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アップセル・クロスセル・ステマ規制

良いレビューを増やしたい!法律的にどこまでOK?自作自演は違法になるの?

商品購入に口コミを参考にする人は多く、レビューの影響力はますます強くなっています。EC・通販サイトの実際の利用者によるレビューだけでなく、口コミ専用サイトまで存在するほどです。そのため事業者としても、マーケティング目的として良いレビューを集めたいところですが、自作自演・やらせ・サクラが違法になると聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。ここでは、レビューにはどのような法律が関係しているのか、そして何が違法となるのか、詳しく解説します。

レビューが違法になるのはどのようなケースなのか

そもそもレビューという用語には、大きく分けて 評論・批評と再調査・再評価という意味があります。EC・通販サイトでレビューという場合は、前者の評論・批評から発展して、口コミ・評判を意味しています。
EC・通販サイトとして注意しなければならないのは、自作自演のレビューが法律違反になってしまう可能性があるということです。また、自社で自作自演のレビューを書き込んだ場合だけでなく、自社に有利になるレビューの記載を専門業者に依頼した場合にも、法律違反になる可能性があります。
これには、不当景品類及び不当表示防止法(以下、景品表示法)が関わってきます。

景品表示法の内容

景品表示法では、商品やサービスの「表示」について規制されます。「表示」とは、下記のように定められています。

【景品表示法2条4項】
この法律で「表示」とは、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示であつて、内閣総理大臣が指定するものをいう。

さらに、以下のように不当な表示を禁止しています。

【景品表示法第5条】
事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一  商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
二  商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
三  前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの

景品表示法の上記の規定から、下記の内容を含むレビューを自作した場合、または業者に作成を依頼して掲載したには、違法になる可能性があります。

自作のレビューを掲載するということは、条文内の「自己の供給する」商品に対して表示をしているということになるため、景品表示法で規制対象となる「表示」に該当すると考えられます。以下、解説します。

レビューが違法になってしまう場合とは

EC・通販サイトのレビューを自ら掲載し、その内容が景品表示法に違反したようなケースでは、国から措置命令や課徴金納付命令が出される場合があります。ます。措置命令を守らないと「二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金」という罰則もあります(景品表示法36条1項)。大手ショッピングサイトに出店している場合には、サイト独自に利用停止などの罰則が規定されている場合もあります。さらに、顧客の信頼を著しく損ねることにもなりかねません。

優良誤認表示を含むレビュー

優良誤認表示は、商品やサービスの内容や効能についての規制であり、実際の商品・サービスより著しく優良であるとする表示、そして他の同業者の商品・サービスよりも著しく優良であるとする表示がこれに該当します。例えば、レビューを自作し、調査や統計などの根拠のないまま、「他社製品より優れている」「この商品を使うと〇キロ痩せる」のような記載をすることは、優良誤認表示となるリスクが高いといえます。

具体的なレビュー内容の他にも、あたかも多数の好意的評価を受けているかのように表示する場合、例えばサクラ行為を行う事業者に依頼して口コミサイトに好意的なレビューを多数掲載させることや、点数などの評価を変動させることも景品表示法違反となるリスクがあります。

有利誤認表示を含むレビュー

有利誤認表示は、商品やサービスの内容等ではなく、価格等の取引条件等に関しての規制であり、実際の条件より著しく有利であるとする表示や、他の同業者の条件よりも著しく有利であるとする表示などが該当します。例えば、レビューを自作し、調査や統計などの根拠のないまま、「地域最安値・業界最安値」のような記載をすることは、有利誤認表示となるリスクが高いといえます。

複数のレビューを投稿して、評価自体を操作する行為

飲食店の口コミサイトなどでやらせ投稿があったとされる問題で、消費者庁は平成23年に、、代行業者に口コミを書き込ませて評価を変動させるのは景品表示法上問題があるとして、具体的な事例を記載したガイドラインを発表しました(インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項)。

