ビジネスマッチングサイトのトラブルと運営企業の対応方法について
目次
ビジネスマッチングサイトとは
ビジネスマッチングサイトとは、企業間をつなぐためのマッチングサイトです。BtoBの取引先や外注先を探す際によく利用されます。
ビジネスマッチングサイトを運営していると、トラブルが起こることがあります。よくあるトラブルは大きく、マッチングしたクライアント同士のトラブルと、運営者とサイト利用者のトラブルの2種類に分けられます。ここでは、そもそもビジネスマッチングサイトとはどのようなものなのか、どのようなトラブルがあるのか、トラブルが発生した際に運営者としてどのような対応をすればいいかについて解説していきます。
ビジネスマッチングサイトの仕組み
ビジネスマッチングサイトでよくある流れは、下記のとおりです。
- 掲載申込
- 掲載ページ作成
- 案件が発生
- サイト上のメッセージ機能または直接やり取り
- 契約
料金体系に関しては、完全に無料のサイトもあれば、掲載する側に対して月額費用が発生するものや、掲載自体は無料で契約が決まった場合に取引金額の一定割合を支払う成果報酬型のものもあります。他にも、コンサルティングのような形で、サイト運営側がマッチングする企業を紹介するというものもあります。
マッチングサイト運営者と利用者の契約内容
ビジネスマッチングサイトでは、直接商品を販売するわけではなく、マッチングの機会を作るというサービスを提供しています。これは法律用語では、役務の提供と呼ばれます。このようなサービスを提供してその対価を受け取る契約には、委任・準委任、請負などが考えられます。
- 請負
請負とは、ある一定の仕事の成果に対して対価が支払われる契約です。仕事が完成しない場合には、代金を支払う必要はありません。ビジネスマッチングサイトのサービスが請負であれば、マッチングするという結果が出て初めて費用が発生することになります。 - 委任・準委任
委任とは、仕事の成果に対してではなく、仕事をするという行為の対価としてお金を支払うという契約形態です。弁護士との契約や医師の診察なども委任にあたります。ビジネスマッチングサイトのサービスが委任であれば、サイトに掲載する、もしくはマッチング相手を紹介するという行為に対して費用が発生することになり、その結果マッチングしたかどうかは、原則として契約の範囲外ということになります。
ビジネスマッチングサイトのビジネスモデルの種類
ビジネスマッチングサイトには、さまざまなビジネスモデルがあります。
- 仲介料による課金
仲介料による課金とは、サイト上でマッチングが成立した場合、その成功報酬として料金を支払う形の課金方法です。ビジネスマッチングが成立し実際に支払いが生じた場合に、依頼者が仕事を引き受けた相手へ支払う報酬の一定割合をサイト運営者が受け取る形をとります。クラウドソーシング系のビジネスマッチングサイトはこのビジネスモデルを採用しているケースが多いです。仲介料による課金の最大のメリットは、利用者にとってマッチングが成立し契約が成立するまで利用料が発生しない点です。運営者にとっては、サービスの掲載数を増やしやすいというメリットもあります。しかしマッチングが成立しない限り売上が発生しないため、思うように売上が上がらない可能性も高くなります。
- 掲載料による課金
掲載料による課金とは、マッチングが成立した否かかかわらず、サイトに掲載した時点で掲載料が発生するモデルです。掲載する原稿の長さによって金額が変動するなどさまざまな料金プランを設定し、広いニーズに対応できるようになっています。掲載料による課金のメリットは、サイト運営者にとっては、マッチングの成立有無にかかわらず、安定した売り上げを見込むことができる点です。しかし利用者側にとっては、成果が出るかわからない時点で支払いが発生してしまうので、リスクがあるといえます。
- オプションによる課金
オプションによる課金とは、サイト内に掲載したサービスに付加価値を付けることで課金するビジネスモデルです。企業のページを目立たせるようにしたり、プロのライターやカメラマンが企業の原稿を書いたり、他にも類似企業の中で目立つ場所に掲載するなどのオプションがあります。コンサルティングのように、自社にマッチングする企業を直接紹介するというオプションもあります。オプション課金のメリットは、利用者としてはニーズに応じて柔軟に利用できる点です。運営者にとっては、オプション課金があることで、客単価のアップが見込めます。
●広告による収入
広告収入は、サイト内にバナー広告やテキスト広告を表示させることで収入を得るビジネスモデルです。Google広告などの広告配信サービスから配信された広告を表示するケースや、オプションサービスの一部として利用企業をより目立たせるためのサイト内広告などがあります。
