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著作物の「引用」とは?著作者の許可なく著作物を適法に利用する方法

「引用」とは、著作権法で認められたルールの一つであり、特定の条件を満たす場合に限り、著作者の許可なく著作物を適法に利用できる権利を指します。この権利を適切に利用するためには、どのような点に注意すべきでしょうか。今回は、引用に関して、理解しておくべき重要なポイントを解説します。

著作権と引用について

著作権とは、知的財産権の一つで、著作物を創作した著作者に対して「著作権法」によって与えられる創作物の使用や配布を独占的にコントロールする権利です。この権利は、文学、音楽、美術、映像など、さまざまな創作活動によって生まれた作品に適用され、著作物を無断で使用した場合には、罰則が科されることがあります。
他人の著作物を使用する際は、原則として、著作権者の許諾を得るか、著作権を譲り受ける必要があります。ただし、著作権法にはいくつかの例外があり、その中の一つが「引用」です。「引用」は、著作権者の許可を得ずに著作物を利用できる著作権法上の特例です。

引用の意義と役割

引用は、他者の著作物を自分の意見や主張に組み込む手段であり、具体的な証拠や裏付けを提供することで信頼性を高める役割を果たします。また、引用を通じて、過去の研究成果や知見を引き継ぐことができ、学問や文化の発展を促します。
著作権法の引用などの例外規定は、表現の自由や文化の発展を勧奨する目的で設けられており、他人の著作物を許可なく利用できるのは、あくまでも限られた範囲内とされています。

著作権法における引用の位置づけ

著作権法では、「引用」とは、「紹介、参照、論評その他の目的で自己の著作物中に他人の著作物の原則として一部を採録すること」と定義されています。 これは、紹介や批評などの目的で、自分の作品で他人の著作物の一部を取り入れるということです。著作権法上、引用と認められるためには、一定の条件とルールを満たさなければなりません。

適法な引用の条件

「引用」として認められるためには、以下3つの条件すべてを満たす必要があります(著作権法32条1項)。

①公表されているものであること

著作物が「公表されている」とは、その著作物が一般の人々に公開されていることを意味します。具体的には、書籍やウェブサイトに載っている場合、または演奏や上映が行われている場合などです。公衆には、広く不特定多数の人々だけでなく、特定のグループや多数の人々も含まれます。つまり、一般に、広く公開されている著作物はこの要件を満たします。ただし、プライベートな目的で撮影された写真や友人間での記録のための撮影など、一般に公開されていないものは、この要件を満たさないため注意が必要です。

②公正な慣行に合致すること

著作物の種類や性質、引用の目的などを総合的に考慮することによって判断されますが、「公正な慣行に合致する」といえるには、その分野のビジネスや慣行に従う必要があるとされています。過去の判例や解釈が一般に広く知られている場合には、同じ分野の著作物での引用の方法を参考にすることが推奨されます。

③引用の目的上、正当な範囲内で行なわれるものであること

「正当な範囲内」といえるかどうかは、引用の必要性、分量・範囲が引用目的との比較において適正かどうかを考慮して判断されます。引用の範囲と量の判断基準に関して、厳密な数字は存在しませんが、一般的には、全体の10%~20%未満が目安とされています。ただし、作品(創作物)の性質によって適切な割合は異なります。

引用の適法性を保つためのルール

引用をする際に、確認すべきポイントは下記の5点になります。

①明瞭な区分性を確保する

引用において「明瞭な区分性を確保する」とは、引用部分と自分の著作物を明確に区別することを指します。引用部分がどこであるか、引用部分とその他の部分とを区別し、ハッキリと明示していれば問題ないでしょう。引用符、インデント(字下げ)、背景色の変更、枠線の使用などを行い、引用部分と自分の著作物を明確に区別し、読者にとって分かりやすい文章を作成することが必要です。

②主従関係を保つ

自分の著作部分が少なく、引用部分が多くなると、引用として認められない可能性があります。そのため、引用する際には、自分の著作部分が全体の主たる部分となり、引用部分がそれを超えないように分量を適切に抑えることが非常に重要です。これにより、引用の範囲が適正であり、著作権法の要件を満たすことができます。

③引用の必要性を考える

他人の著作物を利用する際には正当な理由があり、その使用が適切であることが求められます。引用が必要であると認められることが大切で、無駄な引用は避けなければなりません。

④出所の明示をする

それが引用であることを明らかにするため、引用した本の名前や、Webサイト名やURLなど、情報源を明確に記載します。引用元を明示することで、読者が引用元にアクセスし、さらに詳しい情報を得ることも可能になります。

⑤改変しない

「改変しない」とは、他人の著作物を引用する際に、その内容を一切変更せずにそのまま使用することを指します。著作者には「同一性保持権」という権利があり、これは著作物が無断で改変されないことを保障する権利です。引用するときは、加筆せずにそのまま引用し、著作者の意図や表現を歪めることは避けなければなりません。必要に応じて省略する場合は、省略部分を「…」などで示しましょう。

引用の記載例

①書籍や論文からの引用

著者名、資料名、発行者名、書名、出版年、ページ番号等を記載します。

例 田中〇〇「著作物の利用にあたっては、著作権法の遵守が必要である」(〇〇社、『著作権法に関する〇〇』、2021、p. 45)

②ウェブサイトからの引用

著者名、記事タイトル、発行者名、サイト名、URL、閲覧日等を記載します。

例 「著作権法の改正については、日々新たな議論が展開されている」(〇〇庁、『著作権法に関する最新の動向』、https://www.〇〇.go.jp/〇〇、2024年8月25日閲覧)

参考サイト

引用に関しては曖昧な点が多く、適法な利用につき判断に迷うこともあるかもしれません。下記は、文化庁サイトに掲載されている著作権に関する教材や講習会です。こちらも参考になりますので、一度確認してみましょう。

文化庁:著作権に関する教材・講習会
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/index.html

まとめ

引用のルールは、インターネット上の情報や画像など、利用する著作物の種類によって異なることがあります。また、転載する部分が多すぎると、引用の目的に対して正当な範囲を超えているとみなされる場合もあります。このため、引用の際にはルールを十分に理解し、適切に利用することが重要です。もし引用に関して不明な点や疑問があれば、専門家に相談することをお勧めします。専門家は、具体的な状況に応じたアドバイスを提供することができますので、正しい引用方法を確認することができます。不明点がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

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※本稿の記載内容は、2024年9月現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。

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WRITER
弁護士 小野 智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士
ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。EC企業からの相談に、法務にとどまらずビジネス目線でアドバイスを行っている。
また、企業の海外展開支援を得意とし、日本語・英語の契約書をレビューする「契約審査サービス」を提供している。
著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」