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「写り込み」による権利侵害とは?著作権・肖像権との関係とEC事業者の対応方法を解説!

「写り込み」とは、写真や映像に意図せず他者の「著作物」や関係のない「人」が写り込むことを指します。自社のコンテンツに他者の「著作物」や関係のない「人」が写り込んでいた場合、どのような問題が生じるでしょうか?著作権法には、他人の著作物の写り込みに関して、権利の侵害とはならない一定の例外規定がありますが、その範囲は限られており、あくまでも著作権者の権利を侵害しない範囲内での利用が求められます。また、関係のない人を許可なく撮影し、その写真や映像をインターネット上に公開した場合、肖像権侵害の問題も生じる可能性があります。今回は、写り込みによる著作権・肖像権の侵害について注意すべき点を解説します。

著作権・肖像権とは?

著作権とは、創作者が自身の作品を独占的に利用する権利です。文学、音楽、映像、絵画などの創作物が対象となり、著作権者は無断での利用を防ぐための法的権利を持っています。自社のコンテンツに他人の著作物(絵画、ポスター、建築物など)が無断で写り込んでしまった場合、その写り込みが著作権侵害となる可能性があります。著作権法では、このような著作物を「付随対象著作物」として、一定の場合であれば権利侵害とならない例外規定が定められています(第30条の2)。他者の著作物が写り込んだ場合でも、その分離が困難で影響が軽微であれば利用が許されることがありますが、常に慎重な対応が求められます。
肖像権とは、本人の承諾なしに自分の肖像(顔や姿などの外見)を無断で撮影されたり、公開されたりしない権利を指します。肖像権について法律上の規定はありませんが、憲法第13条を根拠とした権利として解釈されており、個人の尊厳や名誉、プライバシーを保護するためのもので、特にインターネットやメディアでの画像や映像の取り扱いにおいて重要視されます。ホームページや広告などで人物の写真を利用する際には、その人の承諾がなければ肖像権侵害の問題が生じ得ます。これは、著名人のみに限定されず一般人にも該当します。

著作権侵害と肖像権侵害の違い

著作権侵害は、創作物(写真、映画、音楽、文学作品など)の「創作性のある表現」に対して著作者が持つ権利(複製、配布、公開)を侵害する行為です。著作権者の許諾なしに絵画をコピーして配布したり、インターネットにアップロードしたりすることなどが著作権侵害にあたります。
肖像権侵害は、個人の肖像(個人の顔や姿など)や、本人の外見に関する権利を侵害する行為です。無断で撮影された写真をインターネット上に公開することなどが肖像権侵害にあたります。肖像権は、個人の名誉やプライバシーが侵害された場合に問題となります。
著作権侵害・肖像権侵害ともに、許諾を得ないで利用した場合に他人の権利を侵害する点では共通しています。著作権侵害・肖像権侵害に該当する場合、その公開の停止を求められたり、損害賠償を請求されたりする可能性がありますが、著作権・肖像権の保護は無制限ではなく、著作権侵害や肖像権侵害にあたるかどうかは、規定や権利を総合的に勘案し判断されます。

著作権侵害の判断基準

著作権侵害の判断基準には、著作物の利用が著作権法によって許容された範囲を超えて行われたかどうかが考慮されます。著作権法は、著作物の創作者が持つ経済的利益と創作の自由を保護するために、著作物の利用に関して一定の制限を設けています。例えば、誰かの絵画や文学作品が他者によって無断でコピー・配布された場合は、著作権侵害とされる可能性が高いです。また、著作物が撮影などで偶然に写り込んだ場合でも、その利用が著作権者の正当な利益を損なうかどうかが、著作権侵害を判断する鍵となります。
著作物の利用にあたり、著作権者の許諾がなくても著作権侵害にあたる可能性が低いと考えられる例は、以下のようなものが挙げられます。

肖像権侵害の判断基準

上述したように、肖像権とは、個人が自らの肖像を自由に利用する権利、および他人に無断で利用されない権利を指します。肖像権侵害の判断基準としては、まず、被写体の事前の同意の有無、さらに、利用された肖像の公開範囲と目的、最後に、肖像が利用された結果、被写体にとってどのような影響があったのかが考慮されます。例えば、個人の写真が無断で商用のホームページで利用された場合、これは肖像権侵害とみなされることが一般的です。
過去の判例の中では「人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるかどうかを総合的に考慮する」とあり、総合的に肖像権侵害が成立するか否かが判断されますが、下記の条件が該当するケースは注意が必要です。

