ECのアフィリエイト広告が法律に違反しないためのポイントを解説
通販サイトやオンラインモールなどのECにおいて、販売促進のためにアフィリエイト広告を利用している広告主の企業の担当者の皆様は、次のようなお悩みや課題があるのではないでしょうか。
「アフィリエイト広告も法規制の対象になるのか?」
「アフィリエイト広告はどのような法律の規制の対象となるのか?」
「もしアフィリエイト広告が法律に違反してしまったら、どのような罰則やリスクがあるのか?」
「違反の場合に責任を負うのは誰なのか? 」
「アフィリエイト広告が法律に違反しないためにはどうすれば良いのか?」
この記事では、ECの販売促進のためにアフィリエイト広告を利用する場合に、アフィリエイターやメディア、広告主が注意すべき、表示内容の適正化と規制対応の具体的な方法について、EC専門の弁護士が詳しく解説します。
目次
アフィリエイト広告とは?


まず、アフィリエイト広告とはどのようなものなのでしょうか?
健康食品を例に挙げれば、健康食品の販売会社以外の第三者が健康食品を広告するWEBサイトを運営し、販売会社の通販サイト等に誘導します。この第三者をアフィリエイターと呼び、アフィリエイターが運営するWEBサイトをアフィリエイトサイトと呼びます。アフィリエイターには、このアフィリエイトサイトを通じて発生した商品の売上に応じて報酬が支払われます。通常は、販売会社とアフィリエイターが直接契約することはなく、アフィリエイト・サービス・プロバイダー(以下、ASP)が介在しています。販売会社がASPに費用を支払ってアフィリエイトサイトを通じた集客を依頼し、ASPに登録しているアフィリエイターがアフィリエイトサイトを運営します。
アフィリエイトサイトは販売会社が直接運営しているわけではないため、アフィリエイトサイトに問題のある記載があっても、販売会社が法的な責任を問われることは、従来はありませんでした。
アフィリエイト広告が不当表示と認定


2018年の優良誤認表示を理由とした景品表示法に基づく消費者庁の措置命令において、初めてアフィリエイトサイトへの言及がなされました。措置命令においては、販売会社に優良誤認表示が行われていたことを周知しなければなりません。通常は、この一環として問題となった通販サイトに周知文が掲載されます。上記措置命令においては、それにとどまらず、アフィリエイトサイトからのハイパーリンクにより通販サイトに遷移する動線にも、周知文を掲載することとされました。
上記の2018年の措置命令では、あくまで販売会社の通販サイトそのものに問題があるとされ、直接的な処分の対象は当該通販サイトでした。しかし、2020年には、国に先駆けて埼玉県が景品表示法に基づきアフィリエイト広告を不当表示と認定し、措置命令を行いました。そして、アフィリエイトサイトの問題点を度々指摘してきた消費者庁は、2021年に初めてアフィリエイト広告自体を不当表示と認定し、措置命令を行っています。
アフィリエイト広告の法律と規制のポイント


アフィリエイト広告に関する法律と規制については、いくつかの重要なポイントがあります。
景品表示法の適用
広告主は、アフィリエイターやASPを通じた広告表現に対しても、景品表示法上の責任を問われる可能性が高いと考えられます。消費者の誤解を招くような表示を防ぐため、適正な表示内容を共有する体制の整備が必要です。
健康増進法の遵守
健康食品や医薬部外品の広告では、誇張表現や効果の断言が規制されています。広告主もアフィリエイターも法令の内容を理解して、守っていく必要があります。必要に応じて、弁護士などの法律専門家に相談しましょう。
・『飲むだけで10kg痩せる!』はNG!? 法律に違反する広告表現とは
監視体制の強化
最近では行政が法律の執行を強化するようになっており、消費者庁などの行政のチェックは厳しくなっています。EC事業を行う企業は、今後、法令違反を防ぐための自主的なガイドラインの策定やアフィリエイトサイトのチェックがますます重要になるでしょう。
このようなポイントに気をつけながら、アフィリエイト広告を適法かつ適切に行うためには、広告主とASP・アフィリエイターとの情報共有や、広告表現についてお互いに注意して、記事の作成方法などを工夫しながら、違反にならないように業務を進めることが大切です。
景品表示法の改正について