これによると、問題になる行為の例として、下記の事例が挙げられています。

  • グルメサイトの口コミ情報コーナーにおいて、飲食店を経営する事業者が、自らの飲食店で提供している料理について、実際には地鶏を使用していないにもかかわらず、「このお店は△□地鶏を使っているとか。さすが△□地鶏、とても美味でした。オススメです!!」と、自らの飲食店についての「口コミ」情報として、料理にあたかも地鶏を使用しているかのように表示すること。
  • 商品・サービスを提供する店舗を経営する事業者が、口コミ投稿の代行を行う事業者に依頼し、自己の供給する商品・サービスに関するサイトの口コミ情報コーナーに口コミを多数書き込ませ、口コミサイト上の評価自体を変動させて、もともと口コミサイト上で当該商品・サービスに対する好意的な評価はさほど多くなかったにもかかわらず、提供する商品・サービスの品質その他の内容について、あたかも一般消費者の多数から好意的評価を受けているかのように表示させること。
  • 広告主が、(ブログ事業者を通じて)ブロガーに広告主が供給する商品・サービスを宣伝するブログ記事を執筆するように依頼し、依頼を受けたブロガーをして、十分な根拠がないにもかかわらず、「△□、ついにゲットしました~。しみ、そばかすを予防して、ぷるぷるお肌になっちゃいます!気になる方はコチラ」と表示させること。

このように、商品・サービスを供給する事業者が、レビューを自ら自作して掲載したり、又は代行業者に依頼して掲載させる場合には、その事業者は、レビューの対象となった商品・サービスの内容又は取引条件について、実際の製品や他社製品よりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認させる可能性があり、その結果、景品表示法に違反するリスクがありますので、十分に注意しましょう。

EC・通販サイトは何に注意すればいい?

レビューの自作自演まではいかなくとも、良いレビューを集めたいという想いはどのEC・通販サイトも持っているものです。では、EC・通販サイトとして、違法行為をせずに効果的なレビューを集めるためには、どのようなことに注意すれば良いのでしょうか。

自作自演のレビューはしない

景品表示法では、事業者が購入者や利用者に対して、口コミ情報を掲載するよう依頼することは禁止されていません。また、友人に実際に商品・サービスを使用してもらいそのレビューを掲載してもらうこと自体も違法ではありません。

違法行為になってしまうリスクがあるのは、前述のように景品表示法に触れる内容のレビューを、事業者が自作自演してサイトに記載する場合や、サクラ行為を行う事業者に依頼してレビューを記載してもらうようなケースです。(景品表示法は事業者が行う表示を問題としているので、消費者が実際に購入・利用した事実に基づいて記載するレビューは、景品表示法上問題とはなりません。)

その他の関連法律にも注意が必要

注意すべき点として、レビュー情報が真実であったとしても、薬事法・健康増進法・食品衛生法などの他の法律によって違法と判断される場合があることを知っておく必要もあります。

特に、広告やEC・通販サイト上に、お客様の声としてレビューを引用する際には関連法律に違反する表現が含まれていないか、確認する必要があります。

レビューが原因で不信感を与えてしまうことも

やらせ感の強いレビューは、逆に利用者の信頼を損ねてしまう可能性があるため、注意が必要です。例えば以下のようなレビューは利用者に不信感を与えてしまう可能性があります。

どれも過剰な場合ですが、たとえ実際に購入した人が書いたレビューであったとしても、やらせ感の強いものや事業者が操作しているイメージを持たれるものは、逆に利用者の信頼を損ねる可能性がありますので、注意しましょう。

まとめ

EC・通販サイトに関するレビューは、商品購入ページに付随するものだけでなく口コミ専門のサイトまで登場するほど、影響力のあるものになってきました。レビューが重視される時代だからこそ、EC・通販サイトのイメージをアップさせるためには、良いレビューを集めることが重要です。それと同時に、レビューが原因で法律違反になる可能性があることに留意し、景品表示法などの法律を遵守して、利用者に信頼されるEC・通販サイトを目指しましょう。

弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所は、EC・通販法務には特に高い知見と経験を有しています。
「futureshop」の株式会社フューチャーショップ様、「助ネコ」の株式会社アクアリーフ様、「CROSS MALL」の株式会社アイル様など、著名なECシステム企業が多数、当法律事務所の顧問契約サービスを利用されています。
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景品表示法やレビューの活用に関しても、多数の企業様が、ウェブサイトの設計や活用などにあたり当事務所のアドバイスを活用されていますので、いつでもご相談ください。

執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所

※本稿の記載内容は、2020年9月現在の法令・情報等に基づいています。

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