 写り込みがあった場合の解決策

撮影中、意図せず他人が写真や映像に写り込むことはよくあります。この場合、公共の場で撮影されたものであっても、本人が認識できる形での広告やウェブサイト上での公開は肖像権の侵害とされる可能性があります。また、自宅や病院など私的な空間ではプライバシー保護の必要性が高く、肖像権侵害が認められる可能性が高くなるので注意が必要です。著作権や肖像権に関する写り込みの問題に関して、以下のような解決策が考えられます。

可能な限り事前に承諾を得る

一般人であっても、写り込んだ人物が識別可能な場合や、その人物に言及しているなどの行為は受忍限度を超えていると判断され肖像権侵害となる可能性があります。撮影前に、写真や映像に写り込む可能性のある人物から事前に承諾を得ることが最も望ましいです。もしくは撮影後でも、その人物に公開についての承諾を得ることが望ましいでしょう。

必要に応じて著作権者と交渉する

公共の場やイベントでの撮影において、美術作品や法的に保護されたデザイン商品など、他者の著作物が意図せず背景に写り込むことがあります。著作権法では、これらの著作物が「偶然に写り込んだ」と判断され、その利用が著作権者の利益を不当に侵害しない場合は、著作権侵害とはみなされません。しかし、写り込んだ著作物が主題の一部となる、あるいは著作物のイメージを意図的に利用していると認識される場合、著作権侵害のリスクが高まります。こうしたリスクを避けるためには、撮影前に背景にある著作物の確認を行うことや、必要に応じて著作権者と交渉し、利用許諾を得ることが大切です。

後から編集で除去する

デジタル技術の進展により、画像加工ソフトやアプリが手軽に利用できるようになり、AIを活用した自然な仕上がりの加工も容易になっています。コンテンツの掲載や投稿をする前に、背景に写り込んだ著作物や肖像の有無を確認し、不要部分は除去する編集作業を行いましょう。この手順により、著作権や肖像権の侵害リスクを軽減できます。

プライバシー権とパブリシティ権

補足となりますが、肖像権は、「プライバシー権」や「パブリシティ権」と密接な関わりがあります。
「プライバシー権」とは、無断で撮影され、公開されることで平穏な生活が害されない権利を指します。無断撮影や無許可の公表による精神的な苦痛は、有名・無名にかかわらないため、一般人にもプライバシー権が認められています。無断撮影や無許可での公表が精神的な苦痛を引き起こした場合、プライバシー権侵害として一般の方からも法的な措置を取られる可能性があります。
「パブリシティ権」とは、集客目的で有名人を勝手に広告のように利用した場合に権利侵害と認められるものです。著名人の肖像は商業的価値を持ち、無断で公開・利用することはできません。もし、著名人が写り込んだ写真や映像を利用する場合は、その著名人や代理人と連絡を取り、利用許諾を得る手続きを行います。
これらの権利は、それぞれ性質が違えども、憲法第13条の自己決定権を根拠に認められているものであり、写り込みがある写真や映像を利用する際は、これらの権利を侵害しないよう十分注意しましょう。

まとめ

一般の人にも「無断で撮影されない」、「無断で公表されない」という肖像権が認められており、プライバシーを侵害する撮影や誹謗中傷につながる公開は法的に制限され、損害賠償請求の対象となる可能性があります。いずれのコンテンツにせよ、公開前に適切なチェックを実施することの重要性をおわかりいただけたでしょうか。しかし、完全にリスクを排除することは難しいため、万が一トラブルが発生した場合は、著作権や肖像権に精通した専門家に相談することが最善の方法です。不明点やご質問がありましたら、お気軽にお問合せください。

弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所は、EC・通販法務には特に高い知見と経験を有しています。
「助ネコ」の株式会社アクアリーフ様、「CROSS MALL」の株式会社アイル様など、著名なECシステム企業が多数、当法律事務所の顧問契約サービスを利用されています。
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※本稿の記載内容は、2024年9月現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。

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WRITER
弁護士 小野 智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士
ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。EC企業からの相談に、法務にとどまらずビジネス目線でアドバイスを行っている。
また、企業の海外展開支援を得意とし、日本語・英語の契約書をレビューする「契約審査サービス」を提供している。
著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」