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未成年者による契約の取消に注意/成年年齢の引下げによる改修など企業の対応方法について

EC・通販サイトでは、未成年者が商品やサービスを購入することもあります。未成年者が購入した際には、契約を取り消されるケースがあるので注意が必要です。本稿では、未成年者がEC・通販サイトで商品やサービスを購入した際、どのような場合に取消になるのか、取消の主張へ応じる必要があるのか、また未成年者の購入でトラブルにならないためのポイントについて解説します。

 

未成年者のした契約は取消できる?

未成年者は、成年者と比べて知識や経験が少なく判断能力も未熟であるため、契約で不利益を被らないようにするために法律で保護されています。具体的には、未成年者が法定代理人の同意を得ずに結んだ契約は、取り消すことができると民法に定められています。ここでは、具体的にどのような条件で未成年者のした契約が取消できるのかについて解説します。

 

未成年者が行った契約を取り消せる条件

未成年者が行った契約を取り消すためにはいくつかのの条件を満たしている必要があります。

これらの条件を満たしている場合には、未成年者は行った契約を取消すことができます。
法定代理人とは、未成年者の親権者で、親権者がいない場合は未成年後見人が法定代理人となります。また、未成年者の契約を有効にするためには、父母の婚姻中は父母が共同で同意、両親が離婚している場合は親権を有している親の同意が必要です。

詐術とは、未成年者が嘘をついて契約をしたということです。具体的には下記のように、相手に問題なく契約が成立すると思わせて契約をした場合です。

追認とは、取消ができる契約を、有効なものとして確定することを意味しています。追認は、成年に達した未成年者自身または法定代理人が行うことができます。追認は直接行うだけでなく、法定代理人による代金の支払いなどの行為も追認の意思があったと見なすことができます。

取消権の時効は、未成年者が成年になったときから5年間です。

 

未成年者が締結した契約の取消の効果

取消をすると、その契約は契約時に遡り最初から無効なものとされます。契約を取消すことにより、代金支払の義務はなくなります。また、未成年者が支払った代金があれば、返還請求できます。
未成年者が受取った商品やサービスは、現に利益を受ける範囲で返還すればよいとされています。つまり、契約取消をする時点で利益が残っていなければ返還する必要はないということです。

 

未成年者が締結した契約の取消の通知方法

未成年者の行った契約は、未成年者本人からでも法定代理人からでも取消しができます。
通知は口頭で意思表示をすることも可能ですが、ハガキなどの書面で通知されることが多いです。

取消通知の内容は一般的に下記のような事項が記載されています。

<例>
○年○月○日に私共の子供○○との間で締結された<商品名>(価格○○円)の購入契約は、未成年者が親の同意を得ずに行った行為であり、親権者として取り消します。本人も取消しを望んでいます。

 

未成年を理由に取消しがあった場合の対処方法

では、EC・通販サイトで未成年を理由に契約の取消要請があった場合、どのように対応すればいいのでしょうか。具体的なケース別に見ていきます。

 

契約は遡及的に無効となる

契約を取消されると、契約は遡及的に無効となります。遡及的にとは、契約時に遡ってという意味です。つまり、取消を要請される時点までは契約は成立していますが、取消されると、契約成立時点に遡って契約はなかったものとして扱われることになります。

 

取引の履行がない場合

取引がまだ履行されていない場合には、取引自体がなかったことになるため、購入者は代金を支払う義務が、EC・通販サイト側は商品やサービスを引き渡す義務が消滅します。つまり、単純に契約はなかったものとされ、何もすることなく契約が消滅するのです。EC・通販サイトとしては、契約取消に応じ注文をキャンセルをすれば良いことになります。

 

取引の履行があった場合

取引の履行があった場合には、既に履行のあった取引を取消す必要があります。
EC・通販サイトは既に支払いが行われた代金を返金し、購入者は商品をEC・通販サイト側に引き渡すことになります。ただし、商品やサービスは契約取消の要請があった時点で既に消耗してしまっている場合も考えられます。食品の場合食べてしまって残っていないというケースなどです。