広告のメリットは、導入が簡単であることが挙げられます。広告で安定した収入が得られれば、マッチングサービス自体の収益化を考える必要がありません。しかし、広告収入だけでサイト運営をするには相当数のアクセスが必要であること、サイト内に外部広告を表示させることによりサイトのイメージがダウンしてしまうことなどがデメリットとして挙げられます。
サイト運営者と利用者のトラブル
ビジネスマッチングサイトを運営していると、トラブルが起こる可能性があります。ここでは、サイト運営者と利用者のトラブルについて解説します。
返金を要求される
サイト運営者と利用者間のトラブルとしてよくあるのが、利用者からの返金要求です。
下記のように、料金を支払ったのに期待した効果が見込めなかった場合、返金を要求されるケースが考えられます。
- お金を払って掲載したにもかかわらず、マッチングが実現しなかった
- マッチング先を紹介してもらったが、うまく取引につながらなかった
- マッチングの結果取引につながったが、成果に納得がいかなかった
どのように対応するか
では、このようなトラブルにどのように対応すればいいのかというと、サイトがどのようなビジネスモデルを採用しているかによって変わってきます。
仲介料による課金の場合には、マッチングが成立した時点で料金が発生しているため、このようなトラブルにはつながりにくいといえます。ただし、マッチングが成立し取引が行われたにも関わらず、その取引に不満があるというケースもあります。これは利用者間の問題として、次章で解説します。
掲載料による課金の場合、委任・準委任にあたるため、サイトに掲載することによって料金が発生します。そのため、マッチングが成立しなかったことについて、補償する必要はありません。ただしマッチングが成立しないということは、サイトに掲載しても効果がなかったことを意味しており、そのような評判が広がってしまえばサイト自体の評価が下がってしまう可能性もあります。なぜマッチングが成立しなかったのか、サイト運営側として問題はなかったか、なぜこのようなクレームにつながってしまったのか、真摯に対応することが重要です。
ただし、マッチングを保証するような広告を掲載していたり、紹介件数を保証していたりする場合には、返金請求に対応しなければならないケースもあるため、注意が必要です。
利用者同士でトラブルがあった場合
ビジネスマッチングサイトを運営していると、サイトをきっかけにマッチングした利用者同士でトラブルに発展してしまうことがあります。そのような場合の対処について解説します。
運営者の法律的な立場
ビジネスマッチングサイトの利用者同士でトラブルがあった場合、法律的にはサイト運営者は原則として責任を負わない立場にあります。なぜなら、ビジネスマッチングサイト上でマッチングした利用者同士の契約は、その両者の間で成立しているからです。
サイト運営者が責任を負うケースもあるため注意
ただし、サイト運営者が利用者間トラブルの責任を負わなければならなくなるケースもあるため、注意が必要です。
具体的には、下記のように利用者間のトラブルであっても、運営者としての責任が問われる可能性もあります。
- サイト運営者が契約者であると誤解される表示をしていた場合
- 問題を知っていながら、運営者がそれを放置していた場合
- サイト運営者が登録されている利用者の信用力等を保証していた場合
トラブルを防ぐための対策
では、ビジネスマッチングサイト運営者がトラブルを防ぐためにどのような対策をとるべきか、解説します。
サイト内に、利用者間トラブルには関与しない旨を記載する
サイト利用者が目にしやすい部分や、申込・契約する際に分かりやすい場所に、サイト運営者と登録されている企業が独立した関係にあることを明確に表示しておきます。例えば下記のようになります。
「当サイトに掲載されている企業情報は、当社とは独立して自己の責任の下業務をする者であり、特に明示している場合を除き、当社および関連会社が管理又は運営しているものではありません。」
トラブルにつながる利用者の登録を避ける
サイト内で、ルールを明確にしておき、利用ルールを守らない利用者の掲載を拒否できるようなシステムを構築しておく必要があります。具体的には、利用後に双方の評価をするシステムや、アンケートなどで利用者の評価を把握できるシステムがあります。
その他、利用にあたり企業の詳細情報を登録してもらい審査を行う方法や、登録するための条件を設けるといった方法もあります。
まとめ
ビジネスマッチングサイトを運営していれば、さまざまなトラブルが起こることが考えられます。このようなトラブルを防ぐためには、本稿で解説したウェブサイト上の表記をはじめ、利用規約・プライバシーポリシー・特定商取引法に基づく表記なども、しっかりと検討して準備する必要があります。どのような表記をしておくべきか、大きなトラブルが起こる前に弁護士に相談することをおすすめします。
※本稿の内容は、2021年3月現在の法令・情報等に基づいています。
執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所