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EC・通販サイトに記入されたレビューは広告などに二次利用できる?

EC・通販サイトで買い物をする人は、実店舗と違って商品を実際に手に取ることができません。その代わりに、レビューを商品購入の際の参考にする人が多いのです。では、EC・通販サイトは、購入者によって書き込まれたレビューを広告に利用することはできるのでしょうか?本稿では、レビューに関する著作権について解説します。

レビューを有効活用できればEC・通販サイトの評価が上がる?

EC・通販サイトでレビューの効果が大きいのは、実際にその商品を購入し手に取った人の感想を読むことで、実際の商品をイメージできるからです。それだけでなく、評価の高いレビューが多ければ、安心してその商品を購入することができます。逆にレビューが少なかったりレビューの評価が低かったりすると、その商品に対する不安要素になってしまいます。このようにレビューは、EC・通販サイトで販売している商品の売れ行きを大きく左右するほどの影響力を秘めているのです。

EC・通販サイトを利用するお客さんがどのようにレビューを見ているかというと、レビューの内容だけでなく、点数や星の数による評価、投稿数、投稿の時期にまで及びます。レビューの点数や件数によって、EC・通販サイトで上位表示されるようになるといった効果も見込めます。

このように通常のレビューだけでも大きな影響が見込めますが、評価の高いレビューを有効活用することができれば、より販売促進効果が高まるのです。一つの方法として、トップページや商品ページの目立つところにレビューを表示させる方法があります。特に商品ページの買い物かごの近くにレビューを表示させておけば、購入を迷っているお客様に対して積極的にアピールすることができます。

それ以外に、レビューを二次利用するという方法もあります。次項からはレビューの二次利用について、法律的に問題がないか、見ていきましょう。

EC・通販サイト運営者への許諾

レビューを二次活用して良いかどうかは、EC・通販会社に対して許諾が認められるかどうかが重要になります。一般的に、複製・公衆送信等の著作物の利用行為は、権利者の許諾がない限り、著作権の侵害になってしまいます。但し、著作物の内容や利用方法によっては、明確に許諾がなくても、黙秘の許諾がみとめられる場合もあります。

黙示の許諾が認められる場合

例えば、以下の条件のいずれかに当てはまる場合には、黙示の許諾が認められる可能性が高くなります。

このような利用のされ方は一般に想定内といえるため、黙示の同意が認められる可能性が高くなります。単にプリントアウトする行為に関しても、プリントアウトを禁止する文言等が入っていなければ、黙示の許諾が認めれるでしょう。

では、レビューの二次利用はどうでしょうか?インターネット上にあるEC・通販サイトのレビューは、公衆がアクセス可能な場所に書き込みをしているという性質があります。つまり、レビューを書き込み投稿している時点で、同サイト上であれば、レビューが二次利用されることについては許諾があると評価できる場合があります。

その場合、黙示の許諾があると考えられる行為の範囲は、具体的には下記のような使用の態様が挙げられます。

ただし、内容によっては黙示の許諾が認められないこともあるため、注意が必要です。

黙示の許諾がない場合

EC・通販サイト上に投稿されたレビューを、そのサイト以外での場所で利用する場合には、通常は黙示の許諾も認められず、別途の許諾がなければ著作権の侵害になってしまいます。例えば、社外に配布する広告等に利用するような場合は、黙示の許諾は認められないと考えられます。

他にも、新聞・雑誌などの出版物に掲載したり、CD・DVD等に複製し販売・頒布したり、動画や映画において使用する行為等は、書き込みをした者が予想している利用といえない行為に関しては、黙示の許諾は認められず、別途の許諾がなければ、著作権を侵害する行為となります。

ただし、利用規約にレビューの二次利用に関する内容を盛り込み、明確に許諾を得ておけば、上記のような二次利用も可能になる場合もあります。

利用規約にレビューに関する項目を盛り込む

著作権の侵害にならないように安全にレビューを二次利用するためには、利用規約や注意事項にレビューに関する項目を盛り込む必要があります。利用規約とは、そのEC・通販サイトを利用するのであれば同意する必要があるものです。その中で、事前に許諾の意思表示があれば、レビューの二次利用に同意した上で投稿していると見なすことができるのです。注意事項に関しては、レビュー投稿時に確認できる場所に記載しておく必要があります。

例えば、下記のような内容を記載することが考えられます。

レビューに関わる著作権(日本国著作権法第27条及び第28条所定の権利を含む。)等の一切の権利は当社に帰属します。また、利用者はレビューに関して、著作者人格権その他いかなる権利も行使しないものとします。

当社は、レビューの内容を、当該レビューを投稿した利用者に通知することなく、自由に転載、引用、開示、提供、出版、配信その他の方法により、無償で利用することができるものとし、利用者はこれに同意します。

レビューを表示するかどうか、その表示期間および当社による保管期間については、当社の裁量で定めることができるものとし、利用者はこれに異議を述べないものとします。

このように、規約の内容を明確にすると同時に、規約の設置方法も気をつける必要があります。

確実に利用規約や注意事項を見た上で投稿をしたと判断できるようにするためには、下記のような方法が挙げられます。

チェックボックスを設置するパターンが最も確実に同意を得たことになります。しかし、このような確認方法を間に挟むことで、面倒に感じてレビューの投稿自体を躊躇してしまい、レビュー数が減ってしまう可能性もありますので、工夫が必要です。

まとめ

このように、EC・通販サイトのレビューは、適切な準備をすることによって、広告などに二次利用することができます。ただし、利用規約や注意事項に二次利用について明記する、もしくは黙示の許諾の範囲内に留める必要があります。著作権侵害は刑事罰もある重大な問題ですので、EC・通販サイトを運営するうえでレビューを活用する際には、十分に注意して行いましょう。ファースト&タンデムスプリント法律事務所では、EC・通販サイトにおけるレビューの活用について、弁護士による相談を受け付けています。ビジネスと法律の両面からアドバイスさせて頂きますので、いつでもご連絡ください。

執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所
※本稿の記載内容は、2020年10月現在の法令・情報等に基づいています。

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