広告メールを送るときは受信者の同意が必要
広告メールを送るときは受信者の同意が必要
ECビジネスのマーケティング手法として、既存客や見込客のメールアドレスを取得して、そこに広告メール、キャンペーンメールや、メールマガジン(以下まとめて「広告メール」といいます。)を送ることは、よく行われています。
広告メールを送るときに、受信者の同意を得ておかないといけないということは、ECビジネスをやっているみなさんは、なんとなく知ってはいると思います。ですが、細かいルールまで把握している人は少ないと思います。中には、「配信停止を希望されたらその時点で止めればいいか」と考えて、特に同意を得ることなく広告メールを送っている人もいるかも知れません。
今回の記事では、広告メールを送るときに受信者の同意を得ておかない、といけないという法律のルールについて説明したいと思います。
1.同意を得ないといけないメールはどれか
広告メールを送ることは、「特定電子メール法」と「特定商取引法」という2つの法律により規制されています。この2つの法律は、成立の背景(広告メールの規制の趣旨)が異なるのですが、両者の関係性や違いを解説するとややこしくなってしまいます。
そこで、ECビジネスの事業者の皆さんとしては、「商品・サービスの広告や宣伝を目的として消費者に送信するメール」については、この2つの法律により規制され、原則として送信には相手の同意が必要という点を、ひとまず押さえておいてください。
例えば、新商品・新サービスの販売のお知らせ、お客様の声の紹介、活用方法のアドバイス、割引キャンペーンの案内、商品を利用したイベント・コンテストの告知、そういったメールは結局の所、商品・サービスの広告や宣伝が目的なので、同意を得ないと送信することはできません。
逆に言えば、サイトのメンテナンスのお知らせ、注文を受けた際に自動送信される注文確認メール、商品を出荷するタイミングで送信される出荷メールなどは、商品・サービスの広告や宣伝が目的ではないので、同意を得なくても送信することができます。
それから、郵送で送るDMについては、メールではないので、同意を得なくても送ることができます。
2.同意はどうやって得ればいいのか
ECサイトで会員登録をしてもらう場合はもちろんのこと、会員登録をせずに購入する場合でも注文画面で、メールアドレスは入力してもらうと思います。この「メールアドレスの入力」だけでは、有効に同意を得たとはいえません。
有効に同意を得たといえるために必要なのは、次の2点です。
① 広告メールが送られることを受信者が認識できるように説明されていること
② 広告メールが送られることに受信者が賛成の意思を示したといえること
よく行われている方法としては、会員登録画面や注文画面で、申込みボタンの近くに、
☐ 当社からの広告メールの配信を希望します
とチェックボックスを設け、チェックを入れてもらう方法です。
この方法であれば、①、②ともに満たしており、有効に同意を得たといえます。
一方で、とても小さい文字や、目立たない色の文字で、「会員登録/商品を購入したお客様には当社からの広告メールが送信されます」とだけ記載されているような場合は、有効に同意を得たとはいえません。広告メールが送られることを受信者が認識できるように説明されているとはいえませんし、広告メールが送られることに受信者が賛成の意思を示したともいえないからです。
形ばかりの同意を得たとしても、法律上は有効になりません。こっそりだまし討のようなやり方は、してはいけません。
同意を得る方法として、会員登録や注文画面で、チェックボックスにあらかじめチェックを入れた状態にしておいて、配信を希望しない場合にはチェックを外してもらう、という方法もあります(楽天などがやっている方法です)。
この方法は法律上禁止されていないので、利用することは可能です。
ただ、その場合には、チェックボックスがデフォルトでチェックされていることを分かりやすく表示しておくことが必要です。例えば目立つ色にしておくとか、申込ボタンの近くに設置しておくとか。やはり、こっそりだまし討のようなやり方は、してはいけません。
3.どこまで同意を得ればいいのか
そもそも、具体的にどこまで同意を得ればいいのでしょうか。広告メールの内容や頻度まで同意を得ないといけないのでしょうか。
同意を取ないといけないのは、あくまでも「広告メールを送ること」ことだけです。
そのため、上で説明したように「当社からの広告メールの配信を希望します」という一文があれば十分です。
4.まとめ
ECビジネスに限らず、あらゆるビジネスのマーケティング手法として広告メールは有効です。筆者自身も、2012年より実に8年以上に渡り、ITサービスを提供する事業者向けのメールマガジン配信し続けており、その効果は実感しています。
だからこそ、ECビジネスの事業者の皆さんが広告メールを活用するためにも、本記事を参考に、きちんと受信者の同意を得るようにしておいてください。
執筆者:弁護士藤井総
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所
※本稿の記載内容は、2020年6月現在の法令・情報等に基づいています。