民法では、未成年者という理由で契約の取消が認められる場合には、現に利益を受けている限度で返還の義務を負うとされています。よって、EC・通販サイトとしては、開封していたり使用をしてしまったりする商品でも、現状のものの引き渡しを要求できるにとどまります。

 

取消には必ず応じなければならないのか

未成年者と契約を行い、取消ができる条件を満たしていた場合、取消要請があれば必ず応じなければなりません。その条件の一つに、未成年者が詐術を用いていいないという項目があります。取消に応じる必要があるのかについて、よく問題になるのは、契約に詐術が用いられていたかという部分です。ここでは詐術について具体的に見ていきます。

 

未成年者を隠して契約した場合

未成年者と隠していた場合、例えば単に申込フォームに未成年者が入力するなど、自分が未成年であることを自分から宣言していなかったとしても、詐術があったとはいえません。そのため、取消の要請があれば対応する必要があります。

 

成年だと偽った場合

成年ですかという質問にはいとチェックを入れた場合や、年齢を確認する質問に対して成人である嘘の年齢を記載した場合などは、成人だと偽ったといえます。この場合、詐術に当たり、取引は取消にならない可能性があります。ただし、表示される状況に応じて判断は異なるため注意が必要です。

 

親権者の同意が必要であると明示されていた場合

申込画面上で、未成年者の場合は法定代理人の同意が必要であることが明示され、かつ偽った年齢を入力したり、法定代理人の同意があると回答していたりする場合には、詐術に当たると考えられます。そのため、契約の取消要請があっても拒否することができます。

ただし、利用規約に未成年者の場合には法定代理人の同意が必要ですと記載があるだけであれば、詐術とは評価されない可能性が高くなります。

 

未成年者の取消でEC・通販サイトができる対策

では、EC・通販サイト未成年者との契約でトラブルにならないために、どのような対策ができるのか考えてみましょう。

まずは、申込画面上で未成年の場合には法定代理人の同意が必要であることを明確に表示・警告をする必要があります。その上で、年齢又は生年月日の入力を求める必要があります。年齢確認で未成年であった場合、法定代理人の同意があるという旨を自ら記載してもらうことができればなお安心です。またその場合には、未成年者であることを理由に契約の取消はできないと明示することも有効です。

ただし、あまりに取消に関する注意事項が多かったり、確認のための対応に時間がとられてしまったりする場合には、購入意欲がなくなり売上に影響する可能性がある点には注意が必要です。

 

成年年齢の引き下げとの関係

「民法の一部を改正する法律」により、2022年4月より成年年齢が20歳から18歳へ引き下げられます。つまり、これまでは20歳以上であったものが、18歳以上であれば成人として法定代理人の同意を得ずに契約締結をはじめとした法律行為ができるようになるのです。

成年年齢が引きされられることで、EC・通販サイトのシステム上、生年月日を入力して20歳以上を成人と判断している場合には、システムの修正などが必要になってきます。また契約時点に遡って取消ができるということは、法律改定直後はシステム上混乱を招いてしまう可能性もあるため、事前に準備しておくようにしましょう。特に、2022年4月1日の時点で、18歳以上20歳未満の方(2002年4月2日生まれから2004年4月1日生まれまでの方)は、その日に成年に達することになりますので、システム上も対応が必要です。

 

まとめ

以上のように、未成年者は契約をしたとしても取消できる場合があります。EC・通販サイトでは、購入後に取消があると在庫などのリスクが存在するため、未成年者との契約の取消でトラブルとならないように、しっかりと対策をする必要があります。トラブルを防ぐためにはサイトにどのように記載すべきか、民法改正に自社のECサイトをどのように対応させるか、及び、万が一取消があった場合の対応方法などについては、適切な対応を確実に行うため、弁護士に相談することをお勧めいたします。

 

※本稿の内容は、2021年2月現在の法令・情報等に基づいています。

執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所

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