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通販・EC事業参入

製造物責任法(PL法)の基本を理解しよう!販売した商品で事故が起こったらどうなる?

EC・通販サイトで販売した商品で万が一事故が起こった場合、製造会社だけでなくEC・通販サイトを運用している会社も製造物責任法(PL法)に基づく責任を負う可能性があります。製造物責任法(PL法)とはどのような法律か、そしてどのような場合に責任を負うことになるのか、2020年民法改正による変更点も踏まえて解説します。

製造物責任法(PL法)の基本

まずは製造物責任法(PL法)とはどのような法律なのか、その基本について解説します。

製造物責任法(PL法)とは

製造物責任法とは、製造物の欠陥により損害が生じた場合の製造業者等の損害賠償責任について定めた法律で、1995年7月1日に施行されました。

製造物責任の英語Product Liabilityの頭文字をとって、PL法と呼ばれることもあります。(以下、「PL法」といいます。)

PL法の目的については、以下のように定義されています。
「この法律は、製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」
引用:製造物責任法(https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=406AC0000000085

製造物責任法(PL法)の要件

次に、PL法の要件について見ていきます。要件とは、一定の法律効果を生じるため要求される事実のことです。

PL法の要件は、簡単にまとめると以下のようになります。

この要件から、過失がない場合でも製品に問題が生じた場合は、法的責任を負う可能性があることがわかります。現在の法解釈としては、製造物は不動産とソフトウェア以外の加工物となっています。そのため、食品や医薬品もPL法の対象となりますが、修理は加工に含まれないため対象外となっています。

 

 PL法に基づく責任を負うのは誰?

販売した製品に欠陥があり、PL法に基づいて損害賠償を請求される場合、その責任を負うのは誰なのでしょうか。EC・通販サイト等の販売業者であっても責任を負う可能性もあるため、条件をしっかり確認しておきましょう。

製造業者(1号)の場合

製造業者(1号)とは、当該製造物を業として製造、加工又は輸入した者です。これに当てはまる場合、最も損害賠償責任を負う可能性が高くなります。

EC・通販サイトを運営している中で、直接海外から商品を輸入して販売することがあれば、1号に該当するため注意が必要です。輸入業者が含まれる理由は、海外の製造元に損害賠償を求めることが困難であるため、国内の責任者として輸入した業者に責任が課せられるのです。

表示製造業者(2号)の場合

表示製造業者(2号)とは、自ら当該製造物の製造業者として当該製造物にその氏名、商号、商標その他の表示をした者、そして当該製造物にその製造業者と誤認させるような表示をした者です。

OEMやプライベートブランド製品の製造を依頼した場合などに商品に製造業者として会社名等の表示を行うと、事実として製造を行っていなかったとしてもPL法の責任を負うことになります。または、自社の名称を使用していなくても消費者から見て製造業者と誤認される恐れがある状況であれば、責任を負う可能性があります。

実質的製造業者(3号)の場合

実質的製造業者(3号)は、当該製造物の製造、加工、輸入又は販売に係る形態その他の事情からみて、当該製造物にその実質的な製造業者と認めることができる氏名、商号、商標その他の表示をした者です。

ポイントとして製造にどれだけ関わっているか、実質的な製造者といえるかに基づいて判断されます。例えば、共同研究などを行い製品に影響を与えた場合などが、実質的な製造者であるとしてこれに該当します。

販売者が責任を負う可能性は?

PL法に基づく損害賠償責任は、基本的には製造業者が負うものですが、販売者やEC・通販サイトがPL法に基づく損害賠償責任を負うケースとしては、以下のような例が挙げられます。

 

PL法に基づく責任を負うのはどんな時?

では、具体的にどのようなケースで、PL法に基づく責任を負うのでしょうか。要件から、責任を負うケース・責任を負わないケースに分けて考えていきます。

 PL法に基づく責任を負うケース(PL法が適用される条件)

先ほど紹介した4つの要件を満たす場合に、PL法に基づく責任を負うことになります。どのようなケースか、一つずつ詳しく解説します。

・製造物である
まず、PL法が適用されるためには、製造物である必要があります。PL法2条1項によると、製造物とは「製造または加工された動産」です。例えば、加工食品・化粧品・美容機器・電化製品・自動車・玩具などが挙げられます。また、動産に限定されているので、ソフトウェアなどの形として存在しないものは対象にはなりません。

・製造物に欠陥がある
欠陥というのは、単純に製品が壊れていたということではありません。PL法2条2項によると欠陥とは、「当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」です。わかりやすい例を紹介すると、食品に異物が混入していて怪我をした場合や細菌が混入していたことにより食中毒を起こした場合、電化製品が発火して火傷を負った場合等です。

