えられます。

その他、商品購入にまつわるトラブルが発生し、利用者が出店者に対して返金・返品・交換等を求めたにもかかわらず、出店者が対応しないというトラブルもあります。出店者に連絡しても返事がなかったり、オンラインショッピングモールの店舗情報に出店者の連絡先が表示されておらず連絡が取れなかったりするケースもあります。このようなケースでは、運営者は出店者に指導を行うなど、利用者に対し安全な取引環境を整える必要があるでしょう。

出店者の破産にまつわるトラブル

オンラインショッピングモールに出店している店舗において、代金を前払いし商品を購入したものの、商品が送られてこないまま店舗が破産してしまうというケースもあります。この場合の対応は、オンラインショッピングモールの利用規約によって異なります。運営者が補償制度を設けており適用されれば、運営者は返金に応じる必要があります。利用規約の内容や状況によっては、前払いした代金が返金されないというケースも考えられます。

オンラインショッピングモールにおけるトラブルを避けるために

オンラインショッピングモール運営者がとるべき対策

オンラインショッピングモールの運営者には、できる限りトラブルが発生しないようなサイトの仕組み作りをすることが求められます。まずは、利用者と出店者間のトラブルに巻き込まれないようにするためにも、利用者が認識しやすい場所に、運営者と出店者が異なることを明確に表示する必要があります。

それと同時に、出店者から利用者とのトラブル等があれば運営者に報告する・出店者の状況について運営者の立場として定期的に調査を実施するなど、オンラインショッピングモールの健全な運営に向けたシステムを構築する必要があります。

オンラインショッピングモール出店者がとるべき対策

出店者はオンラインショッピングモール内とはいえ、店舗を出店するからには、在庫管理や債権管理をしっかりとしておく必要があります。利用者との売買契約の責任は出店者にあるということを理解した上で、誠実な対応を行いましょう。また、利用者からの信頼を守るためにも、運営者ともトラブルに関する情報共有を行うなど、良い関係を築いていく必要があります。

まとめ

このように、オンラインショッピングモールでは運営者・出店者・利用者の三者が存在しており、それぞれの間でトラブルに発展する可能性があります。それぞれの立場においてどのようなトラブルがあるのかを理解した上で、トラブルが起こらないように必要な準備を行いましょう。具体的な準備の方法や、トラブルの解決などについては、通販・EC専門の弁護士にご相談することをお勧めいたします。

※本稿の内容は、2021年5月現在の法令・情報等に基づいています。

執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所

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