誹謗中傷のレビューを書かれた!どう対応すれば良いの?
目次
ネットのレビューは重要
対面での接客ができないECでは、顧客に商品を買ってもらうためにはネットのレビューが重要になります。みなさんもECで商品を買う際には、その商品名で検索して、レビューを見て回ることが多いと思います。
特に、自身が運営する店舗サイト上ではなく、楽天やAmazonなどのプラットフォーム上で販売をする場合、必然的にプラットフォーム上のレビューページが表示されてしまうため、低評価のレビューは困ります。
実際に商品に問題があった場合は、厳しいレビューも受け入れざるを得ませんが、では、もはや誹謗中傷と言えるような、事実と違っていたり、口汚く罵られるようなレビューを書かれてしまった場合は、どうすればよいでしょうか。
投稿者を特定できる場合、削除を要請
手っ取り早いのは、投稿者に対してレビューの問題点を指摘して、削除を要請することです。
匿名での投稿であっても、内容から投稿者を特定できる場合がありますし、また、投稿者を特定できなくても、例えばSNSアカウントでの投稿であれば、そのアカウントにDMを送ることができます。
その際、店舗から直接連絡をすると、誤って法的に不適切な(脅しのような)内容の連絡になってしまったり、店舗が逆ギレをしていると投稿者から思われて、かえって反発されるリスクがあります。
そこで、弁護士を代理人に立てて、弁護士から法的に適切な内容で削除の要請をしてもらうのが良いでしょう。
逆に炎上するケースに注意
上でコメントしたとおり、法的に不適切な内容の連絡をしてしまった場合、例えば、違法とはいえない(辛口な)レビューであるのに、「このレビューは名誉毀損罪・業務妨害罪になるので告訴・損害賠償請求をします。告訴・損害賠償請求をされたくなければ、直ちにレビューを削除して下さい」といった連絡をしてしまうと、反発した投稿者が、ネット上でそのことを暴露して、炎上するリスクがあります。
実際、著名なインフルエンサーが、とある店舗で受けた不快な体験をプラットフォーム上のレビューページに投稿したところ、その店舗から脅しのような内容で削除を要請する連絡が来たため、そのことをSNSに投稿して、店舗の対応が炎上したケースもありました。
法的に削除を要請できる内容のレビューなのか、違法とはいえない辛口なレビューの範囲なのか、弁護士に相談して適切に判断してもらい、後者の場合は諦めて受け入れ、前者の場合でも法的に適切な内容で要請をするよう(それであれば、投稿者がネット上でやり取りを暴露したところで、誰も賛同しないでしょう)、くれぐれも注意して下さい。
投稿者を特定できない場合、プラットフォームに報告
では、投稿者を特定できず、プラットフォーム上のレビューページでの投稿なのでDMも送れない場合は、どうすればよいでしょうか。
その場合は、まずはプラットフォームに報告をすることになります。楽天の場合は「不適切なレビューを報告」ボタンが、Amazonなら「違反を報告」ボタンがあります。
とはいえ、このボタンを押して対応してもらえるのは、犯罪予告(例えば店舗に放火するとか)といった、明らかに違法な投稿くらいです。プラットフォーマーの立場としては、良い評価も悪い評価も、それぞれが購入検討者に価値がある以上、そんなボタン一つで簡単には削除に応じてもらえないのです。
プラットフォーム上で用意された報告手段では対応してもらえない場合、この投稿が違法な誹謗中傷だということをきちんと説明した書面と資料を揃えて、プラットフォーマーの然るべき窓口に連絡する必要があります。
しかし、それでも削除に応じてもらうのは大変でしょう。明らかに事実に反しているレビューならまだしも、評価の問題が絡む場合は、本人の受け止め方と言われたらそれまでなので。
プラットフォームが削除に応じない場合、法的手段を講じる
プラットフォームが削除の要請に応じてくれない場合、法的措置を講じざるをえません。裁判を起こして、削除を命じる判決を得れば、プラットフォームもそれに従うことになります。ですが、この判決を得るのは大変です。
そもそも、誹謗中傷の投稿を削除する法的措置に精通した弁護士の数は少なく、専門の弁護士でないと対応が難しいです。また、依頼しても解決するまで数ヶ月かかることも多く、費用も数十万円になります。
しかも、そう簡単に勝てる裁判ではありません。裁判所は、表現の自由を重視するため、多少厳しい表現があったとしても、直ちに違法とは判断しないからです。
まとめ
ECを手掛けていると、どんなに良い商品を丁寧に販売していても、低評価のレビューを投稿する人が現れます。それを逐一気にして対策をしようとしてても、きりがありませんし、精神衛生上もよくありません。
それに、我々がECで商品を購入する際は、多くのレビューに目を通して全体の傾向を掴んで判断しています。たとえ数件、低評価のレビューがあったとしても、大多数のレビューが高評価であれば、「たまたま相性が悪かったのだな」「クレーマー気質な人だったのだな」と判断して、購入を控えることはないでしょう。
というわけで、誹謗中傷のレビュー対策として一番効果的なのは、誠実にビジネスをして、高評価なレビューをたくさん獲得して、それらのレビューの中に埋没させてしまうことです。
執筆者:弁護士藤井総
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所
※本稿の記載内容は、2020年11月現在の法令・情報等に基づいています。