注意したいのは、商品自体に欠陥がなくても、使用方法によっては人体に影響を及ぼす、危険があるケースも該当するということです。このような場合には、きちんと明示がされていたか、警告が十分だったか等、表示方法についても欠陥の有無の判断に影響を及ぼすのです。

・生命、身体または財産が侵害され、製造物以外のものについて損害が発生している
欠陥により、実際に怪我をしたり健康被害が出たりといった損害が発生した場合、PL法の損害賠償の対象になります。

・製造物の欠陥が損害発生と因果関係がある
製造物の欠陥が損害発生と因果関係がある場合に、PL法による責任が認められます。

 PL法に基づく責任を負わないケース

PL法が関係しそうに思われるものでも、同法の責任を負わないケースもあります。

具体的には、以下のようなケースが挙げられます。

 

PL法適用された最新事例

ここでは、実際にPL法が適用された事例を紹介します。

・ノートパソコンのバッテリーパックが発火し、やけどを負った
2019年の裁判で、ノートパソコンのバッテリーパックが発火し、男性がやけどを負ったケースです。判決では、通常有すべき安全性を欠いておりPL法上の欠陥があったと認定し、男性の慰謝料請求が認められました。

参考:「PCバッテリーの欠陥認定 パナソニックに賠償命令」日本経済新聞(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42749870R20C19A3CR8000/

・石鹸の使用で小麦アレルギーが発症
2012年に被害が出始め、2019年に判決が出た事例です。複数の使用者が、茶のしずく石鹸の旧製品を使い、小麦アレルギーを発症しました。訴訟を起こされたのは、販売元・製造元・アレルギー源の小麦由来成分を作った研究所の3社です。判決では、製造物として安全性を欠き、欠陥があったと製造会社は責任を認めました。このケースでは、原告の他にも、多くの人に健康被害が発生したものの和解が成立しています。

参考:「茶のしずく訴訟で賠償命令 4200万円、大阪地裁」日本経済新聞(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43095310Z20C19A3AC8000/

2つの事例を紹介しましたが、その他にも、PL法による訴訟(判決が出た事例)では、下記の事例が多く見られます。

また、訴訟に発展したもの以外にも和解が成立したケースも多く存在します。和解が成立したものとしては、上記に挙げたもの以外に、以下のような事例があります。

 

2020年民法改正による変更点

2017年5月に「民法の一部を改正する法律」が成立し、2020年4月から施行されました。この法改正に伴い、民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(民法改正整備法)も同時に施行されました。この中にはPL法の改正も含まれています。変更点は、以下の2点です。

以下、詳しく解説します。

人身傷害の場合、時効期間が5年に長期化した

新第5条第2項により、損害賠償請求権の時効期間が知った時から5年に長期化する特則が新設されました。改正の理由として、人身傷害は財産的な利益と比較すると、保護を強くすべき度合いが強いこと、権利行使の機会を行使する必要性が高いこと、深刻な被害の場合速やかな権利行使が困難な場合も少なくないことが挙げられています。変更前の時効期間は3年でした。

損害賠償請求権の権利消滅期間は「時効期間」であると明記された

新第5条第1項第2号により、損害賠償を請求する権利が消滅する、最長10年の期間が時効期間であると明記されました。時効期間となったことで、被害者がやむを得ない理由などで損害賠償請求をしなかった事案においても、被害者の救済を図ることができるようになりました。変更前は除斥期間とされており、中断や停止が認められていませんでした。

 

まとめ

PL法は、製造業者のみに関係があると誤解されがちです。確かに、基本的には製造業者が関係してくるものですが、EC・通販サイト等の販売業者でも責任を負うケースがあるのです。自社が販売した商品で事故が発生してしまった場合、PL法に関しては知らなかった、では済まされません。どのようなケースでPL法の責任を負う可能性があるのかをしっかりと理解しておきましょう。

弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所は、EC・通販法務には特に高い知見と経験を有しています。
「futureshop」の株式会社フューチャーショップ様、「助ネコ」の株式会社アクアリーフ様、「CROSS MALL」の株式会社アイル様など、著名なECシステム企業が多数、当法律事務所の顧問契約サービスを利用されています。
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PL法に関しても、多数の企業様が、サービス設計や契約交渉などにあたり当事務所を活用されていますので、いつでもご相談ください。

執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所

※本稿の記載内容は、2020年8月現在の法令・情報等に基づいています。

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