2024年10月の改正景品表示法では、特にEC事業を行う企業に大きな影響を与える内容が盛り込まれました。この改正では、主に以下の3つのポイントが注目されています。
確約手続の導入
この改正では、新たに「確約手続」が導入されました。これは、企業が不当な表示や違反行為をした場合でも、すぐに罰則を科すのではなく、企業側が自主的に改善策を講じることで、措置命令や課徴金を回避できる制度です。この確約手続は、違反が疑われる段階で企業に是正計画を提出させ、消費者庁が認めた場合は、措置命令や課徴金納付命令などが行われない仕組みになっています。企業はこの制度を利用して早期に自社サイトの改善が可能になり、違反行為を自ら正すことで、処罰を受けることによるブランドイメージの低下のリスクを下げることができ、法律を守る経営にシフトしていくことができます。
課徴金制度の強化
課徴金制度にも大きな変更があり、売上額が不明確な場合でも推定売上をもとに課徴金を計算することが可能になりました。さらに、過去10年以内に課徴金納付命令を受けた企業が再び違反行為をした場合には、課徴金率が1.5倍になる規定も設けられています。また、消費者に対して電子マネーでの返金が認められるなど、返金方法も柔軟になりました。
罰則の拡充(直罰規定)
優良誤認や有利誤認といった悪質な不当表示に対して、100万円以下の罰金を課す「直罰規定」が新たに導入されました。これは行政指導や措置命令を経ずに罰則が科されるもので、特に意図的な不当表示を行うような悪質な業者について、厳しく取り締まられるようになっています。
EC事業者にとって、商品説明や価格表示が誤解を与えないようチェックを徹底し、広告が不適切とならないようにすることが今まで以上に重要です。改正法の施行に伴い、自社のウェブサイト上の表示方法や広告の管理体制を再確認することが求められるでしょう。ウェブサイトの表示の仕方や広告の内容が適法かどうかなどに不安がある場合は、弁護士などの法律専門家に相談することも大切です。
・EC企業に重要な景品表示法とは?ルール、違反事例、ペナルティを弁護士がわかりやすく解説
アフィリエイト広告について、景品表示法で違法にならないための対応


アフィリエイト広告で景品表示法に違反しないためには、以下のような対応が重要です。
景品表示法を理解し、チームと共有する
広告主である企業が、景品表示法のルールや不当表示のリスクについて十分な理解を持つことはもちろんですが、実際に広告を掲載、運用するアフィリエイターやASPにも上記のルールやリスクについて、十分に理解しておいてもらうことが重要です。
広告主は、自社商品の広告宣伝におけるチームであるアフィリエイターやASPと必要な情報を共有することによって、自社の広告が違法になるリスクを下げていくことができます。
チームと共有すべき情報や知識としては、景品表示法という法律の存在や不当表示の基礎知識、優良誤認表示や有利誤認表示の具体例、ステルスマーケティング規制への抵触を避けるための明確な「PR表記」の例、消費者庁による措置命令の事例などが考えられます。
- ステルスマーケティング規制(ステマ規制)
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広告であるにもかかわらず、広告であることを隠すことを「ステルスマーケティング」といい、景品表示法では、このステルスマーケティングを規制しています。
消費者が、広告・宣伝であることを分からず、第三者の感想であると誤って認識することにより、その表示の内容をそのまま受け取ってしまい、結果として、消費者が自主的かつ合理的に商品・サービスを選ぶことができなくなるおそれがあるためです。
規制される表示は、「広告であって、一般消費者が広告であることを分からないもの」であり、企業がインフルエンサーやアフィリエイター等の第三者に依頼・指示するものも含まれます。また、インターネット上の表示(SNS、レビューサイトなど)だけでなく、テレビ、新聞、ラジオ、雑誌等の表示についても対象となります。
消費者にとって、「事業者の表示(広告)」であることをはっきりと分かるようにするためには、「広告」、「宣伝」、「プロモーション」、「PR」といった文言による表示や、「A社から商品の提供を受けて投稿している」といったような文章による表示を行うことが必要です。
規制の対象となるのは、商品・サービスを供給する事業者(広告主)だけであり、企業から広告・宣伝の依頼を受けたインフルエンサー、アフィリエイター等の第三者は規制の対象とはなりません。広告主である企業は、広告の内容の適法性とともに、広告であることの明示についても責任を問われることになります。
契約書での責任と保証の明記
広告主である企業がASPと広告取引に関する契約書を締結する際に、双方が景品表示法をはじめとする関係法令の遵守を保証する条項を含めることも重要です。その場合は、契約相手であるASPに保証を求めるだけでなく、実際に広告を配信するアフィリエイターに対しても、ASPが法令遵守の義務を課すことを契約書に明記しておくようにしましょう。
また、ステルスマーケティング規制への対策としては、広告に「PR表記」を行うことと、どのような表記を行うのかということを、契約書において、広告の仕様または個別契約書の記載事項などとして、明記しておくことが考えられます。
加えて、損害賠償条項において、契約違反や法令違反等があった場合の損害賠償責任についての規定を明記しておくことも忘れないようにしましょう。損害賠償責任の範囲については、自社の損害が十分補償されるよう、契約の相手方と範囲の拡大について交渉することも考えられます。
上記のように、契約書において適切な規定を定めておくことにより、法律的なリスクへの手当てをしておくことができます。適切な条項の設定や有利変更には、専門的な知識が求められますので、必要に応じて、法律専門家へのご相談をお勧めします。
法律専門家による事前の確認とアドバイス
自社の広告の表示内容が、景品表示法や薬機法などの関係法令に適合しているかを事前に確認するため、弁護士などの法律専門家に依頼することも効果的です。
特に、新しいLPや広告を作成して展開していく際には、専門家の適切な事前チェックを受けることで、不当表示の指摘を受けてしまうリスクの予防を強化することができます。
また、法改正への対応の際も、法律専門家への相談を検討されると良いでしょう。広告は一度チェックして終わりではなく、改正された法律に常に適合させていく必要があります。
法律専門家は、貴社の広告に関係する複数の法律の観点から、詳細なチェックを行い、どの広告表現が法令上問題となる可能性が高いか、代替案としてどのような表現が考えられるかなど、実務に沿った具体的なアドバイスを提供します。
アフィリエイト広告のモニタリング体制を整える
広告が配信された後も、定期的に広告内容や表示内容を確認し、アフィリエイターやASPによって、法令上問題となる表現がされていないか、主体的にチェックする社内体制を整えましょう。
景品表示法に基づき不当表示の責任を問われるのは、あくまで広告主である企業となります。業務委託契約を締結したからといって、その後の広告配信を完全にアフィリエイターやASP任せにしてしまうことは、貴社にとってリスクとなります。
広告主の企業が自ら定期的にモニタリングを行うことにより、問題が発生する前に是正したり、迅速に対応したりできるようになります。
このような、さまざまな対応を通じて、アフィリエイト広告が景品表示法に違反するリスクを低減し、安全で信頼性の高い広告運用を目指していきましょう。実際に薬機法や景品表示法に基づく広告規制は厳しく、SNSを含むさまざまなメディアにおいても、関連する表示や条件の明示が求められます。企業の広告管理者の方は、リスクの高い広告の表現を社内ルールで禁止するなど、条件の明確化を行い、関係法令に基づいたチェックを徹底することで、法令違反を防ぎましょう。
アフィリエイト広告についてのお悩み、リスク、課題は、解決できます


この記事では、EC関連サービスの企業の皆さまが、自社の商品の販売促進のために、アフィリエイト広告を利用する場合に、直面すると思われるお悩み、リスク、課題について、ヒントになる基本的な知識をお伝えしました。
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「アフィリエイト広告を利用する際の広告主の義務が整理され、何を準備すべきかを把握して、万が一の際にも迅速に対応し、企業の信頼を守ることができる。」
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「自社の商品・サービスの広告表示が景品表示法に違反していないか確認してもらえ、自信をもって商品を販売できるようになった。」
「アフィリエイト広告のリスクや適切な対応策についてのアドバイスをもらい、社内のコンプライアンス体制やASPやアフィリエイターとの協力体制を整備することができた。」
「景品表示法に関する研修を通じて、従業員が法規制を理解し、業務に活かしてもらえるようになった。」
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